電子回路を設計する上で、ほぼ必ずといっていいほど登場するのが「パスコン」です。
パスコンは正式にはデカップリングコンデンサと呼ばれ、その名の通り「分離する」役割を持つ、回路の安定動作に欠かせない部品です。
ICの電源ラインとGNDの間に挿入されるこの小さな部品が、どのようにICの誤動作を防ぐのか、その役割と重要性を詳しく解説します。
パスコンの重要な役割・必要な理由
パスコンは、主に以下の2つの役割を担うことで、ICの性能を最大限に引き出します。
1.高速な電流供給
デジタルICやスイッチング電源ICは、クロックに同期して非常に速いスピードでON/OFFを繰り返します。この瞬間的なスイッチング動作には、瞬間的に大きな電流が必要となります。
しかし、ICから離れた場所にある電源からこの急な電流要求に応えるには、電源ラインのインダクタンス(L成分)が邪魔をしてしまい、電流供給が遅れます。
その結果、ICの電源電圧が瞬間的に低下し、最悪の場合は誤動作やリセット動作を引き起こします。
パスコンはICの電源ピンのすぐそばに配置することで、この瞬間的な電流要求に対し、蓄えていた電荷を即座に供給する役割を果たします。
これにより、電源ラインを流れる大電流の急激な変化を抑制し、ICの電源電圧の瞬間的な変動を抑制することができます。
2.ノイズ除去
電源ラインは、外部からの電磁ノイズや、IC自身の動作によって発生する高周波ノイズ(スイッチングノイズなど)が混入しやすい経路です。
これらのノイズは、IC内部のアナログ回路やデジタル信号等に影響を与え、回路全体の誤動作の原因となります。
パスコンは、交流成分であるノイズをGNDにバイパス(流す)する働きをします。
この動作により、外部からのノイズをパスコンで除去して、IC内部に混入するを抑制しノイズによる悪影響を防ぎます。
またIC自身の動作により発生する高周波ノイズも、パスコンで除去することができます。
この動作によりICの外部にノイズが漏れることを抑制することも可能です。
正しく使う為のポイント
パスコンの効果を最大限に引き出すためには、配置や種類にこだわる必要があります。
・配置の原則
パスコンは、ICの電源ピンのできるだけ近く、そしてGNDに最短で接続することが鉄則です。
配線が長くなると、配線のインダクタンス成分が増えることで、パスコンの性能を損なってしまいます。
・コンデンサの選択
高周波ノイズ除去や高速な電流供給には、低ESR(等価直列抵抗/)/低ESL(等価直列インダクタンス)のセラミックコンデンサが適しています。
一般にESR/ESLが低いほど、コンデンサが持つノイズ除去能力が向上します。
・複数容量の使い分け
単一のパスコンだけでは、すべての周波数帯のノイズを除去することは困難です。
一般的に、0.1μFや0.01μFのような低容量のパスコンを高周波ノイズ用に、10μFや100μFのような大容量のパスコンを低周波ノイズ用や大電流供給用に使い分け、並列に接続することが推奨されます。
これにより、幅広い周波数帯のノイズに対応できる「複合的なフィルタ」を形成します。
複数のパスコンを並列に使用する場合は、低容量(小型)の高周波用の容量はICの直近に配置し、大容量(大型)の低周波用のコンデンサはICから少し離れたところに配置しましょう。
最後に
パスコンは、目立たない存在ですが、回路の安定動作を根本から支える「縁の下の力持ち」です。
これらのポイントを押さえることで、信頼性の高い回路設計が可能となります。
トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。