電気/電子回路の基礎

High電圧, Low電圧とは何ですか

High電圧とは入力電圧が、この値以上になるとハイ(High)と認識する電圧です。

反対にLow電圧とは入力電圧が、この値以下になるとロー(Low)と認識する電圧のことです。

 実際の製品ではどのように規定されているか、電圧レギュレータのCE端子のHigh電圧・Low電圧を見てみましょう。

DC/DCコンバータ(XC9236) : 電気的特性

PARAMETERSYMBOLCONDITIONSMIN.TYP.MAX.UNITCIRCUIT
CE "H" VoltageVCEHVOUT=0V, Applied voltage to VCE, Voltage changes Lx to “H” level0.65-6.0V
CE "L" VoltageVCELVOUT=0V, Applied voltage to VCE, Voltage changes Lx to “L” levelVSS-0.25V

上記製品の場合、

CE機能 High電圧        : 0.65V ~ 6.0V で Highと必ず認識

CE機能 Low電圧         : Vss(0V) ~ 0.25V で Lowと必ず認識

することを表しています。

逆に言うと、印加電圧が0.25V~0.65Vの間では CE機能が HighもしくはLowどちらになるかわからないということを示しています。

確実にHigh/Lowの状態にするためには、入力電圧をHigh電圧/Low電圧の範囲内に確実に入れるように設計することが重要です。

オームの法則/インピーダンスとは何ですか

オームの法則とは?

オームの法則は、直流回路における電圧・電流・抵抗の関係を表す最も基本的な法則です。
この法則は、「電流は電圧に比例し、抵抗に反比例する」という関係を数学的に表現したもので、回路を流れる電流を計算したり、必要な抵抗値を求めたりする際に不可欠です。

電圧(V) = 抵抗 (R) × 電流 (I)

  • 電圧(V)[単位:V]:電子を押し出す力
  • 電流(I)[単位:A]:電子の流れる量
  • 抵抗(R)[単位:Ω]:電子の流れを妨げる度合い

インピーダンスとは?

インピーダンスは、オームの法則を交流回路に拡張した概念です。

交流回路では、抵抗 (R) だけでなく、コイル(インダクタンス、L)やコンデンサ(キャパシタンス、C)といった、周波数によってその振る舞いが変化する部品が存在します。
インピーダンス (Z) は、これらの交流回路における抵抗の役割を果たすものです。

インピーダンスは、交流信号の周波数によって値が変化するため、抵抗 (R)、コイル(インダクタンス)、コンデンサ(キャパシタンス)の合成として扱われます。

電圧(V) = インピーダンス (Z) × 電流 (I)

インピーダンス (Z) [単位:Ω]: 抵抗、コイル、コンデンサの3つを合わせた、交流電流の流れを妨げる度合い。

インピーダンスを構成する2つの要素

インピーダンス (Z) は、実数成分の「抵抗 (R)」と虚数成分の「リアクタンス (X)」で構成されます。

  • 抵抗(R)[単位:Ω]:直流成分も交流成分も妨げる要素。
  • リアクタンス (X) [単位:Ω]:コイルやコンデンサなど、周波数によって電流の流れを妨げる要素。

つまり、インピーダンスは、周波数に依存しない抵抗 (R) と、周波数に依存するリアクタンス (X) の組み合わせであり、これが交流回路を解析する上で非常に重要となります。

パスコン/デカップリングコンデンサとは何ですか?なぜ必要ですか?

電子回路を設計する上で、ほぼ必ずといっていいほど登場するのが「パスコン」です。
パスコンは正式にはデカップリングコンデンサと呼ばれ、その名の通り「分離する」役割を持つ、回路の安定動作に欠かせない部品です。
ICの電源ラインとGNDの間に挿入されるこの小さな部品が、どのようにICの誤動作を防ぐのか、その役割と重要性を詳しく解説します。

パスコンの重要な役割・必要な理由

パスコンは、主に以下の2つの役割を担うことで、ICの性能を最大限に引き出します。

1.高速な電流供給

デジタルICやスイッチング電源ICは、クロックに同期して非常に速いスピードでON/OFFを繰り返します。この瞬間的なスイッチング動作には、瞬間的に大きな電流が必要となります。
しかし、ICから離れた場所にある電源からこの急な電流要求に応えるには、電源ラインのインダクタンス(L成分)が邪魔をしてしまい、電流供給が遅れます。
その結果、ICの電源電圧が瞬間的に低下し、最悪の場合は誤動作やリセット動作を引き起こします。

パスコンはICの電源ピンのすぐそばに配置することで、この瞬間的な電流要求に対し、蓄えていた電荷を即座に供給する役割を果たします。
これにより、電源ラインを流れる大電流の急激な変化を抑制し、ICの電源電圧の瞬間的な変動を抑制することができます。

2.ノイズ除去

電源ラインは、外部からの電磁ノイズや、IC自身の動作によって発生する高周波ノイズ(スイッチングノイズなど)が混入しやすい経路です。
これらのノイズは、IC内部のアナログ回路やデジタル信号等に影響を与え、回路全体の誤動作の原因となります。

パスコンは、交流成分であるノイズをGNDにバイパス(流す)する働きをします。
この動作により、外部からのノイズをパスコンで除去して、IC内部に混入するを抑制しノイズによる悪影響を防ぎます。

またIC自身の動作により発生する高周波ノイズも、パスコンで除去することができます。
この動作によりICの外部にノイズが漏れることを抑制することも可能です。

正しく使う為のポイント

パスコンの効果を最大限に引き出すためには、配置や種類にこだわる必要があります。

・配置の原則

パスコンは、ICの電源ピンのできるだけ近く、そしてGNDに最短で接続することが鉄則です。
配線が長くなると、配線のインダクタンス成分が増えることで、パスコンの性能を損なってしまいます。

コンデンサの選択

高周波ノイズ除去や高速な電流供給には、低ESR(等価直列抵抗/)/低ESL(等価直列インダクタンス)のセラミックコンデンサが適しています。
一般にESR/ESLが低いほど、コンデンサが持つノイズ除去能力が向上します。

複数容量の使い分け

単一のパスコンだけでは、すべての周波数帯のノイズを除去することは困難です。
一般的に、0.1μFや0.01μFのような低容量のパスコンを高周波ノイズ用に、10μFや100μFのような大容量のパスコンを低周波ノイズ用や大電流供給用に使い分け、並列に接続することが推奨されます。
これにより、幅広い周波数帯のノイズに対応できる「複合的なフィルタ」を形成します。
複数のパスコンを並列に使用する場合は、低容量(小型)の高周波用の容量はICの直近に配置し、大容量(大型)の低周波用のコンデンサはICから少し離れたところに配置しましょう。

最後に

パスコンは、目立たない存在ですが、回路の安定動作を根本から支える「縁の下の力持ち」です。
これらのポイントを押さえることで、信頼性の高い回路設計が可能となります。

プルアップ抵抗・プルダウン抵抗とは何ですか、不定状態とは何ですか

プルアップ抵抗・プルダウン抵抗とは、入力端子・出力端子の不定状態を防止するための抵抗です。

入力端子の場合は 端子がOPEN状態および接続先がハイインピーダンスの場合に不定状態となります。 プルアップ抵抗・プルダウン抵抗があると、OPEN状態であっても、入力や出力端子の状態をHighおよびLow状態にすることができます。

出力端子の場合は、低入力電圧時等でそのICが正常に動作しない範囲等で出力電圧がHighかLowどちらの状態になるかわからない不定状態となります。
出力信号が不定状態では、その出力信号により後段のデバイスが意図しない状態になってしまい、消費電流増加や誤動作の原因等になります。そのため確実にHighかLow信号になるように設計を行い、デバイスが意図しない動作をすることを防ぐことが必要です。

また不定状態では、ICのリーク電流・外部ノイズ等により、どの電圧になるかがわかりません。
そのため周囲環境やICや部品ばらつき等により、同じ回路でも異なる状態になる場合があります。

位相補償・出力安定性とは何ですか?
LDOやDC/DCコンバータは、出力電圧を一定に保つために **負帰還制御(フィードバック制御)** を行っています。 この制御の仕組みと、安定して動作させるために必要な「位相補償」について解説します。 ## **1. 負帰還制御と発振のリスク** LDOやDC/DCは、出力電圧をFB端子/FBノードで検出し、目標値とのズレをエラーアンプで増幅して出力を調整する負帰還制御を行っています。 この負帰還制御は、フィードバック量(ゲイン)が大きすぎたり、信号の位相(タイミング)がずれたりすると、制御が安定せず出力電圧が振動し続ける状態になることがあります。 発振が起きると出力電圧が不安定になり、後段の回路が正常に動作しなくなります。また、ドライバに流れるピーク電流が大きくなることで保護機能が動作し電源ICが停止することもあります。さらに周辺部品に流れる電流も増大するため、周辺部品の定格・飽和電流を超えた異常動作の原因にもなります。
また出力が発振した状態は、**発振**・**不安定**・**安定性がない**など複数の言葉で表現されることがありますが、いずれも同じ現象を指しています。 ## **2. 位相補償とは** 発振を防ぐために、フィードバックループの特性を調整することを **位相補償** と呼びます。主に以下の2つの方法があります。 * **エラーアンプの周波数特性を調整する方法** エラーアンプの位相補償が外付けで調整できる製品では、外部抵抗・コンデンサを接続してエラーアンプの応答速度を調整します。 * **出力コンデンサ・インダクタンス値を調整する方法** 出力コンデンサの容量やESR、インダクタンス値によってループ特性が変化することを利用して調整します。 どちらの場合も、推奨範囲外の定数を使用すると出力が発振するおそれがあります。データシート記載の推奨範囲内の定数を選定するようにしましょう。 ## **3. 出力コンデンサのESRの影響** 位相特性は出力コンデンサの **ESR(等価直列抵抗)** によっても変化します。 ESRの値によってフィードバックループのゲインや位相が変わるため、推奨されていない種類のコンデンサを使用すると発振するケースがあります。(例:タンタルコンデンサが推奨なのに、セラミックコンデンサを使用等) データシートに記載されている推奨コンデンサの種類・容量・ESR範囲を必ず確認してください。 ## **4. 安定性の評価方法** 出力が安定して動作しているかを確認するには、以下の方法が使われます。 * **過渡応答波形** 出力電流を急変させたときの出力電圧の変化をオシロスコープで観測します。 電圧変動が収束するまでの波形を見ることで、安定性を評価できます。安定している場合はリンギングが収束し、不安定な場合は収束するまでのリンギングの回数が多かったり、波形が収束せず振動し続けます。 * **ボード線図(周波数特性)** ゲインと位相の周波数特性をグラフ化したもので、安定性の余裕(ゲイン余裕・位相余裕)を定量的に評価できます。 ただしDC/DCの場合、非連続モード(DCM)等ではボード線図で適切に評価できない領域があります。どの動作領域でボード線図が有効かを判断した上で活用することが重要です。
## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **発振のリスク** | フィードバック量や位相のずれにより出力が発振状態になることがある | | **位相補償** | 発振を防ぐためにフィードバックループの特性を調整する | | **ESRの影響** | 出力コンデンサのESRによって位相特性が変化するため注意が必要 | | **安定性の評価** | 過渡応答波形やボード線図で確認。ボード線図は活用できない条件が存在する。 |

負荷電流とは何のことですか

負荷電流とは、負荷である後段デバイスや出力ラインに接続された出力容量に供給する電流のことです。

電源ICから見た場合に、電源ICの出力側に負荷デバイスが接続されているため、電源ICにとっての負荷電流となります。

また負荷電流ではなく、出力電流(IOUT) 等のように呼ぶこともあります。

閾値とは何ですか

主にデジタル回路で、”0 (Low)”と“1 (High)”を区別する境となる電圧のことです。

ICの入力端子では、閾値より高い電圧が印加されると “High”と認識され、閾値より低い電圧では”Low”と認識されます。

また閾値付近の電圧を印加すると、ICばらつきや印加電圧の変動等の要因により “High”と“Low”のどちらになるかわからない不定状態になったり、ICが誤動作する可能性があります。

そのため、ICの入力端子では”High電圧”, “Low電圧”の規定を、実際の閾値から離した電圧を指定することが一般的です。

電力変換効率、電源の効率とは何ですか、効率はどのように測定しますか

電力変換効率、電源の効率とは 入力電力に対する出力電力の割合を表したものです。

効率[%] = (出力電力/入力電力) x 100
損失 = 出力電力 - 入力電力

効率が高ければ、出力電力を得るための電力が小さくでき、変換損失も小さくなります。つまり高効率であれば、低消費電力かつ低損失/発熱量が小さいということになります。

またDC/DCコンバータや電圧レギュレータ等の単一の電源の効率を計算する場合は、下記の式で算出可能です。

効率[%] = (出力電力/入力電力) x 100
= (出力電圧x出力電流) / (入力電圧x入力電流) x 100

効率測定方法

安定化電源・マルチメータ・電子負荷/抵抗負荷等を使って、出力電圧/出力電流/入力電圧/入力電流を正確に測定することで、各条件での効率を求めることができます。

電流測定のためにマルチメータを、入力・出力ラインに入れる必要がありますが、マルチメータで電圧降下が発生するため、IC直近の入力電圧・出力電圧を測定することが正確な効率算出には必要です。

また安定化電源の電圧設定値や、DC/DCコンバータ・電圧レギュレータの出力電圧設定値を、効率算出に使うと誤った効率を算出する原因となります。

電子回路設計におけるプルアップ・プルダウン抵抗の選定方法と注意点
Nchオープンドレイン出力にプルアップ抵抗を接続する場合や、誤動作防止用のプルダウン抵抗を追加する場合に、データシートに具体的な抵抗値が指定されていないことがあります。ここでは、そのような場面でのプルアップ・プルダウン抵抗値の選定指針を説明します。 ## Nchオープンドレインのプルアップ抵抗 ### 役割 Nchオープンドレイン出力は、ドライバFETがONのとき出力をGNDに引き下げますが、OFFのときは出力がハイインピーダンスになります。このため、外部にプルアップ抵抗を接続して出力"H"電圧を確保する必要があります。 I2C等のオープンドレイン通信方式では、信号をなまりなく届けるためにプルアップ抵抗値の選定が特に重要になります。
### 選定方法 基本的な前提は、**"H", "L"時に後段デバイスの論理閾値を満たすこと**です。その上で消費電流・耐ノイズ性等を考慮して選定します。 プルアップ抵抗値が小さすぎると、FETがON時にRONとRpullの電圧分割により出力"L"電圧が浮き上がります。 逆に抵抗値が大きすぎると、FETがOFF時にリーク電流によるRpullでの電圧降下で出力"H"電圧が低下します。 一般的に**1kΩ〜数100kΩ程度**を目安に、以下の計算で"H", "L"を満たすか確認します。 I2C等のオープンドレイン通信方式では、速度モードごとにプルアップ抵抗値が規定されている場合があります。通信用途では**ICのデータシートまたは規格の推奨値に従って**選定してください。 #### 出力"L"電圧の計算 ドライバFETがONのとき、プルアップ抵抗RpullとFETのON抵抗RONで電圧分割が発生します。 $$V_{OL} = V_{pull} \times \frac{R_{ON}}{R_{pull} + R_{ON}}$$ * $V_{pull}$:プルアップ先の電圧 * $R_{pull}$:プルアップ抵抗値 * $R_{ON}$:ドライバFETのON抵抗 RONはデータシートの電気的特性から以下のように算出できます: $$R_{ON} = \frac{V_{OL}}{I_{OL}}$$ **計算例)** Vpull = 1.8V、Rpull = 10kΩ、RON = 120Ω の場合 $$V_{OL} = 1.8\text{V} \times \frac{120\Omega}{10\text{k}\Omega + 120\Omega} \approx 21\text{mV}$$ #### 出力"H"電圧の計算 ドライバFETがOFFのとき、FETのリーク電流ILEAKがプルアップ抵抗に流れ、電圧降下が発生します。 $$V_{OH} = V_{pull} - R_{pull} \times I_{LEAK}$$ * $V_{pull}$:プルアップ先の電圧 * $R_{pull}$:プルアップ抵抗値 * $I_{LEAK}$:ドライバFETのリーク電流 **計算例)** Vpull = 1.8V、Rpull = 100kΩ、ILEAK = 0.1μA の場合 $$V_{OH} = 1.8\text{V} - 100\text{k}\Omega \times 0.1\mu\text{A} = 1.79\text{V}$$ ### 注意事項 * **後段のRC回路を駆動する場合** (シーケンス制御等)はRC時定数による駆動能力も考慮が必要なため、別途 抵抗値を検討してください * **消費電流** "L"時にプルアップ抵抗に電流が流れるため、低消費電力が必要なアプリケーションでは抵抗値を高めに設定してください * **高速通信ライン(I2C等)** プルアップ抵抗値が高すぎると信号の立上りがなまり、通信エラーの原因になります。 I2Cなどの通信用途では使用するICのリファレンス回路や規格の推奨値に従って選定してください * **プルアップ電圧(Vpull)** ICの絶対最大定格以内に収まるよう注意してください ## 誤動作防止用のプルアップ抵抗・プルダウン抵抗 ### 役割 入力端子や信号線がハイインピーダンス状態になった際に、ノイズやリーク電流によって誤った信号にならないように、プルアップ抵抗・プルダウン抵抗を入れる場合があります。信号入力ラインへのプルアップ・プルダウンや、ドライバ回路の駆動用FETのゲート部などの様々な箇所で使われます。 ### 選定方法 プルアップ・プルダウン抵抗値は、**リーク電流・ノイズに負けない**低い値を選定します。 ただし抵抗値が小さすぎると消費電流が増加するため、低消費電力が必要なアプリケーションでは高め(100kΩ程度)に設定し、ノイズ・リーク電流との兼ね合いで決定します。 また極端に抵抗値が低すぎる場合は、そのプルアップ・プルダウン抵抗により信号を駆動できない・信号がなまることもあるので注意が必要です。 ## まとめ - Nchオープンドレイン出力には外部プルアップ抵抗が必要。一般的に1kΩ〜数100kΩ程度 - 選定の前提は"H","L"時に後段デバイスの論理閾値を満たすこと - 出力"L"電圧はRONとRpullの電圧分割で決まる。Rpullが小さいほど"L"電圧が上昇する - 出力"H"電圧はリーク電流×Rpullの電圧降下で決まる。Rpullが大きいほど"H"電圧が低下する - 高速通信ライン(I2C等)ではプルアップ抵抗が高すぎると信号がなまるため、ICのリファレンスや規格の推奨値に従うこと - 誤動作防止用のプルダウン抵抗はリーク電流・ノイズに負けない値を選定し、消費電流とのバランスで決める
電池の内部抵抗(インピーダンス)による電圧低下と誤動作の原因・対策
# 電池の内部抵抗(インピーダンス)による電圧低下と誤動作の原因・対策 電池駆動機器の開発において、「電池残量は十分あるはずなのにICがリセットされる」「無線送信(BluetoothやWi-Fiなど)のたびにシステムが誤動作する」といったトラブルは珍しくありません。 これらの多くは、電池の「内部抵抗(インピーダンス)」に起因する瞬間的な電圧低下が原因です。 この記事では、電池の内部抵抗による電圧低下のメカニズムとその具体的な回路・ソフト側の対策について解説します。 ## 電池の内部抵抗とは 電池は理想的な電圧源ではなく、内部に必ず抵抗成分(内部抵抗)を持っています。電池から負荷回路へ電流が流れると、この内部抵抗による電圧降下(オームの法則)が発生するため、実際に回路へ供給される「電池端子電圧」は無負荷時よりも低下します。 $$V_{\text{terminal}} = V_{\text{BAT}} - I_{\text{BAT}} \times R_{\text{BAT}}$$ - $V_{\text{terminal}}$:実際の電池端子電圧 [V] - $V_{\text{BAT}}$:無負荷時の電池電圧(起電力) [V] - $I_{\text{BAT}}$:放電電流 [A] - $R_{\text{BAT}}$:電池の内部抵抗(インピーダンス) [$\Omega$] ※電池の内部抵抗は直流抵抗だけでなく、化学反応の遅れに起因する容量成分も含むため、周波数特性を持ちます。 そのため、パルス状の大電流が流れた瞬間と、継続して電流を流し続けた場合では電圧の落ち込み方が異なります。 一般的な電池では、以下の条件で内部抵抗が著しく増大するため注意が必要です。 * **低温環境下**:電解液の粘度が上がり、イオン導電率が低下するため * **放電末期(電池残量少)**:活物質の消耗や内部組成の変化によるもの * **経年劣化**:充放電サイクルの増加に伴い、内部構造が劣化するため ## 発生する主なトラブル * **瞬間的な電圧低下によるシステムリセット** 無線送信・モータ起動・LED点灯など、ミリ秒単位で大電流が流れる「パルス負荷」の瞬間に、電池端子電圧が一瞬だけ大きく落ち込みます。この落ち込みがマイコンや電源ICの動作下限電圧(UVLO閾値)を下回ると、システムに予期せぬリセットが発生します。
* **昇圧DC/DCコンバータの起動不良** 昇圧DC/DCが起動する際、出力コンデンサへの突入電流によって電池電圧がグッと落ち込みます。 昇圧DC/DCコンバータは電圧が下がると「さらに多くの入力電流を引いて電力を補おうとする」特性があるため、電池の電圧降下がさらに加速し、起動不可のループに陥ることがあります。 * **電池残量の誤判定** 電圧の高さだけで電池残量を推定している簡易的なシステムでは、負荷電流による一時的な電圧低下を「電池の寿命(消耗)」と誤判定し、まだ残量があるのにローバッテリー警告を出してしまうことがあります。 ## 確認方法 電池端子電圧と負荷電流をオシロで同時にモニタし、大電流タイミングで電池電圧が低下していないか確認します。 ## 電池電圧の低下を抑制する対策 * **$C_{IN}$(入力コンデンサ)の増量と低ESR化** 電源ラインの入力容量を増やし、瞬時のパルス大電流をコンデンサ側から放電させて補うことで、電池から引き出される電流の急峻な変化をなだらかにし、電圧の落ち込みを抑制します。 大容量化と同時に、**ESR(等価直列抵抗)が低いコンデンサ(セラミックコンデンサや低ESRのポリマーコンデンサ)を選定すること**が重要です。ESRが高いとコンデンサ自身で電圧降下が生じ、バックアップ効果が激減します。 * **低内部抵抗な電池への変更** 内部抵抗が低い電池種・グレードへの変更を検討します。 パルス放電特性はデータシートや製品仕様で確認してください。 * **ソフトウェアによる負荷ピークの低減・分散** 複数の周辺機能(無線送信、センサー計測、LED駆動など)の動作タイミングが重ならないよう、ソフト側でタイムスロットをずらして電流ピークを分散させます。また、電池電圧を事前にチェックし、低電圧時は送信出力を一時的に落とすといった制御も有効です。 ## まとめ - 電池には内部抵抗があり、「電池電流 × 内部抵抗」の分だけ必ず端子電圧が低下する - 低温・放電末期・経年劣化時には内部抵抗が急増し、トラブルが顕在化しやすい - 無線送信などのパルス大電流による瞬間的な電圧低下が、ICのリセットや起動不良を引き起こす - 対策は低ESRコンデンサによるバックアップが最も手軽。根本対策として低内部抵抗電池の選定や、ソフトによる電流ピークの分散を行う

製品トレーニング(基礎/動作理論/評価方法)

DC/DCコンバータの負荷過渡応答を改善する方法:内部動作のメカニズムから理解する対策
DC/DCコンバータの選定では、入出力電圧や出力電流だけ見て選定する設計者も多いのではないでしょうか。 実際の回路では、負荷電流が急激に変化したとき(過渡時)に、出力電圧が一時的に変動する **「出力過渡変動(ロードトランジェント)」** が発生します。 この過渡変動による一瞬の電圧変動が大きいと、後段にあるMCUやリセットICが「電圧低下」と誤認識してシステムがリセットしたり、後段デバイスに動作電圧外の電圧を印加する原因になりかねません。 この記事では、DC/DCコンバータの出力過渡変動時のIC内部動作と、抑制するための具体的な対策方法を解説します。
## DC/DCコンバータの内部動作と過渡変動のメカニズム DC/DCコンバータは制御方式によって、過渡変動時のIC内部動作が異なります。 ### PWM制御の場合(エラーアンプ有り) エラーアンプでFB電圧と基準電圧を比較するPWM制御では、エラーアンプの出力を変動させることで、Duty比を変化させ出力電圧を一定に保ちます。 過渡応答時は、下記のような動作がIC内部で起きています。 1. 出力電流1mAで安定。**Duty=5%** を維持。 2. 出力電流が1mAから1000mAに負荷変動 3. 出力電圧が低下し、設定値に戻るまでエラーアンプがDutyを大きくする 4. **Duty=30%** で出力電圧安定。 PWM制御における負荷過渡変動は、新しい動作点(Duty)にエラーアンプがいかに早く収束できるかに依存します。エラーアンプの応答速度が遅いほど、またDutyの変動幅が大きいほど、過渡変動は大きくなります。 ただし、エラーアンプの応答速度はある程度限界があり、電圧制御方式・電流制御方式といった制御方式によっておおよその上限が決まります。 また、強制PWM(F-PWM)制御では負荷によらず連続モードを維持するため、軽負荷と重負荷でDutyがほぼ変わらず動作点の変動幅が小さくなります。そのため、負荷過渡変動が小さくなる傾向があります。
### PFM制御・COT制御の場合 PFM制御やCOT(Constant On-Time)制御では、FB電圧がしきい値を下回ったことをコンパレータが検知し、スイッチングパルスを追加することで電圧を維持させます。 PWM制御のようにエラーアンプが存在しないため、エラーアンプの応答速度が無い分 高速で過渡応答することが可能です。
## 1. 同一IC・シリーズでの対策 ### 出力容量値の増加 出力容量を増やすことで、負荷過渡変動時の電圧変動を抑制します。出力容量値が大きいほど過渡変動は小さくなります。 ただしDC/DCコンバータでは推奨CLの範囲が設けられている場合があります。範囲を超えると位相余裕が減少し発振リスクが生じるため、データシートの推奨容量範囲を確認した上で増やしてください。 また出力容量を増やすとCFB(フィードフォワードコンデンサ)の最適値が変わる製品があります。出力容量の変更によりCFB(フィードフォワードコンデンサ)も調整することで、応答性を最適にすることが可能です。 ### インダクタ値を小さくする インダクタ値が小さいほどコイル電流の傾きが急峻になることで、負荷電流への追随性が向上し 負荷過渡応答の向上が可能です。 ただし、推奨外のインダクタを使用すると、位相余裕が減少し発振等の問題が発生する場合があります。データシートの推奨範囲内で変更するようにして下さい。 ### CFB(フィードフォワードコンデンサ)の追加・調整 **FB外付け品に有効** FB抵抗外付け品では、FB抵抗(RFB1)と並列にCFBを接続することで、過渡応答を改善できます。CFBを追加すると、出力電圧の変動が分圧抵抗を介さずFBピンへ高周波的にダイレクトに伝わるため、過渡変動が小さくなります。 多くの製品でCFBを接続する構成が推奨されており、その最適値を調整することで過渡応答を改善できます。 ### MODE端子でPWM固定モードに切り替える **MODE端子付き品のみ対象** PFM/PWM制御とPWM制御を外部信号で切り替えできるMODE端子を持つ製品では、PWM固定モードに切り替えることで負荷過渡変動を抑制することができます。 ただし、PWM制御では軽負荷時の消費電流が増加するため、軽負荷時の低消費かつ応答性を両立させたい場合は、動作モードに応じてMODE端子を切り替えて制御することが必要になります。 ### ダミー負荷でDutyを上げる **PWM:有効 / F-PWM, PFM:効果小** PWM制御では、無負荷・軽負荷状態でDutyが低くなり、動作点の変動幅が大きくなります。特に非連続モードでは、出力電流の変動によりDuty(動作点)が大きく変わります。 ダミー抵抗等で常時ある程度の電流を流してDutyを上げた状態を維持することで、負荷過渡変動時のDuty変動幅を小さくし負荷過渡変動を改善できます。 なお、低消費電流が必要なアプリケーションでは、システム要件的にこの方法を適用することが難しい場合があります。 ### スイッチング周波数を高いタイプを選択する PWM制御では、スイッチング周波数が高いほど1スイッチングサイクルあたりの間隔が短くなり、エラーアンプがDutyを修正できる頻度が増えるため、過渡応答が改善します。 また同一シリーズでスイッチング周波数を高くすると、コイルのインダクタンス値が低くなる傾向にあります。インダクタンス値が低くなると、コイル電流の傾きが急峻になることで、負荷電流への追随性が向上し 負荷過渡応答の向上が可能です。 ## 2. 負荷側での対策 ### 負荷の電流変動量・スルーレートを抑える DC/DCコンバータの過渡変動は負荷電流の変化速度(スルーレート)と変化量に依存します。負荷側の設計で電流変化を緩やかにすることも有効な対策です。 * **スルーレートを緩やかにする** MCUの動作クロックを段階的に立ち上げる、パワースイッチFETのゲート抵抗を大きくして立ち上がりを鈍らせるなどの対策が有効です * **周辺デバイスの起動・動作タイミングをずらす** 複数のデバイスを同時に起動・動作させると出力電流が大きくなるため、タイミングをずらすことで出力電流の変動幅を小さくします * **過渡変動の収束前に次の変動が重ならないようにする** DC/DCが負荷過渡変動から回復する途中、つまりエラーアンプがDutyを動作点に戻し切る前に次の負荷変動が発生すると、Dutyの変動幅がさらに大きくなり、通常の負荷変動時よりも出力電圧の変動が大きくなる場合があります。 複数の負荷が連続して動作するシステムでは、前の過渡変動が十分に収束してから次の負荷を動作させるよう、動作タイミングを調整することが有効です。 ## 3. IC自体の変更 ### 高速応答のDC/DCコンバータに変更する DC/DCコンバータの負荷過渡応答特性は製品によって大きく異なります。高速応答が必要な場合は、負荷過渡応答が良好な製品への変更も検討してください。 最近では過渡応答特性が良好なCOT制御を採用した製品を選定するのもお勧めです。 ## まとめ - DC/DCの過渡変動はPWM制御ではエラーアンプがDutyの動作点を調整する時間の遅れ、PFM・COT制御ではコンパレータの反応時間に起因する - 出力容量を増やすことで変動を吸収するのが基本対策だが、推奨範囲を超えると発振リスクがある - インダクタ値を小さくすることで電流応答を速くできるが、推奨範囲を超えると発振リスクがある - スイッチング周波数を高くすることでPWM制御の応答性を改善できる - FB外付け品ではCFBの追加・調整で過渡応答を改善できる - MODE端子付き品はPWM固定モードへの切り替えが有効 - 負荷の動作タイミングをずらし、過渡変動が収束する前に次の変動が重なるのを避ける - 根本的な改善には高速応答品・COT制御品への変更を検討する
同期整流とは何ですか

同期整流方式は、DC/DCコンバータにおいて、電流の還流(逆流)を防ぐために用いられる還流ダイオード(ショットキーバリアダイオード: SBD)の代わりに、MOSFETを同期して使用する方式です。

DC/DCコンバータの性能、特に効率を大きく左右する要素の一つに、ドライバ構成の種類と配置があります。
DC/DCコンバータの効率向上に不可欠な技術である同期整流方式や他の方式との違いを解説します。

非同期整流方式

Pch FETとSBD(ショットキーバリアダイオード)を組み合わせます。
SBDの順方向電圧降下による損失があるため効率は劣りますが、DC/DCコンバータ内部の制御回路がシンプルにできるメリットがあります。
SBDが外付けとなるので、同期整流方式と比べて部品点数が増えます。

同期整流方式

還流ダイオードのSBDの代わりにMOSFETを同期して使用する方式です。
ダイオードのVF損失がないため、高出力電流時や低出力電圧時でも高い効率を実現できます。
降圧DC/DCコンバータの場合、High Side側のドライバFETにPch FETを使用、Low Side側のドライバFETにNch FETを使用します。

ブートストラップ方式

同期整流方式で、High Side側とLow Side側の両方のドライバにNch FETを使用する方式です。
High Side側にNch FETを使用するため、同期整流方式と比べドライバサイズを小さくできるメリットがあります。
これにより、同サイズでより低オン抵抗を実現できたり、同等の性能であればより小型化・低コスト化が可能になります。

ただし、High Side側にNch FETのゲートを駆動するために、VIN電圧以上の電圧が必要になるため ブートストラップ容量が必要となります。

ドライバ構成主スイッチ還流素子特徴効率部品
点数
非同期整流方式Pch FETSBD制御回路シンプル普通
同期整流方式Pch FET Nch FET 高効率、大電流対応、複雑な制御が必要高い少ない
ブートストラップ方式Nch FET Nch FET 高効率、大電流対応、複雑な制御が必要非常に高い普通

電圧検出器の解除遅延とは何ですか

解除遅延機能

電圧検出器の解除遅延機能とは監視電圧が解除電圧に達するとすぐに解除信号を出力せずに、一定時間経過してから解除信号を出力する機能です。この遅延時間のことを解除遅延時間と呼び、IC内部で解除遅延時間が設定されている製品と外付けのコンデンサで外調可能な製品があります。

遅延時間 内部設定品
遅延時間 外部調整品

解除遅延時間はなぜ必要か?

電源は立ち上がり直後にはリンギング等により電圧が安定しない場合があります。
このような場合、解除遅延機能の無い電圧検出器を使うと、電源電圧が変動している領域で電圧検出器の出力が”H”と“L”を繰り返す可能性があります。この”H”と”L”の繰り返しにより、後段のMCUの誤動作に繋がる可能性があります。

このような誤動作を防ぐため、電源電圧が安定してから解除信号を出力するように、解除遅延機能(解除遅延時間)が必要となります。
また電源立ち上がり以外で電源ラインが不安定になる代表的な例としては以下が挙げられます。

  • 機械式スイッチのON/OFF時 (機械式スイッチのチャタリング)
  • 電源ラインのインピーダンスが大きい / 配線が長い場合
  • 電池挿入時、実装時のチャタリング
CLディスチャージ・ディスチャージ機能とは何ですか

CLディスチャージ(ディスチャージ機能)とは、スタンバイ時に出力ラインに接続された容量の電荷を急峻に放電する機能です。TOREXではCLディスチャージ・CL放電機能と呼んでおり、ディスチャージ機能 / オートディスチャージ機能等の別名称で呼ばれることもあります。

CLディスチャージ機能が無いと、スタンバイ時に出力容量の電荷を引き抜くことができず出力電圧が緩やかに低下します。出力電圧が緩やかに低下すると後段のデバイスの誤動作等を引き起こすことがあります。

またFPGA等のデバイスでは、立下りの電源シーケンスを要求される場合があります。これらの場合、電源シーケンスを満たすため、出力電圧の立下りを早くするCLディスチャージ機能を活用し、立下りシーケンスを守るように設計していく必要があります。

CLディスチャージ無し : XC6221A
CLディスチャージ有り : XC6221B

また一部の用途では、CLディスチャージ機能がデメリットになることもあります。

DC/DCやLDOの出力側から外部電圧が印加されるOR接続を行う用途では、CLディスチャージ機能が動作することで出力側から電流を常時引き抜き続けます。

これは外部電源から余分な消費電流が使われるだけではなく、CLディスチャージを行う内部素子の特性劣化等が起きる可能性もあるため、注意が必要です。

OR接続時に CLディスチャージ機能が悪影響を及ぼす例
DCDC コンバータとコントローラの違いは何ですか

ドライバFETを内蔵しているDC/DCをDC/DCコンバータと呼びます。
反対にドライバFETを内蔵しておらず、外付けのFETを制御するDC/DCのことを、DC/DCコントローラと呼びます。

降圧DC/DCコンバータ
降圧DC/DCコントローラ

DC/DCコンバータで電源を構成した場合、外付け部品が少なくなるため、実装面積を抑えることができます。しかし、発熱源のドライバFETがICに内蔵されるため、ドライバFETによる損失によりジャンクション温度が上昇します。そのためジャンクション温度が動作範囲内に収まるように熱設計を注意深く行う必要があります。

DC/DCコントローラは、ドライバFETを選定することで様々な電源仕様に最適な回路を構築可能です。ただし、DC/DCコンバータと比べて外付け部品が増えるため、実装面積が大きくなります。また部品点数が増え、実装面積が増えることから、低ノイズ設計や最適な周辺部品を選定するためのノウハウが必要となります。

DC/DC コンバータDC/DC コントローラ
部品点数 / 省スペースGoodNormal
設計難易度GoodBad
設計自由度NormalGood
熱設計BadGood
DCDCコンバータが電圧レギュレータより効率が良いのはどうしてですか

DC/DCコンバータが電圧レギュレータより効率が良いのは、出力電圧を制御する方式の違いに起因します。

電圧レギュレータはドライバFETのオン抵抗を調整することで出力電圧を制御します。つまり、ドライバFETで入力電圧と出力電圧の差分である入出力電位差をIC内部で電圧降下させることを意味します。
このドライバFETの電圧降下は損失となるため、理想的な電圧レギュレータの効率は “VOUT/VIN x 100” となります。

一方DC/DCコンバータは、ドライバFETのON/OFF時間を調整することで出力電圧を制御します。

ドライバFETがONしている時のオン抵抗は小さいため、オン抵抗とドライバFETに流れる電流による導通損は小さくなります。導通損以外にも、スイッチング損失等も発生しますが、それらを含めても電圧レギュレータよりも損失が小さくなり、電圧レギュレータより効率がよくなります。

上記内容は一般的な内容であり、実際には電源仕様やICの消費電流、DC/DCコンバータのオン抵抗等の要素により効率は異なってきます。
それらの条件によっては、電圧レギュレータのほうが高効率の場合もあるので、使用条件によって最適な製品を選定することが重要です。

EN端子を中間電圧で駆動すると消費電流が増加する理由
ICの入力端子(EN端子、CE端子等)にVINより低い"H"電圧(中間電圧)が印加されると、消費電流が通常動作時よりも増加する製品が多いです。この現象のメカニズムについて説明します。 ## 原因:CMOSインバータの貫通電流 EN端子の入力回路には一般的にCMOSインバータが使われています。CMOSインバータはPch FETとNch FETが直列接続された構造です。 * **"H"入力時**:PchがOFF、NchがON → 貫通電流は流れない * **"L"入力時**:PchがON、NchがOFF → 貫通電流は流れない * **中間電圧入力時**:PchとNch**両方が同時に半ON状態** → VINからGNDへ貫通電流が流れる
貫通電流を抑制するため、Pch・Nchと直列に抵抗素子または定電流素子を挿入している製品が多いですが、中間電位が印加されると消費電流が増加してしまいます。抵抗値・定電流値はICにより異なります。 この消費電流増加量はデータシートに記載されていないことが多いため、**実機で確認するか、メーカへ問い合わせることを推奨します。** ## VINと同電位の"H"電圧では貫通電流は発生しない VINと同電位の"H"電圧を入力した場合、PchはVGS = 0VとなりOFFするため、一般的に貫通電流は発生しません。 ただし、VINより高い電圧の印加をNGとしている製品もあります。ESD保護素子の構造上、VINより高い電圧を印加するとESD保護素子が導通し、意図しない電流経路が発生する場合があるためです。 EN端子にVINより高い電圧を印加する場合は、**データシートで絶対最大定格を確認し、問題がないことを確認してください。** ## まとめ - EN端子にVINより低い中間電圧が印加されるとCMOSインバータで貫通電流が発生し消費電流が増加する - 消費電流の増加量はデータシートに記載されていないことが多く、実機確認またはメーカへの問い合わせが必要 - VINと同電位の"H"電圧では貫通電流は一般的に発生しない - VINより高い電圧の印加はESD保護素子の影響で問題になる場合があるため、絶対最大定格を確認すること
ICが動作しません。原因の切り分け方と確認手順を教えてください
ICやシステムが期待通りに動作しない場合、設計ミス・実装ミス、または設計時に想定していなかった現象が発生している可能性があります。 原因はケースによって様々ですが、ここでは原因を切り分けて特定するための基本的な進め方を説明します。 ## **1. 測定環境の確認** 基板や回路の確認に入る前に、まず測定環境に問題がないか確認しましょう。 * **安定化電源の電流制限** 電流制限値が低すぎると、起動時の突入電流で電源が絞られ、正常に起動できないことがあります。 * **電子負荷の動作モード** CC(定電流)モードで評価している場合、ICに内蔵の電流制限機能が動作して起動不良等の原因になることがあります。 * **マルチメータの入力インピーダンス** 入力側にマルチメータを接続していると、マルチメータの抵抗成分により供給電圧が低下して正常に動作しないことがあります。 ## **2. 動作しない現象を把握する** まず「どのICが・どのように動作しないか」を明確にします。 異常動作が発生する入力電圧・出力電流・特定の動作モード・温度依存・不良率などを調べ、どういった条件でどのような症状が発生するのかを把握しましょう。この情報は原因特定のために非常に重要です。 ## **3. 原因の範囲を絞り込む** 動作しない回路付近で後段デバイスを削除・前段電源を切り離すなどして、原因の範囲を絞り込みましょう。 具体的な例としては以下のような切り分けが有効です。 * **電源の切り替えによる切り分け** 電池接続時に異常動作が発生する場合、安定化電源に切り替えて動作確認します。 電池の内部インピーダンスによる電圧降下や電流不足が原因かどうかを切り分けられます。 * **後段デバイスの切り離し** 後段のチップセットや負荷デバイスの電源ラインを遮断・オープン状態にして、後段デバイスが原因か切り分けます。 ## **4. 不良率で原因を切り分ける** ### **不良率が高い場合** 不良率が高い場合は、設計・実装に起因する問題が疑われます。まず以下を重点的に確認してください。 1. **半田付け・実装向きの確認** 半田ブリッジ・半田不足・部品の向きミスがないか確認します。 詳細は「ICの半田付けが正常にできているか確認する方法」の記事を参照してください。 2. **実装部品の確認** 品番・極性・実装向き・定数が正しいか確認してください。 特に似た外観の部品の取り違えに注意が必要です。
### **不良率によらず確認すること** 回路図の結線・定数ミスと各ノードの電圧・波形確認は、不良率によらず重要な確認項目です。 問題になっているIC・周辺部品の電圧・電流が所望の動作になっているかを確認しながら、回路図に問題がないか見ていきましょう。 異常動作が出ているICだけでなく、その前後のデバイスの特性や周辺部品が原因の可能性もあります。「ここは原因ではない」という思い込みをもたずに、一つ一つノードを確認していくことが重要です。思い込みがあると、真因に気づくのが遅れてしまうことがあります。 * **3-1. 各ノードの電圧・波形確認** IC直近で所望の電圧が入力されているか確認します。ICが動作していない場合は、起動途中で動作停止している可能性があるので、起動波形をチェックしてください。波形確認の際は、確認したい現象に合わせて時間軸・電圧・電流のスケールを適切に設定することが重要です。 * **3-2. ICの動作・データシートの確認** ICが期待通りの動作をしているか、データシートに記載されている動作説明・推奨定数・注意事項を改めて確認しましょう。見落としがちな動作条件や制限事項が原因になっているケースがあります。 * **3-3. 回路図の確認(結線・定数ミス)** 回路図の結線が正しいか、定数が設計通りかを確認します。似た値の部品の取り違えや、フィードバック抵抗の逆差しなどは見落としがちです。 また容量の定数確認では、そのノードに接続している全容量を確認するのが重要です。 よくある事例としては、DC/DCの直近には推奨通りの出力容量しか接続していないが、その後段のFPGAの入力容量に大容量が接続していることで、起動不良が発生する事例が頻繁にみられます。 ## **5. 原因が特定できたら** 原因がわかれば、対策を実施していきましょう。 現象はわかるが対策方法がわからない場合は、上記で調べた症状・条件・不良率などの情報をICメーカに伝えて、対策方法を相談するのも一つの方法です。 ## **まとめ** 1. 測定環境に問題がないか確認する 2. どのICが・どのような条件で動作しないかを把握する 3. 後段デバイスの切り離し等で原因の範囲を絞り込む 4. 不良率が高い場合は半田付け・実装部品を重点的に確認する 5. 各ノードの電圧・波形確認と回路図の結線・定数確認を行う 6. 原因が特定できたら対策を実施。わからない場合はメーカに相談する
ICの半田付けが正常にできているかわかりません。簡易で確認する方法はありますか?
ICを実装したが期待通りに動作しない場合、半田付け不良が原因の一つとして疑われます。ここでは外観確認とテスターを使った簡易チェック方法を紹介します。 ## **1. 外観確認** まず目視でざっくりチェックします。虫眼鏡や顕微鏡があれば活用しましょう。社内でスマホが使えるのであれば、スマホのカメラ機能で確認してもいいでしょう。 * **半田ブリッジ(ショート)**: 隣接するピン間に半田が橋渡しになっていないか確認します。特にピッチの細かいICで発生しやすいです。 * **半田不足・未接合(オープン)**: ピンと基板のランドが接触していない、または半田量が少なすぎてフィレットが形成されていない箇所がないか確認します。 * **ツームストーン現象(マンハッタン現象)**:リフロー時にチップの左右の電極にかかる半田の表面張力がアンバランスになり、チップが片側に引っ張られて立ち上がってしまう現象です。ランド面積・半田量・温度・搭載位置のばらつきなどが影響します。 * **浮き・傾き**: ICが基板から浮いていたり、傾いて実装されていないか確認します。
## **2. テスターによる確認(ESD保護素子の活用)** 目視で問題がない場合は、テスターのダイオードチェック機能を使って各端子の接続状態を確認できます。 ESD保護素子の記事で紹介した通り、ICの各端子にはESD保護用のダイオードが内蔵されています。このダイオード特性を利用して、端子がGNDや電源ラインに正しく接続されているかを確認します。 ### **確認方法** 1. 基板の電源をオフにした状態で確認します。 2. テスターをダイオードチェックモードに設定します。 3. データシートで各端子のESD保護素子の構成を確認します。 4. テスターの **マイナスプローブをGND(ESD保護素子のアノード側)** に当て、**プラスプローブを確認したい端子(ESD保護素子のカソード)** に当てます。 5. 正常に半田付けされていれば、内蔵ダイオードの順方向特性(0.3V~0.7V程度)が表示されます。オープン(半田不良)の場合は導通しません。
### **注意点** * 必ず電源をオフにした状態で測定してください。 * 回路によっては、他ラインに電流が流れることでダイオード特性が測定できず、端子の接続性確認ができない場合があります。 * テスターのダイオードチェックモードでは、ICの絶対最大定格を超える電圧が印加される場合があります。試作・デバッグ用途での簡易確認としてご活用ください。量産工程では使用しないでください。 ## **まとめ** | 確認方法 | 内容 | |---|---| | **外観確認** | 半田ブリッジ・半田不足・浮き・傾きをチェック | | **テスター(ダイオードチェック)** | 内蔵ESD保護ダイオードの順方向特性で接続状態を確認 |
IC内部のプルアップ・プルダウン抵抗値の算出方法を教えて下さい

 ICにプルアップ抵抗・プルダウン抵抗が内蔵されているICで、プルアップ抵抗・プルダウン抵抗の抵抗値が規定されていない場合の算出方法を説明します。

Step1:ブロック図の確認

 まず、プルアップ抵抗・プルダウン抵抗の算出の前に、ブロック図の確認を行うことが重要です。

これは、プルアップ・プルダウンが抵抗でされているのではなく、定電流素子でプルアップ・プルダウンされている場合があるからです。

電圧レギュレータ XC6228 : 抵抗でプルダウン
ロードSW XC8111 : 定電流素子でプルダウン

 定電流素子でプルアップ・プルダウンされている場合は、抵抗と異なり印加電圧により電流は変わらず、定電流となります。データシートに記載の端子電流を参照しましょう。

Step2:抵抗値の算出

ブロック図を確認して、抵抗でプルアップ・プルダウンされていた場合は、データシートの端子電流を確認します。CE端子にプルダウン抵抗が内蔵されている電圧レギュレータXC6228を例に説明します。

電圧レギュレータ XC6228 ブロック図

XC6228はプルダウン抵抗が内蔵されているため、プルダウン抵抗に電流が流れる CE “H”での端子電流を確認します。

PARAMETERSYMBOLCONDITIONSMIN.TYP.MAX.UNITS
CE "H" CurrentICEHVCE=VIN=5.5V3.05.59.0μA
XC6228 CE "H"端子電流

ここで、CE “H” Current を規定している、測定条件(CONDITIONS) を確認します。

CONDITIONS に” VCE=VIN=5.5V “ と記載しているのは、CE=5.5V印加時の”H” Currentを規定しているという意味です。CE印加した電圧がプルダウン抵抗に印加されるため、プルダウン抵抗に5.5V印加すると、CE ”H” Currentが流れるということになります。 ここまでわかれば、あとはオームの法則を使ってプルダウン抵抗値を計算していきます。

オームの法則 “R = V / I” より、下記の式が算出されます。

CE印加電圧 = CE “H” Current x “プルダウン抵抗

上式を用いると、プルダウン抵抗は下記のように算出できます。

プルダウン抵抗 MIN = 5.5V / CE “H” Current MAX = 611kΩ

プルダウン抵抗 TYP = 5.5V / CE “H” Current TYP = 1000kΩ

プルダウン抵抗 MAX = 5.5V / CE “H” Current MIN = 1833kΩ

また、プルダウン抵抗を例に抵抗値の算出を行いましたが、プルアップ抵抗でも同様に算出可能です

LDOの負荷過渡応答を改善する方法:内部動作のメカニズムから理解する対策
LDOやDC/DCの選定では、入出力電圧や出力電流だけ見て、選定する設計者も多いのではないでしょうか。 実際の回路では、負荷電流が急激に変化したとき(過渡時)に、出力電圧が一時的に変動する **「出力過渡変動(ロードトランジェント)」** が発生します。 この過渡変動による一瞬の電圧変動が大きいと、後段にあるMCUやリセットICが「電圧低下」と誤認識してシステムがリセットしたり、後段デバイスに動作電圧外の電圧を印加する原因になりかねません。 この記事では、LDOの出力過渡変動時の内部動作と、抑制するための具体的な対策方法を解説します。
## LDOの内部動作と過渡変動のメカニズム LDOは出力電圧を一定に保つため、内部のPch FET(パワートランジスタ)のゲート電圧をエラーアンプが調整し、FETのオン抵抗を変化させることで出力電流量を制御しています。
定常状態では、FETのゲート電圧を調整することで、オン抵抗を制御し出力電圧が一定になるように制御しています。 過渡応答では、下記のような動作がIC内部で起きています。 1. 出力電流1mAで安定。ドライバFETの **Vgs=0.7V** を維持。 2. 出力電流が1mAから100mAに負荷変動 3. 出力電圧が低下し、出力電圧が設定値になるまでドライバFETのVgsを大きくする 4. ドライバFETの **Vgs=1.2V** で出力電圧安定。 LDOから見ると、負荷過渡変動とは変動後の負荷変動で安定するための **動作点(ゲート電圧Vgs)** をエラーアンプでいかに早く動かすことができるかです。この時間が遅ければ負荷過渡変動は大きくなり、この時間が早ければ負荷過渡変動は小さくなります。 過渡変動を小さくするためには、以下の2つのアプローチがあります: * **応答を早くする** * ゲート電圧の動作幅を小さくする * エラーアンプの応答速度を早くする * **変動を出力コンデンサで吸収する** * CLを増やして出力電圧低下を抑制する ## 対策1. 同一ICでの対策 ### 出力容量値の増加 出力容量を増量することで、負荷電流の急変時にコンデンサが電荷を供給・吸収し、過渡変動を抑制します。CLが大きいほど過渡変動は小さくなります。 ただしLDOによっては推奨CLの上限が設けられている場合があります。データシートの推奨容量範囲を確認した上で増やしてください。 ### CFB(フィードフォワードコンデンサ)の追加・調整 FB抵抗外付け品のLDOでは、上側抵抗(RFB1)と並列にコンデンサ(CFB)を接続することで、過渡応答を改善できます。 CFBを追加すると、出力電圧の変動が分圧抵抗を介さずFBピンへ高周波的にダイレクトに伝わるため、エラーアンプの応答がブーストされ過渡変動が小さくなります。 CFBの最適値は製品・回路条件によって異なります。データシートに推奨値が記載されている場合はそれを参照し、記載がない場合はメーカへの確認をおすすめします。 ### 出力電流をゼロに近づけない(ドライバFETのゲート電圧を高くする) 無負荷・軽負荷状態ではVGSがドライバFETのVth付近になり、FETはほぼオフに近い状態になります。この状態で負荷変動が起きると、動作点に達するまでのゲート電圧変動幅が大きく、定常状態になるまでの時間が遅くなります。 負荷抵抗の追加等で常時ある程度の電流を流してVGSをVthから離した状態を維持することで、過渡時の応答速度が改善します。ただし、低消費電流が必要なアプリケーションでは、この方法を適用することがシステム要件的に難しい場合があります。 ## 対策2. 負荷側での対策 ### 負荷の電流変動量・スルーレートを抑える LDOの過渡変動は負荷電流の変化速度(スルーレート)と変化量に依存します。負荷側の設計で電流変化を緩やかにすることも有効な対策です。 * **スルーレートを緩やかにする** MCUの動作クロックを段階的に立ち上げる、パワースイッチFETのゲート抵抗を大きくして立ち上がりを鈍らせるなどの対策が有効です * **周辺デバイスの起動・動作タイミングをずらす** 複数のデバイスを同時に起動・動作させると出力電流が大きくなるため、タイミングをずらすことで出力電流の変動幅を小さくします * **負荷の動作タイミングをずらす(過渡変動の重なりを避ける)** LDOが負荷過渡変動から回復する途中、つまりエラーアンプがドライバFETのゲート電圧を動作点に戻し切る前に次の負荷変動が発生すると、ゲート電圧の変動幅がさらに大きくなり、通常の負荷変動時よりも出力電圧の変動が大きくなる場合があります。 複数の負荷が連続して動作するシステムでは、前の過渡変動が十分に収束してから次の負荷を動作させるよう、動作タイミングを調整することが有効です。 ## 対策3. IC自体の変更 ### 高速応答のLDOに変更する LDOの負荷過渡応答特性は製品によって大きく異なります。一般的に低消費LDOは応答速度が遅く、消費電流の大きいLDOは過渡応答も速い傾向があります。またGreen Operation(GO)機能のような、負荷電流に応じてIC内部の動作モード(低消費モード⇄高速応答モード)を自動で切り替える技術を搭載したLDOも存在します。 IC変更が可能なのであれば高速応答可能な製品へ変更することで根本的な改善が可能です。 ## まとめ - LDOの出力過渡変動はエラーアンプがFETの動作点を調整する時間の遅れに起因する - 出力容量を増やすことで変動を吸収するのが基本対策だが、推奨範囲を超えると発振リスクがある - FB抵抗外付け品ではCFBの追加・調整で過渡応答を改善できる - 負荷側の電流スルーレートを緩やかにすることも有効 - 根本的な改善には高速応答LDOへの変更を検討する - 負荷の動作タイミングをずらし、過渡変動が収束する前に次の変動が重なるのを避ける
Lxとは何の略称ですか

トレックスでは、DC/DCコンバータのスイッチング端子(コイルと接続される端子)をLxと呼んでいます。
他社では、SW端子と呼ぶメーカーもあります。

Nch オープンドレイン・CMOS出力とは何ですか

Nch オープンドレイン出力・CMOS出力とは出力端子の出力構成の種類を表します。

Nch オープンドレイン出力

CMOS出力

Nch オープンドレイン出力:出力電圧

CMOS出力:出力電圧

Nch オープンドレイン出力は、出力端子とGND端子間にだけNch FETが入っています。
GND側にしかFETが入っていないため、外部にプルアップ抵抗とプルアップ電圧を用意する必要があります。出力先のマイコン等に応じたプルアップ電圧を準備することで、出力先のデバイスに合わせた出力電圧のレベル変換が可能です。

CMOS出力では、出力端子内部にCMOSインバータを搭載しています。
Nch オープンドレイン出力と違い プルアップ抵抗やプルアップ電圧を用意する必要がありません。そのため、CMOS出力ではプルアップ抵抗に流れる消費電流が存在しないため、低消費用途に最適です。

Nch オープンドレイン出力CMOS出力
出力電圧High電圧プルアップ電圧VIN
Low 電圧0V0V
消費電流出力“L”時に電流消費0μA
立上り速度プルアップ抵抗に依存早い
並列接続複数のNch オープンドレインを並列接続可能不可
NC端子とはなんですか?NC端子の適切な処理方法を教えて下さい。

NC端子の適切な処理

電子回路を設計する際、ICのデータシートには様々な端子情報が記載されています。
その中でしばしば登場するのが「NC端子」(No Connection、未接続端子)です。多くの場合、NC端子は電気的にどこにも接続しなくて良いと考えられがちですが、実際にはその処理を誤ると、予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。

本記事では、NC端子の基本的な考え方と、特に注意すべき処理方法について解説します。

1.NC端子の基本的な考え方

「NC端子」と明記されている端子は、電気的には回路上のどこにも接続しないのが基本です。
これは、IC内部でこの端子が電気的にオープンであることを示しています。

そのため、通常は配線パターンを引かず、オープン(開放)状態にしておくのが正しい処理です。

2.類似名称の端子と注意点

NC端子と似たような名称で、誤解を招きやすい端子が存在します。
これらは、見かけ上IC内部が「未接続」に見えても、実はIC内部に接続されており、特定の処理が必要な場合があります。

内部接続があるが機能無しの端子:

データシートには「NC端子」と記載されているにもかかわらず、実際にはIC内部の特定の回路ブロックに接続されている端子が存在します。 これらの端子は、特定の機能を持たないものの、ICの安定動作・テスト等のためにデータシートで指定された接続(例:GND接続、VDD接続、特定の抵抗を介した接続など)が必要となる場合があります。
指定通りの処理を行わないと、ICの誤動作、消費電流の増加、ノイズの発生、あるいは最悪の場合ICの損傷に繋がる可能性があります。

トレックス製品では、「NC端子」はIC内部が未接続な端子で統一しています。
内部接続がある機能無しの端子については「NC端子」以外の端子名称を採用し お客様の設計ミスを低減するようにしています。

3.正しいNC端子処理の原則

これらの点を踏まえ、NC端子を扱う際の最も重要な原則は以下の通りです。

「NC端子と記載されていても、必ずデータシートの記述を確認し、指定がある場合はその指示に厳密に従う」

データシートに具体的な指示がない場合はオープンで問題ありませんが、少しでも疑問があれば、ICメーカーに確認することが最も確実です。

トレックス製品では、「NC端子」は基本的にはオープンにすることを推奨しています。
ただしPCBレイアウトや他ICとの互換性のため、「NC端子」を他電位と接続しても問題なくご使用いただけます。

PFM制御、PWM制御とは何ですか

DC/DCコンバータは、様々な制御方式が用いられます。
その代表がPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御とPFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)制御です。
この制御方式の違いは、軽負荷の効率、ノイズ特性、出力リップル電圧に大きく影響します。

1.PWM制御(Pulse Width Modulation)

PWM制御は、スイッチング素子を一定の周波数でオン・オフさせ、そのオン時間幅(パルス幅)を変化させることで出力電圧を安定させる制御方式です。
出力電圧が目標値からずれた場合、その誤差に応じてオン時間(デューティ比)を調整します。

特徴

スイッチング周波数が一定:ノイズの発生周波数が予測しやすく、対策が比較的容易です。

出力リップルが小さい:常に一定周波数で動作するため、出力電圧の変動(リップル電圧)が小さく安定しています。

デメリット

軽負荷時の効率が低い:負荷が軽い場合でもスイッチング動作を続けるため、軽負荷ではスイッチングするための消費電流の損失で効率が低下します。

2.PFM制御(Pulse Frequency Modulation)

PFM制御は、スイッチング素子のオン時間を一定に保ち、スイッチング周波数を変化させることで出力電圧を安定させる制御方式です。
出力電圧が設定出力電圧より下がると、一定のオン時間でスイッチング素子をオンにし、負荷が軽くなると次のパルスまでのオフ時間が長くなり、周波数が下がります。

特徴

軽負荷時の効率が高い:負荷が軽いときにスイッチング周波数を下げることで、スイッチング回数と損失が減り、高効率を実現します。

出力リップルが大きい:スイッチング周波数が変動するため、出力のリップル電圧の変動が大きくなる傾向があります。

ノイズスペクトルが変動:スイッチング周波数が負荷によって変わるため、ノイズ対策が難しく、可聴域ノイズの発生可能性もあります。

3.PWM/PFM自動切替制御

PWM/PFM自動切替制御は、上記二つの制御方式の利点を組み合わせたハイブリッドな方式です。 出力電流(負荷)の大きさによって、PWM制御とPFM制御を自動的に切り替えます。 重負荷時は安定性と低リップルが求められるためPWM制御で、軽負荷時は高効率が求められるためPFM制御に切り替わります。

特徴

全負荷範囲で高効率:幅広い負荷範囲で高い効率を維持できます。

安定性と効率のバランス:両制御の利点を享受できます。

デメリット

切り替え時に一時的な出力変動やノイズが発生する可能性があります。

動作モードスイッチング
周波数
ON時間幅軽負荷効率出力リップルノイズスペクトル
PWM制御一定 可変 低い小さい特定周波数
PFM制御可変 一定 高い大きい負荷により変動
PFM/PWM
自動切替
負荷に応じて
自動切替
可変 高い軽負荷:大きい
重負荷:小さい
軽負荷:変動
重負荷:特定周波数
Ship機能とは何ですか

Ship機能とは

Ship機能とは、製品出荷後の長期保管中に電池残量を減らさないようにする機能です。Ship機能をシッピングモード等の名称で呼ぶこともあります。

Ship機能を搭載していない電子機器では、出荷後も電池から電流が消費された状態で出荷されます。この状態では、出荷後の長期保管中に電池残量が低下します。
製品がエンドユーザの手に渡った時には、電池残量が少なく製品が動作しない場合や、目標の電池駆動時間動作しないことが考えられます。

これらのため、出荷後の電池からの電流消費を抑制するShip機能が必要とされています。

UVLOとはどういう機能ですか

UVLO(アンダーボルテージロックアウト)機能とはUnder Voltage Lock Outの略称で、ICの電源電圧が低くなった場合にICが誤動作しないため内部回路を停止する機能のことです。

ICの誤動作を防止することを目的としている製品ではなく、電池電圧が低下した場合の消費電流抑制を目的としてUVLO機能を搭載している製品もあります。

DC/DC等のスイッチング電源の場合、電源電圧が低下しUVLO機能が働くとスイッチング動作を停止します。その後、電源電圧が上昇するとUVLO機能が解除され、スイッチング動作を開始するのが一般的です。

詳細な挙動については、製品によって異なるので各製品のデータシートを確認する必要があります。

サーマルシャットダウンとは何ですか

サーマルシャットダウン・過熱保護機能とは、ICのジャンクション温度が過度に高くなった場合に、ICの誤動作防止や特性劣化・破壊を防ぐための機能です。

一般的な電圧レギュレータやDC/DCの場合、サーマルシャットダウン・過熱保護機能が動作すると出力側への電流供給を停止し出力をオフします。

 出力側への電流供給が停止すると、自己発熱がなくなることからジャンクション温度が低下します。

 自己復帰タイプのサーマルシャットダウン・過熱保護機能を搭載しているICでは、ジャンクション温度がサーマルシャットダウン・過熱保護機能の解除温度まで低下すると、ICが再起動を行います。  再起動後 過負荷状態が継続されていた場合、再度サーマルシャットダウン・過熱保護機能が動作しサーマルシャットダウン・過熱保護機能が検出・解除を繰り返す挙動となります。

DC/DCコンバータ(XC6702) : サーマルシャットダウン 検出⇔解除状態
(Condition : Vin=11.8V, Vout=1.8V)

また類似機能として、充電ICでは電池の温度監視を行い、電池の温度状態により最適な充電制御を行う製品もあります。

サーマルシャットダウンの検出温度は、なぜ絶対最大定格のTjmaxより高いのですか?
データシートを見ると、サーマルシャットダウンの検出温度が絶対最大定格のTjmaxより高く設定されています。 例えば、Tjmax = 125℃に対してサーマルシャットダウン検出温度 = 150℃といった設定です。「サーマルシャットダウンが動作する前にICが壊れるのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。 この記事では、その理由と正しい使い方を解説します。 ## サーマルシャットダウンの検出温度がTjmaxより高い理由 DC/DCコンバータやLDOは、自己発熱を伴いながらもTjmaxの範囲内で動作することが前提です。サーマルシャットダウンはあくまでも異常時の保護機能であり、通常動作中に動作することは想定されていません。 サーマルシャットダウンの検出温度をTjmaxより高く設定しているのは、**Tjmax以下の通常動作を妨げないようにするため**です。もしサーマルシャットダウンの検出温度がTjmaxより低ければ、正常な動作範囲内でサーマルシャットダウンが動作してしまいます。 * **絶対最大定格(Tjmax)** ICの電気的特性を保証しつつ、長期間ストレスなく動作できる上限温度。 * **サーマルシャットダウン検出温度** ICが熱破壊(物理的破損)に至る前に出力を遮断するための最終防衛ライン。 ## 例外:長期間発熱が前提のICはサーマルシャットダウンを低めに設定する場合がある リニア方式の充電ICのように長時間サーマルシャットダウン動作が維持される可能性のあるICでは、ICを保護するためにサーマルシャットダウンの検出温度をTjmaxより意図的に低めに設定している場合があります。 該当製品を使用する際はデータシートをよく確認してください。 ## サーマルシャットダウンを常時動作させる使い方はNG サーマルシャットダウンが繰り返し動作するような状況、すなわちジャンクション温度がサーマルシャットダウン検出温度付近を常に推移するような使い方は絶対にお止めください。 サーマルシャットダウンはあくまでも非常時のフェイルセーフです。通常動作では、ジャンクション温度がTjmaxを超えないよう、適切な熱設計を行ってください。 ## まとめ - TjmaxはICの電気的特性保証と長期動作の上限温度、サーマルシャットダウン検出温度は熱破壊を防ぐ最終防衛ライン - サーマルシャットダウンの検出温度がTjmaxより高いのは、通常動作を妨げないため - サーマルシャットダウンはあくまでも異常時の保護機能であり、常時動作することを前提に使用してはならない - 通常動作ではTjがTjmaxを超えないよう熱設計を行うこと
スイッチング電源の発振周波数とは何ですか

DC/DCやAC/DC等のスイッチング電源の、スイッチング周波数を発振周波数と呼びます。
一般的にはICが重負荷状態でスイッチングを行う際のスイッチング周波数を示します。

一般的には発振周波数が高ければ、部品の小型化や応答速度が速くできるメリットがありますが、効率の低下やEMIノイズの増加等のデメリットもあります。このため、用途・目的に合わせた最適な発振周波数を選定する必要があります。

項目発振周波数 高周波化の影響
効率効率低下
部品サイズ/実装面積小型化
部品コスト安価
過渡応答特性応答性改善
リップル電圧周辺部品/定数に依存
ノイズEMIノイズ悪化

またPFM制御やPFM/PWM制御では、軽負荷時のスイッチング周波数が 発振周波数より低くなるため、ノイズ対策等を行う際は注意が必要です。

ソフトスタート機能とは何ですか、突入電流防止機能との違いは何ですか

ソフトスタート機能とは、ICが起動開始状態になってから、出力電圧が設定電圧に達するまでの時間を制御する機能です。ソフトスタート機能が搭載されていると、出力容量によらず出力の立上り時間が一定になります。

また類似の機能に突入電流防止機能があります。突入電流防止機能は起動時間の制御は行わず、突入電流の抑制のみ行います。

電圧レギュレータ 起動波形

(a) ソフトスタート無し XC6216 @VIN=12V, VOUT=5V

出力容量 : 1μF
出力容量 : 1μF + 33μF
シリーズ名 製品カテゴリ 特徴 データシート ステータス パッケージ
XC6216 電圧レギュレータ 28V input,
150mA LDO
アクティブ

(b) ソフトスタート有り XC6702 @VIN=12V, VOUT=5V

出力容量 : 1μF
出力容量 : 1μF + 33μF

ソフトスタート機能があることのメリットとしては、下記の点が挙げられます。

(a) 突入電流および入力電圧の低下抑制
(b) 出力電圧の立上り時間・スルーレートの制御

シリーズ名 製品カテゴリ 特徴 データシート ステータス パッケージ
XC6702 電圧レギュレータ 36V input (46V/400ms),
High Speed Low
consumption,300mA LDO
アクティブ

(a) 突入電流および入力電圧の低下抑制

ソフトスタート機能が搭載されていないICでは、起動時の出力電圧のスルーレートは制御されていない製品が一般的です。この場合 出力電圧が設定出力電圧に達するまで、ICが出力側に電流を供給することで、過度な突入電流が発生します。
過度な突入電流が発生すると、入力側のインピーダンスにより入力電圧が低下します。この入力電圧の低下が大きいと、ICの起動不良やシステムリセット等の原因となります。

電圧レギュレータ 起動波形 : VIN=4V, VOUT=3V, CL=1μF, RL=20mA/3.0V

突入電流防止機能無し : XC6223B301
突入電流防止機能有り : XC6223F301

(b) 出力電圧の立上りスルーレートの制御

ソフトスタート機能は、ICが起動開始状態になってから、出力電圧が設定電圧に達するまでの時間を制御するため、後段デバイスの起動シーケンス等で出力電圧の立上り時間やスルーレートを調整する場合に活用できます。

IC内部でソフトスタート機能が固定されている製品もありますが、製品によっては外付け部品等でソフトスタート時間を調整できるものもあります。

ソフトスタート時間の調整可能な製品では、出力電圧のスルーレート調整や出力に大容量のコンデンサが接続されている場合の突入電流低減を行うことが可能です。
出力に大容量のコンデンサが接続されている場合は、過度な突入電流が流れることで電源ICの保護機能が動作することで起動不良の原因となるため、ソフトスタート時間の調整等で起動不良対策を行うことが一般的です。

起動波形 : XC9271 500kHz : VIN=12V/VOUT=5V, CL=22μF x2 + 330μF x 3

起動不良@ソフトスタート時間=1.3ms
正常起動@ソフトスタート時間=9ms
シリーズ名 製品カテゴリ 特徴 データシート ステータス パッケージ
XC9271 DC/DCコンバータ 30V Input (46V/400ms)/2A
Ext CLK Sync
PFM/PWM Step-Down
アクティブ

チップイネーブル(CE機能), イネーブル機能(EN機能)とは何ですか

チップイネーブル(CE機能)、イネーブル機能(EN機能)とは、ICの動作全体または一部の機能を停止させる機能です。
ICおよび一部機能を動作状態にすることを、イネーブルと呼びます。
反対にICおよび一部機能を動作停止にすることを、ディセーブルと呼びます。

一般的にはICおよび一部機能を動作停止するディセーブル状態では、出力停止や消費電流が低減します。
詳細な動作はICによって異なるので、使用するICの仕様を確認して下さい。

デッドタイム・貫通電流とは何ですか?
DC/DCコンバータの波形をオシロスコープで観測したとき、スイッチングノード(Lx/SW端子)の電圧が一瞬マイナスに振れるのを見たことはないでしょうか?これは**デッドタイム**と呼ばれる期間に関係しています。 デッドタイムはデータシートに記載されることはほとんどありませんが、DC/DCコンバータの動作を理解する上で知っておくと役立ちます。 ## **1. デッドタイムとは** **同期整流**方式のDC/DCコンバータでは、ハイサイドとローサイドの2つのスイッチ(MOSFET)が交互にオン・オフすることで電圧変換を行っています。 この切り替えの際に、2つのスイッチが**同時にオンになる瞬間**があると、電源からGNDへ過電流が流れ込む「**貫通電流**」が発生し、ICが破損するおそれがあります。 これを防ぐために、両方のスイッチが**同時にオフになる短い期間**を意図的に設けています。この期間を**デッドタイム**と呼びます。 なお、ドライバ内蔵のDC/DCコンバータではデッドタイムはIC内部で自動的に制御されています。
## **2. デッドタイム中に何が起きるのか** デッドタイム中は両スイッチがオフのため、インダクタに流れ続けようとする電流の行き場がなくなります。 この電流は、ローサイドFETに内蔵されている **寄生ダイオード(ボディダイオード)** を通じて流れ続けます。 このときLx/SW端子の電圧はボディダイオードの順方向電圧分だけGNDよりマイナスに引っ張られます。 これがオシロスコープで観測されるマイナス電圧の正体です。 ## **3. 効率への影響** ボディダイオードの順方向電圧($V_F$)は通常のオン抵抗による電圧降下より大きいため、デッドタイム中は余分な損失が発生します。 デッドタイムが長いほどボディダイオードに電流が流れる期間が増えるため、**変換効率が悪化**します。 ## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **デッドタイムとは** | 貫通電流を防ぐために設けた、両スイッチが同時にオフになる期間 | | **デッドタイム中の動作** | インダクタ電流がローサイドFETの寄生ダイオードを経由して流れる | | **Lx/SW端子の挙動** | ボディダイオードの$V_F$によりLx/SW電圧がマイナスに振れる | | **効率への影響** | デッドタイムが長いほどボディダイオードによる損失が増加する |

デッドタイム期間中のスイッチング端子(Lx/SW端子)の絶対定格電圧
同期整流型DC/DCコンバータでは、スイッチング端子(Lx/SW端子)の絶対最大定格に「-0.3V」や「VIN+0.3V」が記載されているのが一般的です。しかし実際にDC/DCを動作させてスイッチングノードの波形を観測すると、この定格電圧を超えていることに気づいた方もいるのではないでしょうか。 普通に動作させているだけなのに定格外になっているが、本当に大丈夫なのか?そのまま使っていいのか? 本記事ではその理由と絶対最大定格との関係について解説します。 ## 1-1. デッドタイム中にLx/SW端子がマイナスになる理由 同期整流型DC/DCコンバータは、主制御スイッチ(High側FET)と同期整流スイッチ(Low側FET)を交互にオン・オフして動作します。両方のFETが同時にオンすると貫通電流が流れるため、両方がオフになるデッドタイム期間が設けられています。 デッドタイム期間中はコイル電流の経路がなくなりますが、コイルは電流を流し続けようとする性質があるため、Low側FETのボディダイオードを通じて電流が流れます。このときLx/SW端子の電圧はGNDからボディダイオードの順方向電圧(VF)分だけマイナスになります。 $$V_{Lx} = -V_F \approx -0.6\text{V} \sim -1.0\text{V}$$
このマイナス電圧はデータシートの絶対最大定格(例:-0.3V)を超えるように見えますが、多くの製品ではデッドタイム中に発生するボディダイオードのVF分のマイナス電圧は設計上考慮済みであり、通常動作の範囲内として扱われています。TOREXの製品では基本的に問題ありません。 ただし、メーカーや製品によってポリシーが異なるため、各メーカーへ確認することを推奨します。 ## 1-2. High側FETのボディダイオードによるVIN超え マイナス電圧と同様に、デッドタイム期間中にLx/SW端子がVINを超える電圧になる場合があります。 デッドタイム期間中にコイル電流が逆方向(コイルからGND方向ではなくVIN方向)に流れる場合、High側FETのボディダイオードを通じて電流が流れます。このときLx/SW端子の電圧はVINからボディダイオードのVF分だけ高くなります。 $$V_{Lx} = V_{IN} + V_F \approx V_{IN} + 0.6\text{V} \sim 1.0\text{V}$$ なお、昇圧DC/DCなどのトポロジーによっては、基準電圧がVINと異なる場合があります。詳細はデータシートを確認してください。 こちらもデータシートの絶対最大定格(例:VIN+0.3V)を超えるように見えますが、1-1と同様に設計上考慮済みの製品が多く、TOREXでは基本的に問題ありません。 ただし、メーカーや製品によってポリシーが異なるため、各メーカーへ確認することを推奨します。 ## 2. 注意が必要なケース 通常動作中のデッドタイム中のボディダイオードのVF分のマイナス電圧は、問題なく使えます。ただし、以下のようなケースでは通常動作とは異なる動作のため、ICが破壊する可能性があります。 * **通常の動作範囲を超えるマイナス電圧の印加** 外部からの電圧印加や、外部回路や誤配線によってLx/SW端子に通常動作では発生しないマイナス電圧が印加された場合、絶対最大定格を超える可能性があります。 * **推奨レイアウトからの乖離による想定外エネルギーの印加** PCBレイアウトが推奨レイアウトから大きく乖離している場合、配線パターンの寄生インダクタンスが大きくなり、スイッチング時にLx/SW端子に想定外のリンギングや電圧スパイクが発生することがあります。この場合、ボディダイオードに想定外のエネルギーが印加され、絶対最大定格を超える可能性があります。 ## まとめ 1. 同期整流型DC/DCコンバータのデッドタイム中、Low側FETのボディダイオードを通じて電流が流れ、Lx/SW端子がVF分マイナスになる 2. 同様に、High側FETのボディダイオードによりLx/SW端子がVIN+VF以上になる場合がある 3. これらの電圧は多くの製品で設計上考慮済みであり、TOREXでは基本的に問題ない 4. ただしメーカー・製品によってポリシーが異なるため、データシートの確認と個別問い合わせを推奨する 5. 推奨レイアウトからの乖離による寄生インダクタンス等で想定外のエネルギーが印加された場合は注意が必要
ハイアクティブ(High Active)・ローアクティブ(Low Active)とはどういった意味ですか

入力信号が ハイ(High)の時に動作する機能を、ハイアクティブ(High Active)やアクティブハイ(Active High)で動作するといいます。

反対に入力信号が ロー(Low)の時に動作する機能を、ローアクティブ(Low Active)やアクティブロー(Active Low)で動作するといいます。

ロードSW(XC8107) : CE論理表

Active High

LogicCE LevelStatus
Active HighHActive
LStand-by
OPENUndefined State

Active Low

LogicCE LevelStatus
Active LowHStand-by
LActive
OPENUndefined State
パワーグッド(Power Good)とは何ですか?どのように活用しますか?
電源IC(LDOやDC/DCコンバータ)のデータシートを読んでいると、「**パワーグッド(Power Good)**」または「**PG**」と呼ばれる端子や機能が記載されていることがあります。 ## **1. パワーグッドとは** パワーグッドとは、電源ICの出力電圧が正常な範囲に達したことを外部に知らせる「**ステータス信号**」です。 出力電圧が規定の閾値(通常は設定出力電圧の90〜95%程度)を超えると、PG端子がHighを出力します。逆に出力電圧が低下したり、異常が発生した場合はLowになります。 ## **2. なぜ必要なのか** 電源を投入した直後、出力電圧はゆっくりと立ち上がります。この立ち上がり中に後段のMCUや回路が動作を開始すると、電圧不足による誤動作や初期化失敗が起きることがあります。 パワーグッド信号を使うことで、「電源が安定してから後段を動かす」という制御が可能になります。 ## **3. 主な活用方法** * **電源シーケンス制御** 複数の電源レールを持つシステムで、前段の電源が安定したことを確認してから次の電源を起動する「パワーシーケンス」に活用できます。 PG信号を次段の電源ICのEN端子に接続する使用方法が一般的です。
* **MCUのリセット制御** PG信号をMCUのリセットピンに接続し、電源が安定するまでMCUをリセット状態に保ちます。電源投入時の誤動作を防ぐ最もシンプルな使い方です。 * **システム監視** 動作中に電源電圧が異常低下した際に、MCUへ割り込み信号として通知するために使われます。 ## **4. 出力形態:Nchオープンドレイン出力** PG端子は一般的に**Nchオープンドレイン出力**です。そのため、外部にプルアップ抵抗を接続して使用します。 プルアップ先はVDDや任意の電源ラインが使えるため、後段の回路の電圧レベルに合わせた柔軟な接続が可能です。 ## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **役割** | 出力電圧が正常範囲に達したことを知らせるステータス信号 | | **出力形態** | 一般的にNchオープンドレイン出力(プルアップ抵抗が必要) | | **主な用途** | MCUリセット制御、電源シーケンス、システム監視 |

リニアタイプ・スイッチングタイプの電源とはどういう意味ですか

電源にはリニアタイプとスイッチングタイプの2種類の電源が存在します。

スイッチングタイプ

スイッチングタイプの電源とは、ドライバトランジスタ/FET等のON/OFFをすることで、電圧を出力する電源のことです。
スイッチングを行うため、高効率・低損失です。
ただしスイッチングノイズが発生するため、EMI対策等が必要になる場合があります。またリニアタイプと比べて設計難易度が高く、周辺部品やPCBレイアウトによっては正常に動作しないこともあります。

リニアタイプ

リニアタイプの電源とは、ドライバトランジスタ/FET等のON/OFFをしないで、電圧を出力する電源のことです。
スイッチングをしないため、低ノイズの電源です。ただし損失が大きく・効率が悪いという特長があります。
具体的な例としては、ドライバFETのオン抵抗を調整して出力電圧を制御する 電圧レギュレータ が該当します。

リニアタイプ電源スイッチングタイプ電源
設計容易性GoodNormal
部品点数 / 省スペースGoodNormal
ノイズGoodBad
効率BadGood
発熱BadGood
乾電池の液漏れ対策はどのようにすればいいですか

乾電池の液漏れの原因のひとつに”乾電池の過放電状態” があります。
乾電池の過放電を抑制するには、1セルあたり0.6V~0.7V以下にならないように 電池から電流を引かないことが重要になります。

弊社では、電池電圧の低下を判定し、後段デバイスを動作停止 および 電源ラインを遮断することで消費電流を1μA以下にすることをお勧めしています。

具体的な消費電流削減の方法については、以下が代表的です。

  • ロードSW のUVLO/低電圧検知機能で電源ライン遮断。 (XC6194 etc)
  • CMOS出力/”H”アクティブタイプの 電圧検出器で電池電圧の低電圧を検知。電圧低下信号によりPch FETで電源ラインを遮断。
  • 昇圧DC/DCのUVLO機能で、電池電圧低下時に昇圧動作/システム停止。 (XC9148G etc)
出力電圧が設定電圧以上に上昇します。原因と対策を教えて下さい。
DC/DCコンバータやLDOの出力電圧が設定値より高くなる場合、主に以下の原因が考えられます。 ## **1. フィードバック抵抗の実装ミス・抵抗値ミス** 出力電圧はFB端子に接続された分圧抵抗($R_{FB1}$・$R_{FB2}$)によって設定されます。この抵抗に問題があると、出力電圧が設定値からずれます。 ### **確認ポイント** * **抵抗値の確認**: $R_{FB1}$・$R_{FB2}$ の抵抗値が設計値通りか確認してください。似た抵抗値の部品の取り違えに注意が必要です。 * **半田不良の確認**: FB端子周辺の半田ブリッジやオープンがないか確認してください。特に $R_{FB2}$ がオープンになると、フィードバックが効かなくなり出力電圧が大きく上昇します。
## **2. 出力側からの電流流入による電圧浮き上がり** 電源ICの出力端子に外部から電流が流れ込む場合があります。この電流により出力電圧が設定値以上に浮き上がることがあります。 多くのLDOやDC/DCは、出力電圧が低下した場合に電圧を維持する制御が備わっています。しかし、出力側から電流が流れ込んで出力電圧が上昇した場合に、電圧を引き下げる制御機構が備わっていない製品がほとんどです。 ### **主な原因** * **SBDのリーク電流** 入出力間や後段デバイスとの間に接続されたSBDのリーク電流が出力側に流れ込むことがあります。 特に高温時はリーク電流が増大するため、出力電圧の浮き上がりが発生しやすくなります。 * **後段デバイスからの電流流入** 負荷側に接続されたSoCなどのチップセットが出力側に数μA程度の電流を流し込むことがあります。 後段がアンプの場合、回路によっては出力側に電流を流しこみ出力電圧の浮き上がりの原因となる場合があります。
### **対策・軽減策** * **出力-GND間への負荷抵抗の追加** VOUT-GND間に抵抗を挿入し、常時電流を流すことで浮き上がった出力電圧を引き下げる方法です。 ただし、常時電流が流れるため消費電流が増加します。設計の制約と照らし合わせて検討してください。 * **リーク電流の小さいSBDの選定** SBDのリーク電流が原因の場合、リーク電流仕様の小さい製品に変更することで軽減できます。 温度条件等によっては、品番変更だけでは完全な対策は難しいのでSBDから理想ダイオードやPNダイオードに変更しなければいけない場合もあります。 ## **3. その他の原因** * **外部ノイズによる誤動作** 外部ノイズが大きい環境では、FB端子や出力ラインにノイズが乗ることでICが誤動作し、出力電圧が設定値通りに制御されない場合があります。 * **PCBレイアウトの問題** パスコンの配置が遠い、フィードバックラインがノイズ源の近くを通っているなど、レイアウトが適切でないと出力電圧が設定値通りに制御されない場合があります。データシートの推奨レイアウトを参考に見直してください。 ## **まとめ** | 原因 | 確認・対策 | |---|---| | **FB抵抗の実装ミス・値ミス** | 抵抗値・半田をテスターで確認 | | **出力側からの電流流入** | リーク電流の小さいSBDへの変更、VOUT-GND間への負荷抵抗追加 | | **外部ノイズ・レイアウト問題** | パスコン配置の見直し・フィードバックラインの引き回し改善 |
出力電圧固定品(Vout品)・出力電圧外部調整品(FB品)とは何ですか

出力電圧固定品(Vout品)・出力電圧外部調整品(FB品)とは、DC/DCや電圧レギュレータの出力電圧の設定方法を示します。
出力電圧固定品(Vout品)はIC内部で出力電圧が固定されている製品、出力電圧外部調整品(FB品)は外付け抵抗等で出力電圧を調整できる製品です。

(a) 出力電圧固定品(Vout品)

出力電圧固定品は、出力電圧を調整するための高精度な分圧抵抗(フィードバック抵抗)をICに内蔵しています。出力電圧を調整するための外付け抵抗が不要なため、小型化・部品点数の削減が可能となります。
またIC内部にフィードバック抵抗を内蔵しているため外部ノイズに強く、出力電圧外部調整品と比べてフィードバック抵抗値を高くできます。
これによりフィードバック抵抗での消費される消費電流を抑制でき、低消費用途に最適です。

(b) 出力電圧外部調整品(FB品)

出力電圧外部調整品は、出力電圧を調整するための分圧抵抗(フィードバック抵抗)がIC外部に必要なタイプです。外付け抵抗を変更するだけで 出力電圧を変更できるので、同一ICを使って複数の電源ラインを構築できるという、部品管理・在庫管理のメリットがあります。

デメリットとしては、外付けで分圧抵抗(フィードバック抵抗)や位相補償用のコンデンサが必要となり、出力電圧固定品と比べ部品点数が多くなります。
また分圧抵抗(フィードバック抵抗)がIC外部にあることから外部ノイズの影響を受けやすく、フィードバック抵抗値が大きすぎるとICが誤動作する原因となるため注意が必要です。

強制PWM制御とは何ですか、パルススキップ(間欠発振)とは何ですか

コイル電流を逆流させないPWM制御(PWM Control)とは別に、コイル電流の逆流を許可するPWM制御のことを強制PWM制御(Forced PWM Control)と呼びます。

Condition : Vin=5V, Vout=3.3V/0mA

PWM制御と異なり強制PWM制御は軽負荷条件でもパルススキップが発生せず、ノイズ対策が容易です。
PWM制御と強制PWM制御の特長は以下の通りです。

PWM制御

軽負荷状態では不連続モードとなり、出力電流が大きくなるにつれDutyが大きくなります。
軽負荷状態では出力電圧を維持するために必要なON Dutyが非常に小さくなり、ICが制御できる最小Dutyを下回る場合があります。
このような条件では、発振周波数を維持することができずに発振周波数が低下するパルススキップ(間欠発振)が発生します。
また不連続モードでは、スイッチングノードのリンギングが発生します。スイッチングノードのリンギングは出力電圧のノイズ混入や放射ノイズの原因となります。

強制PWM制御

強制PWM制御では、コイル電流を逆流させるため軽負荷状態でも連続モードとなり、軽負荷から重負荷まで一定のDutyとなります。
 通常のPWM制御と異なり、軽負荷時でもDutyが小さくならないので、軽負荷時にパルススキップ(間欠発振)が発生しません。
また不連続モードにならないため、スイッチングノードのリンギングが発生せずリンギング起因のノイズが発生しません。
デメリットとしては、軽負荷時の効率が通常のPWM制御より低くなります。
また強制PWM制御では、コイル電流を逆流させる必要があることから 外付けダイオードが必要な非同期整流タイプのDC/DCでは強制PWM制御を行うことができません。

昇圧DC/DCや反転DC/DCで出力電流が引けなくなりました。原因と確認方法を教えてください
昇圧DC/DCコンバータや反転DC/DCコンバータは、データシートに記載された最大出力電流(IOUT max)を実際の回路で常に引けるとは限りません。試作時には動作していたのに量産品で電流が引けない、低温や電池末期になると動作しなくなる、といったトラブルは、複数の制限要素が重なって発生することが多いです。この記事では、昇圧DC/DCや反転DC/DCの最大出力電流を制限する要因と、量産設計で注意すべき点を解説します。 ## 最大出力電流を制限する要素 昇圧DC/DCや反転DC/DCの最大出力電流は、IC単体の特性だけでなく、周辺部品や入力経路の抵抗成分・温度条件など複数の要因によって制限されます。 * **ピーク電流制限** ICに内蔵されたピーク電流制限回路の動作電流値です。コイル電流がILIMに達するとスイッチングがOFFになり、これ以上の出力電流が取り出せなくなります。 * **最大Duty比(Duty max)** 昇圧比(VOUT/VIN)が高いほどDutyが大きくなります。Duty maxに達すると、それ以上エネルギーをコイルに蓄えられなくなり出力電流が制限されます。VINが低下するほど制限が効きやすくなります。 * **コイルのDCRと電流飽和特性(Isat)** コイルの直流抵抗(DCR)による電圧降下は効率低下と出力電流の低下を招きます。またコイルの電流飽和特性(Isat)を超えるとインダクタンスが急激に低下し、電流制限が正常に機能しなくなります。 * **ICのドライバオン抵抗** スイッチングFETのオン抵抗による損失が効率を低下させ、結果として最大出力電流が低下します。 * **入力経路の抵抗成分** 入力ラインに入っているヒューズ・ポリヒューズ・ロードスイッチ・FETなどの抵抗成分による電圧降下が実効的なVINを低下させます。電池駆動の場合は電池の内部抵抗も加わります。これらは見落とされやすいですが、大電流時には無視できない電圧降下になります。 * **最大ジャンクション温度(Tj max)** ICの接合部温度がTj maxに近づくと、サーマルシャットダウンや保護動作が動作します。高温環境や連続大電流動作時は熱設計の確認が必要です。 ## なぜ量産で問題が顕在化するのか 試作では動作していても量産で問題が出るケースの多くは、**TYP(標準)条件だけで設計・確認していたことが原因**です。 ICや受動部品には製造ばらつきがあり、量産品では以下のようなワースト条件が重なることがあります: * ILIMがMin側にばらつく * コイルのDCRがMax側にばらつく * 電池の内部抵抗が高い個体・低温・放電末期の組み合わせ * ヒューズやロードスイッチの抵抗がMax側にばらつく * 高温環境でオン抵抗が増大する これらのワースト条件を全て考慮して設計しないと、量産品の一部で電流が引けず動作しない機器が発生するリスクがあります。**TYP値だけで確認・提示されている場合は必ずワースト条件での確認を行ってください。** ICや周辺部品のばらつき仕様については、データシートに記載されている場合があります。記載がない場合はメーカに確認してください。
## 算出方法 上記の制限要素はすべて相互に影響し合うため、手計算でワースト条件を正確に算出するのは困難です。シミュレーションツールを用いて算出することを推奨します。 TORexでは昇圧DC/DCの動作シミュレーションが行えるWEB Simを提供しています。入力電圧・出力電圧・コイル定数などの条件を入力することで、最大出力電流の概算値を確認できます。 [TOREX WEB Sim(DC/DCシミュレーション)](https://product.torexsemi.com/ja/design-support/dcdc-simulation)
## まとめ - 昇圧DC/DCや反転DC/DCの最大出力電流はILIM・Duty max・コイルDCR/Isat・ICオン抵抗・入力経路の抵抗・Tj制約など複数の要因で制限される - 電池内部抵抗・ヒューズ・ロードスイッチなど入力経路の抵抗成分も見落とさないこと - TYP条件だけでなく、ICや部品のばらつきを考慮したワースト条件で必ず確認する - ワースト条件の算出はシミュレーションツールの活用が現実的
理想ダイオードとは何ですか、ディスクリートとの違いは何ですか

順方向電圧がゼロで一方向のみに電流を流す特性を持つダイオードのことを理想的なダイオードといいます。

この理想的なダイオード特性を、IC(集積回路)により再現したものを理想ダイオードICと呼びます。理想的なダイオードでは順方向時の電圧降下やリーク電流が無いことから、ディスクリートのダイオードで発生していた順方向時の電圧降下や損失、リーク電流が存在しません。

実際の理想ダイオードICではIC内部FETのオン抵抗やリーク電流が存在することにより、完全に順方向電圧やリーク電流をゼロにすることはできませんが、ダイオードと比較して順方向時の電圧降下や電力損失を大幅に削減することができます。

理想ダイオードICのメリット/デメリット

理想ダイオードICには、ディスクリートのダイオードと比べ様々なメリットがあります。

メリット

  • VFが非常に小さい & 低リーク電流により低損失
    (XC8110/XC8111 : VF=20mV, ディスクリート SBD : VF=0.3~0.4V)
  • VFが小さいことで出力電圧変動が小さく、システムの安定動作に貢献
  • 各種保護機能内蔵
  • 小型PKG

デメリット

  • 最大出力電流や出力電圧の制限有り
  • ディスクリートのダイオードと比べて、製品数少ない/互換性が少ない
シリーズ名 製品カテゴリ 特徴 データシート ステータス パッケージ
XC8110 負荷スイッチ 理想ダイオード機能搭載 VF=20mV
IEC 62368-1認証
アクティブ
XC8111 負荷スイッチ 理想ダイオード機能搭載 VF=20mV
IEC 62368-1認証
アクティブ
試作時に表面実装部品の実装が上手くいきません。簡単に実装する方法を教えて下さい。
QFNやDFNなどのリードレスパッケージは手半田での実装が難しく、慣れるまで作業工数や低歩留まりに悩まされることになります。またBGA(Ball Grid Array)やWLP(Wafer Level Package)など、底面に電極が並ぶパッケージはさらに困難です。 試作時にこれらの部品を実装する方法として、**クリーム半田+リフロー**を使った方法が有効です。 ## **1. 必要なもの** * **クリーム半田**:ペースト状の半田。試作用途であれば少量で入手可能です。 * **メタルマスク or つまようじ等**:クリーム半田を塗布するための道具 * **簡易リフロー装置 or ホットプレート**:半田を溶かすための加熱装置 ## **2. クリーム半田の塗布方法** ### **方法A:メタルマスクを使う(推奨)** 基板と同時にメタルマスクを発注する方法です。 中国の基板製造業者等では、試作用のフレームレス メタルマスクを安価に発注できます。 メタルマスクを基板に位置合わせして固定し、クリーム半田をヘラで塗布します。 ヘラはメタルマスク用の専用のものでなくてもホームセンターで売っているプラスチックタイプのものや、不要なカード(クレジットカードのようなもの)でも代用できます。 手塗りと比べて、均一な厚さでクリーム半田を塗布でき、作業工数が削減できます。 半田量が不適切だった場合は、つまようじや針等で半田量の調整を行うと、歩留りが改善します。
### **方法B:手塗り** メタルマスクがない場合は、つまようじや針等を使ってパッドにクリーム半田を手塗りします。 メタルマスクほど均一にはなりませんが、試作の少量実装であれば十分実用的です。 塗りすぎるとブリッジの原因になるため、半田量を調整して塗布してください。 ## **3. 部品の搭載** クリーム半田を塗布したら、ピンセットで部品を搭載します。クリーム半田の粘性で部品が仮固定されます。 細ピッチICは方向・ピン1の向きに注意してください。 ## **4. リフロー(加熱)** ### **簡易リフロー装置** 試作向けの小型リフロー装置が市販されています。温度プロファイルを設定できるものが多く、安定した結果が得られます。
### **ホットプレート** ホットプレートでも代用できます。基板をホットプレートに乗せて加熱し、クリーム半田が溶けて部品が自己整合(セルフアライメント)で正しい位置に収まるのを確認します。 温度の目安はクリーム半田の仕様に依存しますが、鉛フリー半田の場合は概ね220〜250℃程度です。加熱しすぎるとパッドやレジストが傷むため注意してください。 ## **5. 実装後の確認** リフロー後は目視または顕微鏡でブリッジや半田不足がないか確認してください。確認方法については「ICの半田付けが正常にできているか確認する方法」の記事も参考にしてください。 ## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **クリーム半田の塗布** | メタルマスク(推奨)またはつまようじ等で手塗り | | **加熱方法** | 簡易リフロー装置またはホットプレート | | **実装後の確認** | 目視・顕微鏡でブリッジ・半田不足をチェック |
負荷切断/バイパス/VOUT OR/非同期の違い

一般的な電圧レギュレータや降圧DC/DCでは、ICがスタンバイ時(動作停止時)の出力電圧は0Vまで低下します。

昇圧DC/DCコンバータでは、スタンバイ時(動作停止時)の出力電圧はICにより異なります。大きく分けて4つの昇圧DC/DCおよびタイプ・機能に分類されます。

1. 非同期整流方式

ダイオードを使う一般的な昇圧DC/DCです。
ダイオードを使うため、スタンバイ時に入力側と出力側を遮断できず、ダイオードを介して導通します。

またドライバ搭載の昇圧DC/DCでも、High Side側のドライバの寄生ダイオード制御を行っていない場合は、非同期整流方式の昇圧DC/DCと同様の動作になります。

2. 負荷切断機能 (Low Side/High SideドライバFET内蔵品)

スタンバイ時に出力電圧が0Vとなるように、High Side側のドライバFETを制御します。
(ドライバFET : OFF, 寄生ダイオード : アノードVout、カソードLx)

負荷切断機能により、スタンバイ時に入力側と出力側を遮断します。これにより出力電圧が0Vまで低下し、システムの誤動作防止や消費電力低減が可能です。

3. バイパス機能 (Low Side/High SideドライバFET内蔵品)

スタンバイ時に出力が入力と導通するように、High Side側のドライバFETを ONします。

バイパス機能により、スタンバイ時に入力電圧を出力側にスルーすることが可能です。
この機能を活用することで、MCUのスリープ状態等では スタンバイ状態にすることでシステム側にバッテリー電圧を供給。高い供給電圧が必要なRF/高速動作時には 昇圧動作を行うことで、システム側に3.3V等の電圧を供給することが可能です。
この電圧切替により、システム全体の消費電力低減が可能です。

4. Vout “OR” タイプ (Low Side/High SideドライバFET内蔵品)

出力側に外部電源印加を行う、OR接続可能な Vout“OR” タイプです。
Vout “OR” タイプでは昇圧動作とスタンバイ時の両方で、入力電圧と出力電圧の監視を行います。

入力電圧と出力電圧のどちらが高いか判断し、High SideドライバFETの寄生ダイオードの極性を制御し、寄生ダイオードを介しての逆流を防止しています。

負荷安定度・ロードレギュレーションとはどういう特性ですか

負荷安定度・ロードレギュレーションは、出力電流を増やす前と増やした後で、どれくらい出力電圧が変動するかを表す特性です。

電気的特性上では出力電流を何mAから何mAまで変化させた場合、出力電圧は何mV変動する、と表されます。出力電流が大きくなると、出力電圧が低下することを前提で電気的特性を規定している製品が一般的です。

下記の例では1mAから50mAに変化させたときに50mV低下する、と読み取ることができます。

電圧レギュレータ(XC6216 VOUT=5.0V)

PARAMETERSYMBOLCONDITIONSMIN.TYP. MAX.UNITSCIRCUIT
Load Regulation△VOUT1mA≦IOUT≦50mA, VCE=VIN-5090mV

電圧レギュレータ(XC6216 VOUT=5.0V) : 出力電圧 vs 出力電流 特性

負荷過渡特性、入力過渡特性とはどういう特性ですか

負荷過渡応答特性、入力過渡応答特性とは、出力電流や入力電圧が急峻に変化した際のDC/DCや電圧レギュレータの出力電圧の変動度合い・応答性を示す特性です。

負荷過渡応答特性

出力電流が急峻に変化した時に 出力電圧がどの程度変動し、どの程度の時間で収束するかを示します。
出力電圧の変動幅は、ICの制御方式や出力電流の条件や出力容量等に影響されます。

電圧レギュレータでは、高速タイプの電圧レギュレータのほうが負荷過渡応答特性は良いですが、消費電流が大きくなってしまいます。

DC/DCの場合、制御方式により負荷過渡応答特性が大きく変わるため、高速過渡応答が可能な制御方式を採用している製品を選定する必要があります。

また負荷過渡変動による、出力電圧の応答波形から製品の安定性を判断することも可能です。

入力過渡応答特性

入力電圧が急峻に変化した時に出力電圧がどの程度変動し、どの程度の時間で収束するかを示します。

入力過渡応答特性についても、負荷過渡応答特性と同様に ICの制御方式や入力電圧条件や出力容量に影響を受けます。

一般的には、負荷過渡応答特性が良い製品は 入力過渡応答特性も良い傾向にあります。

逆流防止機能とは?完全逆流防止機能とは?

ロードスイッチICの逆流防止機能とは、出力側の電圧が入力電圧より高くなった場合に入力側に電流が逆流することを防ぐ機能です。ロードスイッチICだけではなく、電圧レギュレータや充電IC等に搭載されていることもあります。

逆流防止機能が必要な事例

  1. Vout “OR” 接続で、出力側に入力電圧より高い電圧が印加された場合に入力側への逆流を防ぐ。
  2. 出力側に接続されたコンデンサや蓄電デバイスから、入力側への逆流を防ぐ。
  3. 出力側に外部電圧印加および蓄電デバイスが接続されている場合に、入力と出力側を遮断することで入力側に出力電圧を通電させない。
一般的な電圧レギュレータ
逆流防止機能搭載電圧レギュレータ

逆流防止機能の注意点 : 逆流防止機能なのに逆流する場合も

いかなる条件でも、出力側から入力側への逆流を防ぐと思われる逆流防止機能ですが、制御方式や使用方法によっては出力側から入力側へ電流が逆流してしまうことがあります。

そのため、逆流防止機能の制御方式や特徴を踏まえた上で、適切な逆流防止機能を持つ製品を選定する必要があります。
逆流防止機能の種類や使い分けについては、下記で説明します。

逆流防止機能の種類 : 逆流防止機能と完全逆流防止機能

 逆流防止機能は、大きく分けて2種類に分類されます。

(1) 逆流防止機能
一般的なロードスイッチIC等に採用されている逆流防止機能です。
ロードスイッチICのスイッチ部がOFF状態の場合のみ、確実に逆流防止機能が動作します。

このタイプの逆流防止機能では、逆流しているかどうかを入力電圧が出力電圧より一定以上低くなったことで判定します。
入力容量が小さい場合や入力側から電流シンクが無い場合は、入力側への逆流電流により入力電圧が出力電圧まで上昇してしまいます。これにより逆流防止機能が動作する入出力電位差が確保できず、逆流防止機能が動作しないという現象が発生します。

この判定方法のメリットは、ロードスイッチがON状態の場合は、スイッチ部のFETが常時フルON可能でオン抵抗を低くすることが可能です。
ロードスイッチがOFF状態では、逆流電流が流れる前に 入力電圧が出力電圧より一定以上低くなるため、逆流防止が可能です。

VIN<VOUT時の挙動 @ロードスイッチ ON
VIN<VOUT時の挙動 @ロードスイッチ OFF

(2) 完全逆流防止機能
ロードスイッチICのスイッチ部がON状態でもOFF状態のどちらでも、逆流防止機能が動作するものです。

このタイプの逆流防止機能では、逆流しているかの判定を 出力電圧が入力電圧より少し低い電圧になると逆流防止機能を動作させます。

この判定方法では、ロードスイッチICのスイッチ部がON状態でも逆流を防止することができます。
ただし、ロードスイッチがON状態の場合は逆流防止機能を誤動作させないために、入力電圧と出力電圧の電位差を一定以上保つ必要があります。そのため、一般的な逆流防止機能と比べて電圧降下および導通損失が大きくなる傾向にあります。

VIN<VOUT時の挙動 @ロードスイッチ ON
連続モード(CCM)、不連続モード(DCM)とは何ですか

連続モード(CCM:Continuous Current Mode)、不連続モード(DCM:Discontinuous Current Mode)とは、DC/DCやAC/DC等のスイッチング電源の動作モードの名称です。
コイル電流の流れ方により、連続モードと不連続モードがわかれます。この動作モードの違いにより出力電圧の安定性(伝達関数モデル)が異なるため、スイッチング電源の制御や安定性を理解するには重要です。

連続モード・不連続モードの定義は下記の通りです。

連続モードコイル電流が常時流れている。
(High Side/Low Side ドライバFETのOFF/OFF期間が存在しない)
不連続モードコイル電流が流れていない期間が存在する。
(High Side/Low Side ドライバFETのOFF/OFF期間が存在する)

降圧DC/DC連続モード

降圧DC/DC不連続モード

一般的には、軽負荷条件では不連続モードとなり、出力電流が大きくなると連続モードに移行します。連続モードから不連続モードに移行する出力電流ですが、電源仕様・インダクタンス・ICの制御方式等に依存するため、製品により異なります。
またPWM制御の中でも強制PWM制御を採用している製品は、軽負荷時でも不連続モードにならずに連続モードで動作します。

Condition : Vin=5V, Vout=3.3V/0mA

電圧レギュレータの電流制限方式について教えてください

電圧レギュレータの電流制限特性(VOUT vs IOUT)の方式についてはこちらをご覧ください。

電圧レギュレータの電流制限方式について

電圧検出器とは何ですか?どのような使い方をするのですか

電圧検出器とは電源ラインの電圧を監視し、設定電圧を下回った場合や上回った場合に検知信号を出力するICです。電圧検出器のことをVD(ボルテージ・ディテクタの略)やリセットIC、スーパーバイザー等とも言います。

基本的な電圧検出器の入力(監視電圧)、出力の関係は以下のようになります。

監視電圧出力
解除電圧以上
(検出電圧+ヒステリシス)
“H”
検出電圧以下“L”
※検出時 “L” 出力品 (アクティブ”L”)

電圧検出器の用途

1.電池/電源電圧の監視

基本的電圧検出器により電源ラインの監視を行います。電源ラインが異常電圧になった場合に、後段のデバイスに信号を出力します。異常状態を後段デバイスに伝えることで、異常状態の判断やシステムの動作停止をします。

また電池の電圧監視に使われます。電圧検出器により電池電圧が低下したことを検出することで、システムの動作停止や電池電圧の低下状態の表示等に使われます。

2.MCUのリセット/パワーオンリセット(POR:Power On Reset)

MCUは動作電圧範囲が設定されています。
電圧検出器でMCUの電源ラインの監視を行い、電源ラインの電圧が動作電圧以下になった場合にMCUを停止させるためにリセット信号を出力します。また電源ラインが確実に立ち上がってからMCUを動作させるためにも、電圧検出器は活用されます。

3.電源シーケンス制御

一部のMCUやモジュールなどは、メイン電源とコア電源などの複数の電源を必要とします。デバイスによっては各電源の立上り/立下りシーケンスが規定されています。
電圧検出器を用いて電源ラインの監視を行い、ある電源ラインの立上り・立下り後に次の電源の立上げ・立ち下げが可能です。
これにより電源シーケンスを容易に作成可能です。

電圧検出器のセンス端子分離品とはどういうものですか

センス(VSEN)端子分離機能

一般的な電圧検出器では、電圧監視端子(センス端子)とICの電源端子が共通です。この電圧監視端子(センス端子)と電源端子を分離した製品をセンス(VSEN)端子分離機能やセンス(VSEN)端子分離品と呼びます。電源端子と電圧監視端子(センス端子)を分離することで、一般の電圧検出器に無いメリットが存在します。

センス端子分離機能の活用方法

1. 抵抗分圧で高電圧ラインの電圧監視が可能

12Vラインや24Vラインを直接監視できる電圧検出器は多くありません。
このような高電圧を監視する場合、高電圧を抵抗分圧した電圧を監視することで、間接的に高電圧監視する方法が使われます。この抵抗分圧を行ってから監視する方法では、監視端子と電源端子が共通の一般的な電圧検出器では、ICが動作するために使う消費電流により、電源端子電圧の変動が起きるため誤動作の可能性があります。
センス端子分離品では、監視端子と電源端子が分離しているため、監視端子に抵抗分圧した電圧を入力しても、ICが誤動作することなく安全に高電圧を監視することができます。
センス端子分離品を使った、高電圧ラインの監視例を下記に示します。この例では、高電圧の監視電圧を抵抗R1, R2で分圧して、電圧検出器の電圧監視端子(VSEN端子)に入力しています。これにより電圧検出器には高電圧が印加されず、汎用的な低耐圧の電圧検出器を使用することが可能です。

検出電圧 = “電圧検出器の検出電圧” x (R1 + R2) / R2

2.センス電圧が0Vでも 検出信号を維持

監視端子と電源端子が共通の一般的な電圧検出器では、監視したいラインの電圧がICの動作電圧以下になると、ICの内部回路は正常に動作することができないため、監視電圧が低い場合に正確な検出信号を出力することができません。
センス端子分離品の場合、電源供給端子に動作電圧が供給されていれば、センス端子の電圧が0Vまで下がっても、正確な検出信号を出力することが可能です。

電圧検出器のマニュアルリセット機能とは何ですか

マニュアルリセット機能

電圧検出器のマニュアルリセット機能は監視電圧が検出状態でない状態でも、強制的にリセット信号(検出信号)を出力する機能です。
電圧検出器にマニュアルリセット端子が付いており、外部信号を入力することで強制的に検出信号を出力します。

電子機器に見られる、”強制リセットボタン” は、この機能を使ったものです。
またエンドユーザが機器の強制リセットを行う以外にも、製品開発時の試作評価時やデバッグ等に使うこともあります。

回路例

使用例
電圧検出器の出力電流とはどのような特性・意味ですか

出力電流/オン抵抗

電圧検出器の出力電流は、その電圧検出器の出力ドライバFETのオン抵抗を示しています。
一般的な電圧検出器では、電気的特性の項目にオン抵抗の項目はありません。オン抵抗の代わりに、出力電流の最小値を規定する事でオン抵抗の最大値を示しています。

オン抵抗はゲート電圧依存があるため、入力電圧により出力電流/オン抵抗が変わります。
実使用条件での出力電流/オン抵抗のワースト値を算出し、接続する後段デバイスを問題なく駆動できるか確認する必要があります。

オン抵抗 計算例

VIN=1.1V, Nch : Ron max = IOUTN Min. / VRESETB = 0.3V / 0.3mA = 1kΩ
VIN=3.0V, Nch : Ron max = IOUTN Min. / VRESETB = 0.3V / 8.1mA = 37Ω

出力電流 SPEC

PARAMETER SYMBOL CONDITIONS MIN. TYP. MAX. UNITS
RESETB
Output Current
IRBOUTN VIN=1.1V, VRESETB=0.3V 0.3 1.4 - mA
VIN=3.0V, VRESETB=0.3V 8.1 10.8 -
VIN=6.0V, VRESETB=0.3V 15.7 19.3 -
IRBOUTP VIN=1.0V, VRESETB=VIN-0.3V - -0.7 -0.2
VIN=3.0V, VRESETB=VIN-0.3V - -3.2 -1.4
VIN=6.0V, VRESETB=VIN-0.3V - -5.1 -2.9
電圧検出器の検出遅延とは何ですか

検出遅延機能

電圧検出器の検出遅延機能とは監視電圧が検出電圧に達するとすぐに検出信号を出力せずに、一定時間経過してから出力する機能です。
この遅延時間のことを検出遅延時間と呼びます。検出遅延機能が搭載されている電圧検出器は少なく、搭載されている場合は外付けのコンデンサで遅延時間を外調する製品が多いです。

電源立ち上げ時やモータ動作時の突入電流により、監視ラインの電圧が瞬間的に低下する場合があります。この瞬間的な電源電圧の低下により、電圧検出器が意図せず検出信号を出力してしまうような場合に、検出遅延機能を使って誤った検出信号の出力を防止します。

電圧検出器や検出電圧や、UVLO等のヒステリシス幅が小さいと問題はありますか?

ここでは、電圧検出器の検出電圧/解除電圧のヒステリシス幅が小さい場合を例に、どのような現象が発生するのか説明します。

ヒステリシス幅が小さいと

コイン電池のような内部インピーダンスが大きい電池にMCUが接続され、電池電圧を電圧検出器で監視している回路を想定します。
このような場合、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される現象が発生する場合があります。
実際にそのような状態が発生する仕組みを、1~6の時系列に分けて説明します。

1. 電池電流が増加することで、電池電流と電池の内部インピーダンスにより電池電圧が低下する。
2. 電池電圧が低下することで、電圧検出器が検出状態になる。
検出状態になると、MCUにリセット信号を送りMCUを動作停止させる。
3. MCUが動作停止したことで、負荷電流が減少する
4. 負荷電流が減少したことで、電池電流と電池の内部インピーダンスによる電圧降下が無くなり電池電圧が高くなる。
5. 電池電圧が高くなると、電圧検出器が解除状態となりMCUを動作させる
6. MCUの負荷電流(電池電流)が増加する。
* 1~6の動作を繰り返し、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される。

電圧検出器の検出⇔解除を防ぐには
電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される現象ですが、負荷電流により電池電圧の変動が発生したことが原因です。電池電圧の変動幅が電圧検出器のヒステリシス幅より大きいと、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返されます。
今回は電池の内部インピーダンスによる電圧変動を例に挙げましたが、ヒューズやフィルタ回路の抵抗成分でも、電圧検出器が監視するラインの電圧変動が発生し、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される原因となります。

一般的な対策としては、
・電池電圧(監視ライン)の電圧変動幅より大きいヒステリシス幅を設定する。
・内部インピーダンスが小さい電池に変更する / DCRが小さいヒューズ・フィルタに変更する
が挙げられます。

電圧検出器以外でも
電圧検出器を例に、事例紹介を行いましたが、電圧検出器以外のデバイスでも同様の現象は発生します。
ヒステリシス幅が小さく、検出・解除状態が継続した状態になる事例としては、
(a) UVLO機能搭載の電圧レギュレータやDC/DCコンバータで、UVLO検出電圧と解除電圧のヒステリシス幅が小さい場合
(b) CE/EN機能搭載の電圧レギュレータやDC/DCコンバータで、CE/EN “L”電圧と“H”電圧のヒステリシスが小さい場合

が挙げられます。

 上記以外にも、ICや回路の過電流保護・過熱保護・低電圧保護等が動作することにより、異常状態と起動・定常状態が繰り返される事例が発生します。
単体のICや部品を見るだけでなく、回路全体におけるICや部品の動作を把握し、回路設計することが重要です。

電源端子と制御端子の電圧印加シーケンスの注意点
起動シーケンスの設計上の都合により、CE・EN・MODE・VSEL・VSEN・PG等の制御端子へ、VIN端子より先に電圧が印加されるケースがあります。 本記事では、この場合の影響と判断方法について解説します。 ## 1. VIN端子より先に制御端子へ電圧が印加される場面 複数電源を扱うシステムでは、起動シーケンスによってVIN端子への供給前に制御端子へ電圧が印加されることがあります。具体的には以下のような場面です。 * MCUやFPGAの電源が先に立ち上がり、制御端子へ電圧が印加される * VSEN端子やMODE端子が、先に立ち上がる他の電源ラインから抵抗分割等で接続されている * PG端子が、先に立ち上がる他の電源ラインへプルアップされている
## 2. 影響の判断方法 ICによってはVIN端子より先に電圧を印加しても問題ありませんが、製品によってはこれが禁止されていたり、定格保証外となったりする場合があります。この違いは、主に**制御端子のESD保護素子の有無**に起因します。 * **ESD保護素子がない場合** 内部素子のゲートへ電圧が印加されるのみで、電流経路が形成されません。このため、**VIN端子より先に電圧を印加しても問題ない**場合が多いです。 この場合、データシートの絶対最大定格には「-0.3V〜7.0V」のように絶対値で記載されており、VIN端子の状態に関わらず定格内であれば印加可能です。 * **ESD保護素子がある場合** 制御端子とVIN端子の間にESD保護素子(寄生ダイオード)が存在します。VIN端子が0V(GND)の状態で制御端子に電圧を加えると、この寄生ダイオードを通じてVINラインへ電流が流れ込みます。これにより「VIN+0.3V」の絶対最大定格を即座に超えてしまい、**ICの定格保証外となります**。
## 3. 確認方法 データシートの「絶対最大定格」項目を確認してください。 * **VIN基準の記載(例:-0.3V〜VIN+0.3V)** 制御端子とVIN端子の間にESD保護素子が存在します。**VIN端子より先に電圧を印加することはNGです。** * **独立した絶対値の記載(例:-0.3V〜7.0V)** 制御端子-VIN端子間に上記の寄生ダイオードが存在しない設計です。 VIN端子電圧の状態に関わらず、印加電圧が定格範囲内であれば、先に電圧を印加しても問題ないケースが多いです。 ## 4. 注意とメーカーへの確認 データシート上の記載から上記のように判断が可能ですが、以下の点には注意が必要です。 * **IC内部のテストモード** ESD保護素子が無くても、IC内部の回路構成やテストモードの仕様により、特定シーケンスでの電圧印加が誤動作を誘発する可能性があります。 * **製品ごとの設計思想** データシートの記載はあくまで「定格」であり、保証する「動作」とは異なる場合があります。 量産設計などでシーケンス条件が厳しい場合は、必ずメーカーへ「VIN端子より先に電圧を印加しても良いか」を個別にお問い合わせください。 ## まとめ 1. VIN端子より先に制御端子(CE/EN/MODE/VSEL/VSEN/PG等)へ電圧が印加されるケースがある 2. ESD保護素子がある場合、寄生ダイオードを経由してVINラインへ電流が流れ込むためNG 3. ESD保護素子がない場合、内部素子のゲートへの電圧印加のみとなるためOKの場合が多い 4. データシートの絶対最大定格の記載(VIN基準か、絶対値か)で判断可能だが、不明な場合はメーカーへ問い合わせること

周辺部品選定/PCB設計/熱設計/シミュレーション

0Ω抵抗(ジャンパー抵抗)の落とし穴と注意点
0Ω抵抗(ジャンパー抵抗)は、回路のブロック間接続、デバッグ時の電流測定ポイント、仕様切り替え(実装/未実装による回路分岐)などの用途で広く使われる便利な部品です。 しかし、「0Ω」という名称から抵抗がゼロと思われがちですが、実際には数十mΩ〜100mΩ程度の実抵抗が存在します。電源ラインに安易に挿入すると、電源ICの動作を不安定にする原因になります。 ## 電源ラインにおける2大リスク ### 1. 「0Ωだから大丈夫」ではない:定格電流の超過 0Ω抵抗にも通常の抵抗器と同様に**定格電流(許容電流)**が規定されています。一般的な厚膜チップ抵抗タイプの定格電流・実抵抗の目安は以下の通りです。 | サイズ | 定格電流の目安 | 実抵抗の目安 | |---|---|---| | 1005mm | 0.5〜1A程度 | 50〜100mΩ程度 | | 1608mm | 1〜2A程度 | 30〜100mΩ程度 | | 2012mm | 2A程度 | 20〜50mΩ程度 | | 3216mm | 2〜3A程度 | 10〜50mΩ程度 | ※上記は目安値です。実際の値はメーカやシリーズによって異なるため、必ずデータシートを確認してください。 DC/DCコンバータの出力ラインなど、数Aクラスの大電流が流れる場所に小型の0Ω抵抗を配置すると、定格をオーバーして内部の導電層が焼き切れ、発熱・断線(オープン破壊)に至るリスクがあります。 ### 2. 数十mΩの実抵抗による電圧降下と電源への悪影響 0Ω抵抗が持つ数十mΩの実抵抗は、大電流時や高精度な電源ラインにおいて無視できない電圧降下を引き起こします。 **計算例)** 実抵抗50mΩのジャンパーに電流2Aが流れた場合 $$\Delta V = 2\text{A} \times 50\text{m}\Omega = 100\text{mV}$$ $$P = 2\text{A}^2 \times 50\text{m}\Omega = 200\text{mW}$$ このわずか100mVの電圧降下や200mWの発熱が、以下のようなトラブルを誘発します。 * **LDOの出力電圧低下とシステム不安定化** 高精度な1.2Vや1.8Vのデジタルコア電源ラインに0Ω抵抗を挟むと、実効電圧がドロップし、後段のMCUやFPGAが異常リセットを起こす原因になります。 * **電源ICの誤動作・発振** 出力端子と出力コンデンサの間に0Ω抵抗(数十mΩの実抵抗+数nHの寄生インダクタンス)が入ると、高周波成分に対するインピーダンスが跳ね上がり、出力コンデンサが機能しなくなる場合があります。0Ω抵抗の寄生成分により、ICが正常な制御をすることができず、出力発振や誤動作するリスクがあります。入力端子と入力コンデンサ間への挿入も同様の理由でICの誤動作やEMI増加のリスクがあります。 * **フィードバック(FB)経路への影響** 電源ICの電圧設定ピン(FBピン)の直前に0Ω抵抗を挟んでしまうと、実抵抗による電圧降下のせいでICが「出力電圧が足りない」と誤認し、出力電圧が想定より高く制御されてしまうなどの異常動作に繋がります。 ## 大電流ラインへの使用が避けられない場合 どうしても仕様切り替えなどの用途で大電流ラインやGNDラインにジャンパーを打たなければならない場合は、一般的な厚膜チップ抵抗ではなく**金属板タイプ(ジャンパー専用の超低インピーダンス・低インダクタンス素子)**を選定してください。実抵抗を数mΩ以下に抑えられるため、電圧降下のリスクを最小限に抑えることができます。 ## まとめ - 0Ω抵抗は「0Ω」ではなく数十mΩ〜100mΩ程度の実抵抗がある - 電源ラインに使用する場合は定格電流を超過しないサイズ選定が必須 - わずかな実抵抗による電圧降下が出力低下やICの誤動作を招く場合がある - 出力コンデンサ・入力コンデンサと電源IC間への挿入は発振・誤動作のリスクがある - 大電流ラインには金属板タイプのジャンパー素子の使用を検討する
3D CAD用の3Dモデル・STEPファイルは、どこでダウンロードできますか

トレックスでは、部品ライブラリ提供会社であるSamacSys社と提携しており、様々なEDAツールに対応したライブラリを提供することが可能です。
ライブラリのダウンロードは、各製品ページから 3D CAD用の3Dモデル・stepファイルをダウンロードすることができます。

ライブラリが準備されている場合は、SamacSysのアカウント登録をするだけで即座にライブラリをダウンロード可能です。

ライブラリが準備されていない場合は、モデルライブラリの作成依頼が可能です。
通常、作成依頼から24h~48h程度でライブラリの提供を行います。

“製品ページ” → “PCB Symbol, Footprint & 3D Model”

ライブラリ有

ライブラリ無(ライブラリ作成依頼画面)

EMI・EMS・EMCとは何ですか?用語と規格の基礎を解説
電子機器の設計や規格認証の場面で「**EMI**」「**EMS**」「**EMC**」という言葉をよく目にします。混同されやすい用語ですが、それぞれ異なる概念です。 ## **1. EMCとは(電磁両立性)** EMC(Electromagnetic Compatibility)とは、**機器が電磁ノイズを出さず、かつ外部からの電磁ノイズにも影響されずに正常動作できる能力**のことです。 EMCはEMIとEMSという2つの観点を合わせた概念です。 ## **2. EMIとは(電磁妨害)** EMI(Electromagnetic Interference)とは、電子機器から発生する**電磁ノイズが他の機器に干渉し、誤動作や性能低下を引き起こす現象**です。「ノイズを出す側」の問題です。 EMIを引き起こすノイズの放出(エミッション)には、経路によって大きく2種類あります。 * **放射エミッション(Radiated Emission)**:空間を伝わる電磁波として放射されるノイズ。 * **伝導エミッション(Conducted Emission)**:電源ラインや信号ラインを通じて伝わるノイズ。 DC/DCコンバータのスイッチング動作は高周波の電流変化を伴うため、EMIの主要な発生源の一つです。 ## **3. EMSとは(電磁感受性)** EMS(Electromagnetic Susceptibility)とは、外部からの電磁ノイズに対して機器がどれだけ影響を受けやすいかを示す概念です。「ノイズを受ける側」の問題で、イミュニティ(Immunity)とも呼ばれます。 EMSが低い(耐性が高い)機器は、外部ノイズが存在しても正常に動作し続けることができます。 外部ノイズにはさまざまな種類があり、それぞれに対応したイミュニティ試験が規定されています。 * **静電気放電(ESD)**:人体や機器からの静電気放電による瞬間的な高電圧 * **電源ライン上のバースト・サージ**:雷や開閉サージなどによる瞬間的な過電圧 * **放射イミュニティ**:外部からの電磁波(携帯電話、無線機器など)による影響 * **伝導イミュニティ**:電源ラインや信号ラインを通じて侵入するノイズへの耐性 ## **4. EMC規格と認証** 電子機器を市場に出すためには、各国・地域のEMC規格への適合が必要です。規格には国際規格とローカル規格があります。 ### **国際規格** * **CISPRシリーズ**:IEC傘下の国際無線障害特別委員会が制定。民生機器向け(CISPR32等)や車載向け(CISPR25等)など用途別に規格が分かれています。欧州EN規格のベースにもなっています。 * **IEC 61000シリーズ**:EMCに関する国際規格群。イミュニティ試験などをカバーします。 ### **各国・地域のローカル規格** * **EN規格(欧州)**:CEマーキング取得に必要。 * **FCC規格(北米)**:FCCマーク。 * **VCCI規格(日本)**:自主規制規格。VCCIマーク。 * **GB規格(中国)**:CCC認証(中国強制認証)に対応。 ## **まとめ** | 用語 | 意味 | |---|---| | **EMC** | EMIとEMSの両方を満たす電磁両立性 | | **EMI** | 機器から外部へ放出される電磁ノイズによる干渉(ノイズを出す側) | | **EMS** | 外部ノイズに対する耐性・感受性(ノイズを受ける側) | | **国際規格** | CISPR、IEC 61000シリーズなど | | **ローカル規格** | EN(欧州)、FCC(北米)、VCCI(日本)など |
Geber fileはどこでダウンロードできますか

Gerberファイルの入手方法

電子回路設計において、適切な基板レイアウトはIC性能を最大限に引き出すために不可欠です。
当社では、お客様の設計を支援するため、評価基板のGerberファイルを提供しています。Gerberファイルは、最適な基板レイアウトの参考や、実験用基板の作成に活用できます。

ここでは、そのダウンロード方法とメリットをご案内します。

1.Gerberファイルのダウンロード方法

評価基板のGerberファイルは、各製品の「製品ページ」からダウンロード可能です。
具体的な手順は以下の通りです。

1.目的の「製品ページ」へ移動

当社のウェブサイトで、Gerberファイルを入手したい製品ページにアクセスしてください。
製品ぺージへのアクセスは、サイト内検索でシリーズ名検索がお勧めです。

2.技術資料」項目を探す

製品ページ内の「技術資料」を確認してください。

3.Gerberファイルのダウンロード

「技術資料」項目内に、評価基板の回路図とともにGerberファイルがあるので、リンクをクリックしてダウンロードしてください。

Gerberファイルを活用するメリット

・最適な基板レイアウトの参考

当社の評価基板は、IC性能を最大限に引き出す最適なレイアウトが施されています。
Gerberファイルの基板レイアウトを参考にすることで、各製品に最適な基板レイアウトを学ぶことができ、お客様のレイアウト品質向上に貢献します。

・設計の確実性向上

当社の推奨レイアウトを参考にすることで、IC性能を安定して引き出し、予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。

・実験用基板の迅速な作成

評価や実験で必要な基板を、Gerberファイルを使って迅速に作成できます。
基板設計の手間を省き、基板メーカーに製造依頼することで、開発期間短縮とコスト削減に貢献します。

PCBレイアウトが問題ないかわかりません。どのように確認したらいいですか?
「回路図は正しいはずなのに動かない」「EMI試験でNGが出た」「出力電圧が不安定」——こういったトラブルの原因がPCBレイアウトにある場合は少なくありません。 回路図では「理想的な配線」として描かれていても、実際の基板上ではすべての配線が寄生抵抗・寄生インダクタンス・寄生容量を持つ「部品」として振る舞います。これがICの誤動作・ノイズ増大・熱問題の根本原因になることがあります。 ここでは、レイアウトの不備によってノイズレベルの悪化やICの誤動作が発生しやすいスイッチング電源を対象に、降圧DC/DCを例としてレイアウトの自己チェックポイントをまとめます。 ## **1. 優先順位を意識した確認** スイッチング電源のレイアウトには確認すべき優先順位があります。重要度の高い順に確認しましょう。 | 優先順位 | 確認項目 | |---|---| | **1** | ホットループ(入力コンデンサ〜ハイサイドFET〜ローサイドFET)の面積※ホットループはTopologyによって異なります。 | | **2** | 大電流経路(パワーライン)の配線幅とビア処理 | | **3** | フィードバックライン(FB端子周辺)のレイアウト | | **4** | ICの電源端子のパスコン配置 | | **5** | GNDベタの連続性 | | **6** | 制御信号・ステータス信号の引き回し | ## **2. 各項目のチェックポイント** ### **ホットループ・パワーライン** * 入力コンデンサはICのVIN端子・GND端子の直近に配置されて、ホットループが極小化されているか。 (※ホットループの位置はTopologyによって異なります。) * 大電流経路は細い線ではなくベタ(面)で接続されているか * スイッチングノードの面積は必要以上に大きくないか * 層間を跨ぐ大電流ラインは複数ビアで接続されているか
### **フィードバックライン** * 分圧抵抗(RFB)はFB端子の直近に配置されているか * センス位置は出力コンデンサの直後か * センスラインはノイズ源(スイッチングノード・インダクタ)から離れているか * VOUTセンスラインとGNDセンスラインは差動ペアのように密着して配線されているか ### **ICの電源端子** * 「電源ライン → パスコン → ICピン」の順で配線されているか * パスコン前後の配線は十分な幅があるか * パスコンのGND側は大電流の通り道を避けて接続されているか ### **GNDベタ** * 多層基板の場合、部品面直下(L2)にGNDプレーンが配置されているか * GNDベタがホットループのリターンパス直下で分断されていないか * 制御信号線がGNDベタを分断していないか ## **3. データシートの推奨レイアウトを確認する** 各ICのデータシートには推奨レイアウトが記載されています。自分のレイアウトと照らし合わせて、大きく乖離している箇所がないか確認してください。特にGNDの一点接地ポイントやパスコンの配置は製品ごとに意図があります。 ## **4. それでも解決しない・自信がない場合** レイアウトの問題は原因の特定が難しく、「回路定数を変えても改善しない」ケースが少なくありません。根本的な対策には基板の再設計が必要になる場合もあります。 また、経験が浅い場合は上記のチェックポイントをすべて満たしていると思っていても、実際に基板が届いてから正常に動作しないというケースもよく見られます。 レイアウトに不安がある場合や問題が解決しない場合は、TOREXへお気軽にご相談ください。回路図・レイアウトのレビューサポートも承っています。 お問い合わせ

PCB設計用の部品ライブラリ(フットプリント・シンボル)は、どこでダウンロードできますか

トレックスでは、部品ライブラリ提供会社であるSamacSys社と提携しており、様々なEDAツールに対応したライブラリを提供しています。
ライブラリのダウンロードは、各製品ページから PCB設計用の部品ライブラリ(フットプリント・シンボル)をダウンロードすることができます。

ライブラリが準備されている場合は、SamacSysのアカウント登録をするだけで即座にライブラリをダウンロード可能です。

ライブラリが準備されていない場合は、モデルライブラリの作成依頼が可能です。
通常、作成依頼から24h~48h程度でライブラリの提供を行います。

“製品ページ” → “PCB Symbol, Footprint & 3D Model”

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許容損失・熱抵抗とは何ですか?
ICの選定や熱設計を行う際、データシートに記載されている「**許容損失(Pd)**」「**熱抵抗($\theta_{ja}$・$\psi_{jc}$)**」「**ジャンクション温度($T_j$)**」は重要なパラメータです。ここではそれぞれの意味と基本的な使い方を解説します。 ## **1. 許容損失とは** 許容損失(Maximum Power Dissipation:Pd)とは、周囲温度($T_a$)からジャンクション温度の絶対最大定格($T_{jmax}$)に達するまでにICが消費できる最大の電力です。 許容損失はパッケージの放熱能力と周囲温度によって決まり、データシートには特定の条件(基板実装条件・周囲温度)での値が記載されています。
## **2. 熱抵抗とは** 熱抵抗とは、ICの発熱に対してどれだけ温度が上昇しやすいかを示す指標です。電気回路の抵抗と同様に、熱の流れにくさを表します。 代表的な熱抵抗として以下の2つがあります。 * **$\theta_{ja}$(ジャンクション〜周囲間熱抵抗)** ICのジャンクションから周囲空気までの熱抵抗です。 基板実装した状態での放熱性を示します。一般的な熱設計で最もよく使われます。 * **$\psi_{jc}$(ジャンクション〜ケース間熱抵抗)** ICのジャンクションからパッケージ表面(ケース・トップ)までの熱抵抗です。$\psi_{jt}$(ジャンクション〜トップ間)と表記されることもあります。パッケージ表面温度からジャンクション温度を推定する際に使用します。 単位は $[\text{°C/W}]$ で、値が小さいほど放熱性が高いことを示します。
## **3. 許容損失と熱抵抗の関係** 許容損失とジャンクション温度・熱抵抗の関係は以下の式で表されます。 $$P_d = \frac{T_{jmax} - T_a}{\theta_{ja}}$$ この式から、$\theta_{ja}$ が大きいほど(放熱性が低いほど)許容できる $P_d$ が小さくなることがわかります。また周囲温度 $T_a$ が高くなるほど許容損失も低下します。これがデータシートの許容損失ディレーティンググラフに表れています。 ## **4. ジャンクション温度の計算** ICの内部温度であるジャンクション温度($T_j$)は以下の式で求められます。 **$\theta_{ja}$ を使用する場合(基板実装・周囲温度から推定)** $$T_j = T_a + P_d \times \theta_{ja}$$ **$\psi_{jc}$ を使用する場合(パッケージ表面温度から推定)** $$T_j = T_c + P_d \times \psi_{jc}$$ * $T_j$:ジャンクション温度 [°C] * $T_a$:周囲温度 [°C] * $T_c$:パッケージ表面温度 [°C] * $P_d$:ICの消費電力 [W] $T_j$ がデータシートに記載されている最大ジャンクション温度($T_{jmax}$)を超えないように設計する必要があります。 ## **5. 設計上の注意点** * **$\theta_{ja}$・$\psi_{jc}$ は実装・基板条件に大きく依存する** データシートに記載の $\theta_{ja}$・$\psi_{jc}$ は特定の基板・実装条件での値です。 実際の基板での $\theta_{ja}$ は、銅箔面積・基板材質・放熱パターンによって大きく変動します。 * **$\psi_{jc}$ の測定方法に注意する** パッケージ表面温度の測定には、測定方法によって測定値が大きくずれることがあります。正確な温度を測定するためには、測定部品に応じて最適な測定方法を選択する必要があります。 ## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **許容損失(Pd)** | $T_a$ から $T_{jmax}$ に達するまでにICが消費できる最大電力 | | **$\theta_{ja}$** | ジャンクション〜周囲間の熱抵抗。実装・基板条件に大きく依存する | | **$\psi_{jc}$($\psi_{jt}$)** | ジャンクション〜ケース(トップ)間の熱抵抗 | | **ジャンクション温度** | $T_j = T_a + P_d \times \theta_{ja}$(または $T_c + P_d \times \psi_{jc}$)で算出 |

トラブル事例/設計ノウハウ集

DC/DCコンバータの負荷過渡応答を改善する方法:内部動作のメカニズムから理解する対策
DC/DCコンバータの選定では、入出力電圧や出力電流だけ見て選定する設計者も多いのではないでしょうか。 実際の回路では、負荷電流が急激に変化したとき(過渡時)に、出力電圧が一時的に変動する **「出力過渡変動(ロードトランジェント)」** が発生します。 この過渡変動による一瞬の電圧変動が大きいと、後段にあるMCUやリセットICが「電圧低下」と誤認識してシステムがリセットしたり、後段デバイスに動作電圧外の電圧を印加する原因になりかねません。 この記事では、DC/DCコンバータの出力過渡変動時のIC内部動作と、抑制するための具体的な対策方法を解説します。
## DC/DCコンバータの内部動作と過渡変動のメカニズム DC/DCコンバータは制御方式によって、過渡変動時のIC内部動作が異なります。 ### PWM制御の場合(エラーアンプ有り) エラーアンプでFB電圧と基準電圧を比較するPWM制御では、エラーアンプの出力を変動させることで、Duty比を変化させ出力電圧を一定に保ちます。 過渡応答時は、下記のような動作がIC内部で起きています。 1. 出力電流1mAで安定。**Duty=5%** を維持。 2. 出力電流が1mAから1000mAに負荷変動 3. 出力電圧が低下し、設定値に戻るまでエラーアンプがDutyを大きくする 4. **Duty=30%** で出力電圧安定。 PWM制御における負荷過渡変動は、新しい動作点(Duty)にエラーアンプがいかに早く収束できるかに依存します。エラーアンプの応答速度が遅いほど、またDutyの変動幅が大きいほど、過渡変動は大きくなります。 ただし、エラーアンプの応答速度はある程度限界があり、電圧制御方式・電流制御方式といった制御方式によっておおよその上限が決まります。 また、強制PWM(F-PWM)制御では負荷によらず連続モードを維持するため、軽負荷と重負荷でDutyがほぼ変わらず動作点の変動幅が小さくなります。そのため、負荷過渡変動が小さくなる傾向があります。
### PFM制御・COT制御の場合 PFM制御やCOT(Constant On-Time)制御では、FB電圧がしきい値を下回ったことをコンパレータが検知し、スイッチングパルスを追加することで電圧を維持させます。 PWM制御のようにエラーアンプが存在しないため、エラーアンプの応答速度が無い分 高速で過渡応答することが可能です。
## 1. 同一IC・シリーズでの対策 ### 出力容量値の増加 出力容量を増やすことで、負荷過渡変動時の電圧変動を抑制します。出力容量値が大きいほど過渡変動は小さくなります。 ただしDC/DCコンバータでは推奨CLの範囲が設けられている場合があります。範囲を超えると位相余裕が減少し発振リスクが生じるため、データシートの推奨容量範囲を確認した上で増やしてください。 また出力容量を増やすとCFB(フィードフォワードコンデンサ)の最適値が変わる製品があります。出力容量の変更によりCFB(フィードフォワードコンデンサ)も調整することで、応答性を最適にすることが可能です。 ### インダクタ値を小さくする インダクタ値が小さいほどコイル電流の傾きが急峻になることで、負荷電流への追随性が向上し 負荷過渡応答の向上が可能です。 ただし、推奨外のインダクタを使用すると、位相余裕が減少し発振等の問題が発生する場合があります。データシートの推奨範囲内で変更するようにして下さい。 ### CFB(フィードフォワードコンデンサ)の追加・調整 **FB外付け品に有効** FB抵抗外付け品では、FB抵抗(RFB1)と並列にCFBを接続することで、過渡応答を改善できます。CFBを追加すると、出力電圧の変動が分圧抵抗を介さずFBピンへ高周波的にダイレクトに伝わるため、過渡変動が小さくなります。 多くの製品でCFBを接続する構成が推奨されており、その最適値を調整することで過渡応答を改善できます。 ### MODE端子でPWM固定モードに切り替える **MODE端子付き品のみ対象** PFM/PWM制御とPWM制御を外部信号で切り替えできるMODE端子を持つ製品では、PWM固定モードに切り替えることで負荷過渡変動を抑制することができます。 ただし、PWM制御では軽負荷時の消費電流が増加するため、軽負荷時の低消費かつ応答性を両立させたい場合は、動作モードに応じてMODE端子を切り替えて制御することが必要になります。 ### ダミー負荷でDutyを上げる **PWM:有効 / F-PWM, PFM:効果小** PWM制御では、無負荷・軽負荷状態でDutyが低くなり、動作点の変動幅が大きくなります。特に非連続モードでは、出力電流の変動によりDuty(動作点)が大きく変わります。 ダミー抵抗等で常時ある程度の電流を流してDutyを上げた状態を維持することで、負荷過渡変動時のDuty変動幅を小さくし負荷過渡変動を改善できます。 なお、低消費電流が必要なアプリケーションでは、システム要件的にこの方法を適用することが難しい場合があります。 ### スイッチング周波数を高いタイプを選択する PWM制御では、スイッチング周波数が高いほど1スイッチングサイクルあたりの間隔が短くなり、エラーアンプがDutyを修正できる頻度が増えるため、過渡応答が改善します。 また同一シリーズでスイッチング周波数を高くすると、コイルのインダクタンス値が低くなる傾向にあります。インダクタンス値が低くなると、コイル電流の傾きが急峻になることで、負荷電流への追随性が向上し 負荷過渡応答の向上が可能です。 ## 2. 負荷側での対策 ### 負荷の電流変動量・スルーレートを抑える DC/DCコンバータの過渡変動は負荷電流の変化速度(スルーレート)と変化量に依存します。負荷側の設計で電流変化を緩やかにすることも有効な対策です。 * **スルーレートを緩やかにする** MCUの動作クロックを段階的に立ち上げる、パワースイッチFETのゲート抵抗を大きくして立ち上がりを鈍らせるなどの対策が有効です * **周辺デバイスの起動・動作タイミングをずらす** 複数のデバイスを同時に起動・動作させると出力電流が大きくなるため、タイミングをずらすことで出力電流の変動幅を小さくします * **過渡変動の収束前に次の変動が重ならないようにする** DC/DCが負荷過渡変動から回復する途中、つまりエラーアンプがDutyを動作点に戻し切る前に次の負荷変動が発生すると、Dutyの変動幅がさらに大きくなり、通常の負荷変動時よりも出力電圧の変動が大きくなる場合があります。 複数の負荷が連続して動作するシステムでは、前の過渡変動が十分に収束してから次の負荷を動作させるよう、動作タイミングを調整することが有効です。 ## 3. IC自体の変更 ### 高速応答のDC/DCコンバータに変更する DC/DCコンバータの負荷過渡応答特性は製品によって大きく異なります。高速応答が必要な場合は、負荷過渡応答が良好な製品への変更も検討してください。 最近では過渡応答特性が良好なCOT制御を採用した製品を選定するのもお勧めです。 ## まとめ - DC/DCの過渡変動はPWM制御ではエラーアンプがDutyの動作点を調整する時間の遅れ、PFM・COT制御ではコンパレータの反応時間に起因する - 出力容量を増やすことで変動を吸収するのが基本対策だが、推奨範囲を超えると発振リスクがある - インダクタ値を小さくすることで電流応答を速くできるが、推奨範囲を超えると発振リスクがある - スイッチング周波数を高くすることでPWM制御の応答性を改善できる - FB外付け品ではCFBの追加・調整で過渡応答を改善できる - MODE端子付き品はPWM固定モードへの切り替えが有効 - 負荷の動作タイミングをずらし、過渡変動が収束する前に次の変動が重なるのを避ける - 根本的な改善には高速応答品・COT制御品への変更を検討する
0Ω抵抗(ジャンパー抵抗)の落とし穴と注意点
0Ω抵抗(ジャンパー抵抗)は、回路のブロック間接続、デバッグ時の電流測定ポイント、仕様切り替え(実装/未実装による回路分岐)などの用途で広く使われる便利な部品です。 しかし、「0Ω」という名称から抵抗がゼロと思われがちですが、実際には数十mΩ〜100mΩ程度の実抵抗が存在します。電源ラインに安易に挿入すると、電源ICの動作を不安定にする原因になります。 ## 電源ラインにおける2大リスク ### 1. 「0Ωだから大丈夫」ではない:定格電流の超過 0Ω抵抗にも通常の抵抗器と同様に**定格電流(許容電流)**が規定されています。一般的な厚膜チップ抵抗タイプの定格電流・実抵抗の目安は以下の通りです。 | サイズ | 定格電流の目安 | 実抵抗の目安 | |---|---|---| | 1005mm | 0.5〜1A程度 | 50〜100mΩ程度 | | 1608mm | 1〜2A程度 | 30〜100mΩ程度 | | 2012mm | 2A程度 | 20〜50mΩ程度 | | 3216mm | 2〜3A程度 | 10〜50mΩ程度 | ※上記は目安値です。実際の値はメーカやシリーズによって異なるため、必ずデータシートを確認してください。 DC/DCコンバータの出力ラインなど、数Aクラスの大電流が流れる場所に小型の0Ω抵抗を配置すると、定格をオーバーして内部の導電層が焼き切れ、発熱・断線(オープン破壊)に至るリスクがあります。 ### 2. 数十mΩの実抵抗による電圧降下と電源への悪影響 0Ω抵抗が持つ数十mΩの実抵抗は、大電流時や高精度な電源ラインにおいて無視できない電圧降下を引き起こします。 **計算例)** 実抵抗50mΩのジャンパーに電流2Aが流れた場合 $$\Delta V = 2\text{A} \times 50\text{m}\Omega = 100\text{mV}$$ $$P = 2\text{A}^2 \times 50\text{m}\Omega = 200\text{mW}$$ このわずか100mVの電圧降下や200mWの発熱が、以下のようなトラブルを誘発します。 * **LDOの出力電圧低下とシステム不安定化** 高精度な1.2Vや1.8Vのデジタルコア電源ラインに0Ω抵抗を挟むと、実効電圧がドロップし、後段のMCUやFPGAが異常リセットを起こす原因になります。 * **電源ICの誤動作・発振** 出力端子と出力コンデンサの間に0Ω抵抗(数十mΩの実抵抗+数nHの寄生インダクタンス)が入ると、高周波成分に対するインピーダンスが跳ね上がり、出力コンデンサが機能しなくなる場合があります。0Ω抵抗の寄生成分により、ICが正常な制御をすることができず、出力発振や誤動作するリスクがあります。入力端子と入力コンデンサ間への挿入も同様の理由でICの誤動作やEMI増加のリスクがあります。 * **フィードバック(FB)経路への影響** 電源ICの電圧設定ピン(FBピン)の直前に0Ω抵抗を挟んでしまうと、実抵抗による電圧降下のせいでICが「出力電圧が足りない」と誤認し、出力電圧が想定より高く制御されてしまうなどの異常動作に繋がります。 ## 大電流ラインへの使用が避けられない場合 どうしても仕様切り替えなどの用途で大電流ラインやGNDラインにジャンパーを打たなければならない場合は、一般的な厚膜チップ抵抗ではなく**金属板タイプ(ジャンパー専用の超低インピーダンス・低インダクタンス素子)**を選定してください。実抵抗を数mΩ以下に抑えられるため、電圧降下のリスクを最小限に抑えることができます。 ## まとめ - 0Ω抵抗は「0Ω」ではなく数十mΩ〜100mΩ程度の実抵抗がある - 電源ラインに使用する場合は定格電流を超過しないサイズ選定が必須 - わずかな実抵抗による電圧降下が出力低下やICの誤動作を招く場合がある - 出力コンデンサ・入力コンデンサと電源IC間への挿入は発振・誤動作のリスクがある - 大電流ラインには金属板タイプのジャンパー素子の使用を検討する
EDLC(電気二重層コンデンサ)を安価なLDOで充電する方法
EDLCは電気二重層コンデンサで、スーパーキャパシタ・ウルトラキャパシタとも呼ばれます。 大容量(F単位)ですが、1セルあたりの最大電圧が2.5V〜2.7V程度と低く、放電とともに電圧が線形に低下する特性があります。主に短時間のバックアップ電源・ピーク電流アシスト用途に使用されます。 EDLCの充電には専用の充電ICも存在しますが、製品数が少なく高価なのが実情です。この記事では、安価で入手性の良いLDOを使ったEDLC充電回路の構成と注意点を解説します。 ## EDLCを充電する際の要件 EDLCを適切に充電するには、以下のポイントを理解しておく必要があります。 * **電圧制限** EDLC 1セルあたりの最大電圧(2.5V〜2.7V)を超えると劣化・破壊につながります。 充電完了電圧(LDOの出力電圧)を使用するEDLCの最大電圧以下に設定してください。 * **多セル直列接続時の電圧バランス** 2セル以上を直列接続する場合、各セルの自己放電特性のばらつきや容量劣化のばらつきにより電圧バランスが崩れることがあります。 多セルで使用する場合は、**各EDLCに並列にバランス抵抗等**を追加してセルバランスを保ってください。 * **突入電流の制限** EDLCを電源に直接接続すると、充電開始時に非常に大きな突入電流が流れます。 入力側の電流制限が動作してシステムが停止する可能性があるため、充電ICや制限抵抗で突入電流を適切に制限することが重要です。 * **逆流防止** VINが遮断・オフになった際にEDLCに蓄積された電荷が充電ICに逆流し、ICが破壊される場合があります。 専用の充電ICを用いない場合は、逆流防止用のダイオードを挿入するか、逆流防止機能を搭載したLDOを選定してください。 * **Tj max(ジャンクション温度)の管理** 充電中は充電ICや制限抵抗に継続的に電流が流れ、損失が発生してジャンクション温度が上昇します。 Tj maxを超えないよう熱設計が必要です。 ## LDOによるEDLC充電の基本回路 LDOの出力電圧をEDLC1セルの充電電圧(2.5V以下)に設定することで、LDOを用いたシンプルかつ安価にEDLCを充電できます。 ただし、**どんなLDOでもEDLCを充電できるわけではありません。** 数F〜数十Fという「桁違いの超大容量負荷」が接続されても発振しない 安定した位相補償性能(一般に低消費型のLDOに多い傾向があります)を持ち、かつ電流・熱の管理が可能なデバイスの選定が必要です。 また充電電流・Tjの管理を行う必要があるため、電流制限外調機能を搭載したLDOが好ましいです。
## 注意事項 ### Tj max(ジャンクション温度)の制限 充電中のLDOの損失は以下の式で求められます: $$P_{LDO} = (V_{IN} - V_{EDLC}) \times I_{charge}$$ 充電時の電流は、LDOに搭載された電流制限特性によって決まります。 そのため、LDOの発熱が一番大きくなるEDLCの電圧は製品に搭載された電流制限特性により異なるため、使用するLDOの電流制限特性を把握した上でTjを計算し、Tj maxを超えないよう熱設計・動作条件を確認してください。
充電速度(充電電流)を早くしようとすると、許容損失の大きいLDOや抵抗が必要になります。 反対に充電速度が遅くていい場合は、小型のLDOや抵抗で対応でき、低コストで構成できます。 ### LDOとEDLC間の抵抗挿入 メーカが推奨しない場合を除いて、LDOの出力とEDLCを直接接続することは位相補償上好ましくありません。安定性を確保するため、**出力-EDLC間に0.5〜数Ωの抵抗を挿入**してください。この抵抗がEDLCのESRとして機能し、LDOの安定動作に寄与します。 ### 電流制限値の考慮 前段の電源の供給能力以下の電流制限を持つLDO、または電流制限値を調整できるLDOを選定してください。 ## まとめ - EDLCを電源に直接接続すると突入電流が流れ入力側の電流制限が動作する恐れがある。LDOや制限抵抗による電流制限が重要 - LDOの出力電圧をEDLC1セルの最大電圧(2.5V〜2.7V)以下に設定する - VIN遮断時の逆流によるIC破壊を防ぐため、逆流防止ダイオードの追加または逆流防止機能付きLDOの選定が必要 - LDOの電流制限特性を把握した上でTjを計算し、充電速度に応じた熱設計を行う - LDOとEDLC間には0.5〜数Ωの抵抗を挿入して安定性を確保する
EMI・EMS・EMCとは何ですか?用語と規格の基礎を解説
電子機器の設計や規格認証の場面で「**EMI**」「**EMS**」「**EMC**」という言葉をよく目にします。混同されやすい用語ですが、それぞれ異なる概念です。 ## **1. EMCとは(電磁両立性)** EMC(Electromagnetic Compatibility)とは、**機器が電磁ノイズを出さず、かつ外部からの電磁ノイズにも影響されずに正常動作できる能力**のことです。 EMCはEMIとEMSという2つの観点を合わせた概念です。 ## **2. EMIとは(電磁妨害)** EMI(Electromagnetic Interference)とは、電子機器から発生する**電磁ノイズが他の機器に干渉し、誤動作や性能低下を引き起こす現象**です。「ノイズを出す側」の問題です。 EMIを引き起こすノイズの放出(エミッション)には、経路によって大きく2種類あります。 * **放射エミッション(Radiated Emission)**:空間を伝わる電磁波として放射されるノイズ。 * **伝導エミッション(Conducted Emission)**:電源ラインや信号ラインを通じて伝わるノイズ。 DC/DCコンバータのスイッチング動作は高周波の電流変化を伴うため、EMIの主要な発生源の一つです。 ## **3. EMSとは(電磁感受性)** EMS(Electromagnetic Susceptibility)とは、外部からの電磁ノイズに対して機器がどれだけ影響を受けやすいかを示す概念です。「ノイズを受ける側」の問題で、イミュニティ(Immunity)とも呼ばれます。 EMSが低い(耐性が高い)機器は、外部ノイズが存在しても正常に動作し続けることができます。 外部ノイズにはさまざまな種類があり、それぞれに対応したイミュニティ試験が規定されています。 * **静電気放電(ESD)**:人体や機器からの静電気放電による瞬間的な高電圧 * **電源ライン上のバースト・サージ**:雷や開閉サージなどによる瞬間的な過電圧 * **放射イミュニティ**:外部からの電磁波(携帯電話、無線機器など)による影響 * **伝導イミュニティ**:電源ラインや信号ラインを通じて侵入するノイズへの耐性 ## **4. EMC規格と認証** 電子機器を市場に出すためには、各国・地域のEMC規格への適合が必要です。規格には国際規格とローカル規格があります。 ### **国際規格** * **CISPRシリーズ**:IEC傘下の国際無線障害特別委員会が制定。民生機器向け(CISPR32等)や車載向け(CISPR25等)など用途別に規格が分かれています。欧州EN規格のベースにもなっています。 * **IEC 61000シリーズ**:EMCに関する国際規格群。イミュニティ試験などをカバーします。 ### **各国・地域のローカル規格** * **EN規格(欧州)**:CEマーキング取得に必要。 * **FCC規格(北米)**:FCCマーク。 * **VCCI規格(日本)**:自主規制規格。VCCIマーク。 * **GB規格(中国)**:CCC認証(中国強制認証)に対応。 ## **まとめ** | 用語 | 意味 | |---|---| | **EMC** | EMIとEMSの両方を満たす電磁両立性 | | **EMI** | 機器から外部へ放出される電磁ノイズによる干渉(ノイズを出す側) | | **EMS** | 外部ノイズに対する耐性・感受性(ノイズを受ける側) | | **国際規格** | CISPR、IEC 61000シリーズなど | | **ローカル規格** | EN(欧州)、FCC(北米)、VCCI(日本)など |
EN端子を中間電圧で駆動すると消費電流が増加する理由
ICの入力端子(EN端子、CE端子等)にVINより低い"H"電圧(中間電圧)が印加されると、消費電流が通常動作時よりも増加する製品が多いです。この現象のメカニズムについて説明します。 ## 原因:CMOSインバータの貫通電流 EN端子の入力回路には一般的にCMOSインバータが使われています。CMOSインバータはPch FETとNch FETが直列接続された構造です。 * **"H"入力時**:PchがOFF、NchがON → 貫通電流は流れない * **"L"入力時**:PchがON、NchがOFF → 貫通電流は流れない * **中間電圧入力時**:PchとNch**両方が同時に半ON状態** → VINからGNDへ貫通電流が流れる
貫通電流を抑制するため、Pch・Nchと直列に抵抗素子または定電流素子を挿入している製品が多いですが、中間電位が印加されると消費電流が増加してしまいます。抵抗値・定電流値はICにより異なります。 この消費電流増加量はデータシートに記載されていないことが多いため、**実機で確認するか、メーカへ問い合わせることを推奨します。** ## VINと同電位の"H"電圧では貫通電流は発生しない VINと同電位の"H"電圧を入力した場合、PchはVGS = 0VとなりOFFするため、一般的に貫通電流は発生しません。 ただし、VINより高い電圧の印加をNGとしている製品もあります。ESD保護素子の構造上、VINより高い電圧を印加するとESD保護素子が導通し、意図しない電流経路が発生する場合があるためです。 EN端子にVINより高い電圧を印加する場合は、**データシートで絶対最大定格を確認し、問題がないことを確認してください。** ## まとめ - EN端子にVINより低い中間電圧が印加されるとCMOSインバータで貫通電流が発生し消費電流が増加する - 消費電流の増加量はデータシートに記載されていないことが多く、実機確認またはメーカへの問い合わせが必要 - VINと同電位の"H"電圧では貫通電流は一般的に発生しない - VINより高い電圧の印加はESD保護素子の影響で問題になる場合があるため、絶対最大定格を確認すること
FB抵抗値の選定:ノイズ耐性と消費電流のトレードオフ
## FB抵抗の役割 DC/DCコンバータやLDOの出力電圧外部設定(FB)タイプは、FB端子に接続した分圧抵抗(RFB1・RFB2)によってVOUTを設定します。 $$V_{OUT} = V_{REF} \times \frac{R_{FB1} + R_{FB2}}{R_{FB2}}$$ FB抵抗値の選定は、消費電流とノイズ耐性のトレードオフとなります。ここでは、FB抵抗値を低くした場合・高くした場合のメリット・デメリットについて解説します。 ## 設計の基本スタンス FB抵抗値の選定において、最も重要なのは **「ICのデータシートで指定されている推奨抵抗値(リファレンスボードの実装値)を基準にする」** ことです。メーカーはICの内部回路や位相補償特性を考慮して、最適な値を選定しているためです。 その上で、アプリケーションの要求に合わせて抵抗値を調整します。 ## FB抵抗値が高い場合 * **メリット:消費電流が小さく軽負荷効率が高い** FB抵抗値が高いとFB抵抗に流れる電流が小さくなるため、消費電流が抑えられます。 軽負荷時の効率改善が目的でFB抵抗を高く設定するケースがあります。 * **デメリット:ノイズ耐性の低下** FB抵抗値が高いとFBノードのインピーダンスが高くなり、スイッチングノイズや外部からの外乱ノイズによりFBラインが影響を受けやすくなります。 FBラインにノイズが入ると、制御回路が誤動作してVOUT変動やICが誤動作する原因になります。実際にイミュニティ試験においても、FB抵抗が高いとイミュニティ耐性が弱くなります。 * **デメリット:基板の寄生容量の影響** FB抵抗を高くすると、位相補償用コンデンサCFBの値が小さくなります。 CFBが数pF〜数十pFになるとFB端子の寄生容量の影響が無視できなくなり、**意図しない位相変化が生じて出力安定性が低下する**可能性があります。
## FB抵抗値が低い場合 * **メリット:ノイズ耐性が高い・イミュニティ試験に強い** FB抵抗値が低いとFBノードのインピーダンスが低くなり、スイッチングノイズや外部ノイズの影響を受けにくくなります。 ノイズ環境が厳しい産業機器や車載用途では、あえて抵抗値を低めに設定してノイズ耐性を高めるアプローチが有効です。 * **デメリット:消費電流が増加・軽負荷効率が低下** FB抵抗値が低いとFB抵抗に流れる電流が増加し、消費電流が増大します。軽負荷時の効率が低下するため注意が必要です。 $$I_{FB} = \frac{V_{OUT}}{R_{FB1} + R_{FB2}}$$ * **デメリット:CFBが大容量になりゼロ点精度が低下** FB抵抗値が低くなると位相補償用コンデンサCFBの容量が大きくなります。 数100pF程度であれば高精度なCOG/C0G特性のMLCCが使えますが、nF〜10nFオーダーになると高誘電率タイプ(X5R・X7R等)のMLCCしか選択肢がなくなります。高誘電率タイプは容量精度・温度特性が劣るため、**位相補償のゼロ点がずれやすくなり安定性に影響する**場合があります。 ## FB抵抗値のメリット・デメリット一覧 | | FB抵抗値 低い | FB抵抗値 高い | |---|---|---| | **消費電流** | 増加(軽負荷効率低下) | 小さい(軽負荷時効率高い) | | **外乱ノイズ耐性** | 高い(FBノードが低インピーダンス) | 低い(FBノードが高インピーダンス) | | **イミュニティ試験耐性** | 強い | 弱くなりやすい | | **スイッチングノイズの影響** | 受けにくい | 受けやすい | | **CFBの容量** | 大きい(高誘電率タイプが必要になる場合あり) | 小さい(基板寄生容量の影響を受けやすい) | ## VOUT内部固定品との違い VOUT内部固定タイプは、FB抵抗がIC内部に収まっています。 そのため外部からのノイズの影響を受けにくく、**一般的にFB外部設定品よりノイズ耐性が高い**傾向があります。またIC内部のFB抵抗を、FBタイプと比べて抵抗値を大幅に高くすることが可能です。 ## まとめ - FB抵抗値が高いと消費電流が小さく軽負荷効率が高いが、ノイズ耐性が低下する - FB抵抗値が低いとノイズ耐性が高く、イミュニティ試験に強いが消費電流が増加する - FB抵抗が高くなるとCFBが小さくなり基板の寄生容量の影響を受けやすくなる - FB抵抗が低くなるとCFBが大容量になり高誘電率タイプが必要になる場合がある - VOUT内部固定品はFB抵抗が内蔵されるためノイズ耐性が高く低消費化も容易
ICが動作しません。原因の切り分け方と確認手順を教えてください
ICやシステムが期待通りに動作しない場合、設計ミス・実装ミス、または設計時に想定していなかった現象が発生している可能性があります。 原因はケースによって様々ですが、ここでは原因を切り分けて特定するための基本的な進め方を説明します。 ## **1. 測定環境の確認** 基板や回路の確認に入る前に、まず測定環境に問題がないか確認しましょう。 * **安定化電源の電流制限** 電流制限値が低すぎると、起動時の突入電流で電源が絞られ、正常に起動できないことがあります。 * **電子負荷の動作モード** CC(定電流)モードで評価している場合、ICに内蔵の電流制限機能が動作して起動不良等の原因になることがあります。 * **マルチメータの入力インピーダンス** 入力側にマルチメータを接続していると、マルチメータの抵抗成分により供給電圧が低下して正常に動作しないことがあります。 ## **2. 動作しない現象を把握する** まず「どのICが・どのように動作しないか」を明確にします。 異常動作が発生する入力電圧・出力電流・特定の動作モード・温度依存・不良率などを調べ、どういった条件でどのような症状が発生するのかを把握しましょう。この情報は原因特定のために非常に重要です。 ## **3. 原因の範囲を絞り込む** 動作しない回路付近で後段デバイスを削除・前段電源を切り離すなどして、原因の範囲を絞り込みましょう。 具体的な例としては以下のような切り分けが有効です。 * **電源の切り替えによる切り分け** 電池接続時に異常動作が発生する場合、安定化電源に切り替えて動作確認します。 電池の内部インピーダンスによる電圧降下や電流不足が原因かどうかを切り分けられます。 * **後段デバイスの切り離し** 後段のチップセットや負荷デバイスの電源ラインを遮断・オープン状態にして、後段デバイスが原因か切り分けます。 ## **4. 不良率で原因を切り分ける** ### **不良率が高い場合** 不良率が高い場合は、設計・実装に起因する問題が疑われます。まず以下を重点的に確認してください。 1. **半田付け・実装向きの確認** 半田ブリッジ・半田不足・部品の向きミスがないか確認します。 詳細は「ICの半田付けが正常にできているか確認する方法」の記事を参照してください。 2. **実装部品の確認** 品番・極性・実装向き・定数が正しいか確認してください。 特に似た外観の部品の取り違えに注意が必要です。
### **不良率によらず確認すること** 回路図の結線・定数ミスと各ノードの電圧・波形確認は、不良率によらず重要な確認項目です。 問題になっているIC・周辺部品の電圧・電流が所望の動作になっているかを確認しながら、回路図に問題がないか見ていきましょう。 異常動作が出ているICだけでなく、その前後のデバイスの特性や周辺部品が原因の可能性もあります。「ここは原因ではない」という思い込みをもたずに、一つ一つノードを確認していくことが重要です。思い込みがあると、真因に気づくのが遅れてしまうことがあります。 * **3-1. 各ノードの電圧・波形確認** IC直近で所望の電圧が入力されているか確認します。ICが動作していない場合は、起動途中で動作停止している可能性があるので、起動波形をチェックしてください。波形確認の際は、確認したい現象に合わせて時間軸・電圧・電流のスケールを適切に設定することが重要です。 * **3-2. ICの動作・データシートの確認** ICが期待通りの動作をしているか、データシートに記載されている動作説明・推奨定数・注意事項を改めて確認しましょう。見落としがちな動作条件や制限事項が原因になっているケースがあります。 * **3-3. 回路図の確認(結線・定数ミス)** 回路図の結線が正しいか、定数が設計通りかを確認します。似た値の部品の取り違えや、フィードバック抵抗の逆差しなどは見落としがちです。 また容量の定数確認では、そのノードに接続している全容量を確認するのが重要です。 よくある事例としては、DC/DCの直近には推奨通りの出力容量しか接続していないが、その後段のFPGAの入力容量に大容量が接続していることで、起動不良が発生する事例が頻繁にみられます。 ## **5. 原因が特定できたら** 原因がわかれば、対策を実施していきましょう。 現象はわかるが対策方法がわからない場合は、上記で調べた症状・条件・不良率などの情報をICメーカに伝えて、対策方法を相談するのも一つの方法です。 ## **まとめ** 1. 測定環境に問題がないか確認する 2. どのICが・どのような条件で動作しないかを把握する 3. 後段デバイスの切り離し等で原因の範囲を絞り込む 4. 不良率が高い場合は半田付け・実装部品を重点的に確認する 5. 各ノードの電圧・波形確認と回路図の結線・定数確認を行う 6. 原因が特定できたら対策を実施。わからない場合はメーカに相談する
ICの半田付けが正常にできているかわかりません。簡易で確認する方法はありますか?
ICを実装したが期待通りに動作しない場合、半田付け不良が原因の一つとして疑われます。ここでは外観確認とテスターを使った簡易チェック方法を紹介します。 ## **1. 外観確認** まず目視でざっくりチェックします。虫眼鏡や顕微鏡があれば活用しましょう。社内でスマホが使えるのであれば、スマホのカメラ機能で確認してもいいでしょう。 * **半田ブリッジ(ショート)**: 隣接するピン間に半田が橋渡しになっていないか確認します。特にピッチの細かいICで発生しやすいです。 * **半田不足・未接合(オープン)**: ピンと基板のランドが接触していない、または半田量が少なすぎてフィレットが形成されていない箇所がないか確認します。 * **ツームストーン現象(マンハッタン現象)**:リフロー時にチップの左右の電極にかかる半田の表面張力がアンバランスになり、チップが片側に引っ張られて立ち上がってしまう現象です。ランド面積・半田量・温度・搭載位置のばらつきなどが影響します。 * **浮き・傾き**: ICが基板から浮いていたり、傾いて実装されていないか確認します。
## **2. テスターによる確認(ESD保護素子の活用)** 目視で問題がない場合は、テスターのダイオードチェック機能を使って各端子の接続状態を確認できます。 ESD保護素子の記事で紹介した通り、ICの各端子にはESD保護用のダイオードが内蔵されています。このダイオード特性を利用して、端子がGNDや電源ラインに正しく接続されているかを確認します。 ### **確認方法** 1. 基板の電源をオフにした状態で確認します。 2. テスターをダイオードチェックモードに設定します。 3. データシートで各端子のESD保護素子の構成を確認します。 4. テスターの **マイナスプローブをGND(ESD保護素子のアノード側)** に当て、**プラスプローブを確認したい端子(ESD保護素子のカソード)** に当てます。 5. 正常に半田付けされていれば、内蔵ダイオードの順方向特性(0.3V~0.7V程度)が表示されます。オープン(半田不良)の場合は導通しません。
### **注意点** * 必ず電源をオフにした状態で測定してください。 * 回路によっては、他ラインに電流が流れることでダイオード特性が測定できず、端子の接続性確認ができない場合があります。 * テスターのダイオードチェックモードでは、ICの絶対最大定格を超える電圧が印加される場合があります。試作・デバッグ用途での簡易確認としてご活用ください。量産工程では使用しないでください。 ## **まとめ** | 確認方法 | 内容 | |---|---| | **外観確認** | 半田ブリッジ・半田不足・浮き・傾きをチェック | | **テスター(ダイオードチェック)** | 内蔵ESD保護ダイオードの順方向特性で接続状態を確認 |
LDOの負荷過渡応答を改善する方法:内部動作のメカニズムから理解する対策
LDOやDC/DCの選定では、入出力電圧や出力電流だけ見て、選定する設計者も多いのではないでしょうか。 実際の回路では、負荷電流が急激に変化したとき(過渡時)に、出力電圧が一時的に変動する **「出力過渡変動(ロードトランジェント)」** が発生します。 この過渡変動による一瞬の電圧変動が大きいと、後段にあるMCUやリセットICが「電圧低下」と誤認識してシステムがリセットしたり、後段デバイスに動作電圧外の電圧を印加する原因になりかねません。 この記事では、LDOの出力過渡変動時の内部動作と、抑制するための具体的な対策方法を解説します。
## LDOの内部動作と過渡変動のメカニズム LDOは出力電圧を一定に保つため、内部のPch FET(パワートランジスタ)のゲート電圧をエラーアンプが調整し、FETのオン抵抗を変化させることで出力電流量を制御しています。
定常状態では、FETのゲート電圧を調整することで、オン抵抗を制御し出力電圧が一定になるように制御しています。 過渡応答では、下記のような動作がIC内部で起きています。 1. 出力電流1mAで安定。ドライバFETの **Vgs=0.7V** を維持。 2. 出力電流が1mAから100mAに負荷変動 3. 出力電圧が低下し、出力電圧が設定値になるまでドライバFETのVgsを大きくする 4. ドライバFETの **Vgs=1.2V** で出力電圧安定。 LDOから見ると、負荷過渡変動とは変動後の負荷変動で安定するための **動作点(ゲート電圧Vgs)** をエラーアンプでいかに早く動かすことができるかです。この時間が遅ければ負荷過渡変動は大きくなり、この時間が早ければ負荷過渡変動は小さくなります。 過渡変動を小さくするためには、以下の2つのアプローチがあります: * **応答を早くする** * ゲート電圧の動作幅を小さくする * エラーアンプの応答速度を早くする * **変動を出力コンデンサで吸収する** * CLを増やして出力電圧低下を抑制する ## 対策1. 同一ICでの対策 ### 出力容量値の増加 出力容量を増量することで、負荷電流の急変時にコンデンサが電荷を供給・吸収し、過渡変動を抑制します。CLが大きいほど過渡変動は小さくなります。 ただしLDOによっては推奨CLの上限が設けられている場合があります。データシートの推奨容量範囲を確認した上で増やしてください。 ### CFB(フィードフォワードコンデンサ)の追加・調整 FB抵抗外付け品のLDOでは、上側抵抗(RFB1)と並列にコンデンサ(CFB)を接続することで、過渡応答を改善できます。 CFBを追加すると、出力電圧の変動が分圧抵抗を介さずFBピンへ高周波的にダイレクトに伝わるため、エラーアンプの応答がブーストされ過渡変動が小さくなります。 CFBの最適値は製品・回路条件によって異なります。データシートに推奨値が記載されている場合はそれを参照し、記載がない場合はメーカへの確認をおすすめします。 ### 出力電流をゼロに近づけない(ドライバFETのゲート電圧を高くする) 無負荷・軽負荷状態ではVGSがドライバFETのVth付近になり、FETはほぼオフに近い状態になります。この状態で負荷変動が起きると、動作点に達するまでのゲート電圧変動幅が大きく、定常状態になるまでの時間が遅くなります。 負荷抵抗の追加等で常時ある程度の電流を流してVGSをVthから離した状態を維持することで、過渡時の応答速度が改善します。ただし、低消費電流が必要なアプリケーションでは、この方法を適用することがシステム要件的に難しい場合があります。 ## 対策2. 負荷側での対策 ### 負荷の電流変動量・スルーレートを抑える LDOの過渡変動は負荷電流の変化速度(スルーレート)と変化量に依存します。負荷側の設計で電流変化を緩やかにすることも有効な対策です。 * **スルーレートを緩やかにする** MCUの動作クロックを段階的に立ち上げる、パワースイッチFETのゲート抵抗を大きくして立ち上がりを鈍らせるなどの対策が有効です * **周辺デバイスの起動・動作タイミングをずらす** 複数のデバイスを同時に起動・動作させると出力電流が大きくなるため、タイミングをずらすことで出力電流の変動幅を小さくします * **負荷の動作タイミングをずらす(過渡変動の重なりを避ける)** LDOが負荷過渡変動から回復する途中、つまりエラーアンプがドライバFETのゲート電圧を動作点に戻し切る前に次の負荷変動が発生すると、ゲート電圧の変動幅がさらに大きくなり、通常の負荷変動時よりも出力電圧の変動が大きくなる場合があります。 複数の負荷が連続して動作するシステムでは、前の過渡変動が十分に収束してから次の負荷を動作させるよう、動作タイミングを調整することが有効です。 ## 対策3. IC自体の変更 ### 高速応答のLDOに変更する LDOの負荷過渡応答特性は製品によって大きく異なります。一般的に低消費LDOは応答速度が遅く、消費電流の大きいLDOは過渡応答も速い傾向があります。またGreen Operation(GO)機能のような、負荷電流に応じてIC内部の動作モード(低消費モード⇄高速応答モード)を自動で切り替える技術を搭載したLDOも存在します。 IC変更が可能なのであれば高速応答可能な製品へ変更することで根本的な改善が可能です。 ## まとめ - LDOの出力過渡変動はエラーアンプがFETの動作点を調整する時間の遅れに起因する - 出力容量を増やすことで変動を吸収するのが基本対策だが、推奨範囲を超えると発振リスクがある - FB抵抗外付け品ではCFBの追加・調整で過渡応答を改善できる - 負荷側の電流スルーレートを緩やかにすることも有効 - 根本的な改善には高速応答LDOへの変更を検討する - 負荷の動作タイミングをずらし、過渡変動が収束する前に次の変動が重なるのを避ける
MCU書き込み時のVOUT電圧印加による逆流・定格電圧違反
機器出荷前のMCUへのファームウェア書き込みや基板テストで、書き込み器からMCUのVDDピンに直接電圧を印加することがあります。このとき電源ICのVOUT端子にも電圧が印加される形となります。 通常、電源ICはVINから電力を供給してVOUTを生成しますが、VOUTのみに外部電圧を印加する状態は**通常の動作状態とは異なり**、ICによっては破壊に至る可能性もあります。
## 発生する問題 VOUTのみに外部電圧を印加するとVIN < VOUTの状態が発生し、以下の問題が起こる場合があります。 * **VINへの逆流電流** VIN-VOUT間の寄生ダイオードやON状態のFETを経由してVOUT→VIN方向に逆流電流が流れます。 ICや回路によっては、この逆流電流によって**VOUT端子がVIN+0.3Vの絶対最大定格を超える**場合があります。 * **強制PWM制御やCLディスチャージ機能による電流引き抜き** 強制PWM制御やCLディスチャージ機能(出力放電機能)を搭載したICでは、VOUTに外部電圧が印加された際に、**電流を引き抜く(シンク電流)** 場合があります。書き込み器の電流供給能力によっては、印加電圧の低下や他経路への流入がある場合があります。 多くの電源ICはこれらの状態でも問題なく動作しますが、**製品によっては問題が発生する場合があります**。製品に依存するため、各メーカへの確認を推奨します。 ## 電源IC以外の回路への影響にも注意 VOUTに外部電圧を印加すると、電源IC以外の後段回路にも影響が及ぶ場合があります。通常と異なるバイアス条件で電圧が印加されるため、**SoCや他ICの内部寄生ダイオード等を経由して想定しない経路に電流が流れる**可能性があります。 電源IC単体の問題だけでなく、システム全体として意図しない電流経路が発生しないか、また各ICの絶対最大定格を超えないかを確認してください。 ## 書き込み治具の設計時の考慮事項 量産時の書き込みは専用治具(ポゴピン等)を用いることが多く、どのピンに何Vを印加するかは治具の設計次第です。上記の問題を回避するために、**治具設計の段階から以下を考慮してください**。 * VINにも同時に電圧を印加できるよう治具に電源供給ラインを設ける * 書き込み時の印加条件(電圧・タイミング)を明確に規定する ## 対策 * **VINにも同時に電圧を印加してVIN > VOUTを維持する** 電源ICのVINにも同時に電圧を印加し、VIN > VOUTの状態を保つことで逆流を防ぎます。最も確実な対策です。 * **VOUTへの印加電圧をVOUT設定値より高くする** 印加電圧をVOUT設定値より高くすることで、電源ICは動作停止し問題のない状態になります。 ただし**F-PWM制御のDC/DCコンバータは、VOUTが設定値を超えると逆流動作(シンク動作)をする製品があるため注意が必要です**。 ## VINへの電圧印加ができない場合 VINに電圧を印加できない場合、多くのICは問題ありませんが、製品によっては逆流電流によりVOUT端子が絶対最大定格を超える場合があります。製品によっては破壊や保証外となるため、**必ず問題ないかメーカへ確認してください。** ## まとめ - MCU書き込み時にVOUTのみへ外部電圧が印加されると通常の動作状態とは異なり、VIN < VOUTとなる - 逆流電流により定格超えが発生する場合や、強制PWM制御やCLディスチャージ機能が動作して電流を引き抜く場合がある - 電源IC以外の後段回路にも想定しない電流経路が発生する可能性があるため、システム全体での確認が必要 - 治具設計の段階からVINへの電圧供給・電流供給能力・印加条件を考慮すること - 製品によっては問題が発生する場合があるためメーカ確認が必須 - 最も確実な対策はVINにも同時に電圧を印加してVIN > VOUTを維持すること - VOUTへの印加電圧をVOUT設定値より高くする対策では、F-PWM制御DC/DCの逆流動作に注意
PCBレイアウトが問題ないかわかりません。どのように確認したらいいですか?
「回路図は正しいはずなのに動かない」「EMI試験でNGが出た」「出力電圧が不安定」——こういったトラブルの原因がPCBレイアウトにある場合は少なくありません。 回路図では「理想的な配線」として描かれていても、実際の基板上ではすべての配線が寄生抵抗・寄生インダクタンス・寄生容量を持つ「部品」として振る舞います。これがICの誤動作・ノイズ増大・熱問題の根本原因になることがあります。 ここでは、レイアウトの不備によってノイズレベルの悪化やICの誤動作が発生しやすいスイッチング電源を対象に、降圧DC/DCを例としてレイアウトの自己チェックポイントをまとめます。 ## **1. 優先順位を意識した確認** スイッチング電源のレイアウトには確認すべき優先順位があります。重要度の高い順に確認しましょう。 | 優先順位 | 確認項目 | |---|---| | **1** | ホットループ(入力コンデンサ〜ハイサイドFET〜ローサイドFET)の面積※ホットループはTopologyによって異なります。 | | **2** | 大電流経路(パワーライン)の配線幅とビア処理 | | **3** | フィードバックライン(FB端子周辺)のレイアウト | | **4** | ICの電源端子のパスコン配置 | | **5** | GNDベタの連続性 | | **6** | 制御信号・ステータス信号の引き回し | ## **2. 各項目のチェックポイント** ### **ホットループ・パワーライン** * 入力コンデンサはICのVIN端子・GND端子の直近に配置されて、ホットループが極小化されているか。 (※ホットループの位置はTopologyによって異なります。) * 大電流経路は細い線ではなくベタ(面)で接続されているか * スイッチングノードの面積は必要以上に大きくないか * 層間を跨ぐ大電流ラインは複数ビアで接続されているか
### **フィードバックライン** * 分圧抵抗(RFB)はFB端子の直近に配置されているか * センス位置は出力コンデンサの直後か * センスラインはノイズ源(スイッチングノード・インダクタ)から離れているか * VOUTセンスラインとGNDセンスラインは差動ペアのように密着して配線されているか ### **ICの電源端子** * 「電源ライン → パスコン → ICピン」の順で配線されているか * パスコン前後の配線は十分な幅があるか * パスコンのGND側は大電流の通り道を避けて接続されているか ### **GNDベタ** * 多層基板の場合、部品面直下(L2)にGNDプレーンが配置されているか * GNDベタがホットループのリターンパス直下で分断されていないか * 制御信号線がGNDベタを分断していないか ## **3. データシートの推奨レイアウトを確認する** 各ICのデータシートには推奨レイアウトが記載されています。自分のレイアウトと照らし合わせて、大きく乖離している箇所がないか確認してください。特にGNDの一点接地ポイントやパスコンの配置は製品ごとに意図があります。 ## **4. それでも解決しない・自信がない場合** レイアウトの問題は原因の特定が難しく、「回路定数を変えても改善しない」ケースが少なくありません。根本的な対策には基板の再設計が必要になる場合もあります。 また、経験が浅い場合は上記のチェックポイントをすべて満たしていると思っていても、実際に基板が届いてから正常に動作しないというケースもよく見られます。 レイアウトに不安がある場合や問題が解決しない場合は、TOREXへお気軽にご相談ください。回路図・レイアウトのレビューサポートも承っています。 お問い合わせ

SBDのリーク電流と熱暴走
## リーク電流(IR)の温度特性 SBDは逆方向に電圧を印加した際にわずかな電流が流れます。これをリーク電流(IR)といいます。 SBDのリーク電流は**温度が上昇すると指数的に増加**します。高温環境では常温時と比べて数十〜数百倍のリーク電流が流れる場合があります。
## VFとIRのトレードオフ SBDはVF(順方向電圧)とIR(リーク電流)がトレードオフの関係にあります。 * **低VF品**:順方向の損失が小さい反面、IRが大きくなる傾向があります * **低IR品**:リーク電流が小さい反面、VFが高くなる傾向があります ## リーク電流により生じる問題 高温環境でIRが増大すると、以下のような問題が生じる場合があります。 * **出力電圧の浮き上がり** 逆流防止用途でSBDをVOUT-VIN間に並列接続している場合、高温時のリーク電流がVOUTラインに流れ込み、出力電圧が設定電圧以上に浮き上がる場合があります。 * **損失増加・効率低下** DC/DCコンバータの効率改善を目的に低VFのSBDを選定するケースがありますが、高温環境でIRが増大すると逆方向のリーク損失が増加し、**結果として効率低下を招く**場合があります。使用温度範囲を考慮した上で、VFとIRのバランスが最適なSBDを選定してください。 * **熱暴走** リーク電流が大きいSBDを高温環境や大電流条件で使用すると、以下のような熱暴走が発生することがあります。 (1) SBDに電流が流れ発熱する (2) 温度上昇によりIRが増大する (3) IRの増大によりさらに発熱する (4) 発熱が放熱を上回り温度がさらに上昇する (5) この正帰還ループにより制御不能な温度上昇(熱暴走)に至る (6) 最終的にSBDが破壊されることがある 熱暴走は特に**高温環境・大電流・放熱不十分な条件**が重なった場合に発生しやすくなります。 ## 対策 上記の問題はいずれもリーク電流の大きさが根本原因です。使用温度範囲でのIR特性を確認し、**リーク電流の小さいSBDを選定する**ことが基本的な対策となります。低VFのみで選定せず、データシートの高温時IR特性も合わせて確認してください。 ## まとめ - SBDのリーク電流IRは温度上昇とともに指数的に増加する - VFとIRはトレードオフの関係にあり、低VF品はIRが大きい傾向がある - リーク電流の増大により、出力電圧の浮き上がり・損失増加・熱暴走の3つの問題が発生しうる - 低VFのみで選定せず、使用温度範囲でのIR特性を確認してリーク電流の小さいSBDを選定すること
スパイクノイズの正しい測定方法:高周波信号測定時のオシロプローブ接続
DC/DCコンバータの出力スパイクノイズ等の高周波信号を測定する際、オシロプローブの接続方法によって測定結果は劇的に変化します。誤った測定方法では、実際には存在しないノイズや、測定系由来の過大なリンギングを拾ってしまい、誤った評価につながります。 ## 1. GNDリードが長いと何が起きるか 通常のプローブに付属するGNDリード線には**インダクタンス成分**があります。 これがプローブの入力容量と共振回路を形成し、数十MHz以上の高周波成分を過大に増幅・リンギングさせます。このため、GNDリードを使って測定すると、実際より何倍も大きなノイズ値や波形が観測されてしまいます。 ## 2. スパイクノイズを正確に測定するには GNDのインダクタンスを排除するため、プローブのGNDを最短距離(測定点の直近)で取ることが必須です。 **推奨手順:** 1. プローブのGNDリードやフックチップを外す。 2. プローブ先端のコンタクト部と、金属製のGNDスリーブ(シールド部)を露出させる。 3. この状態のプローブ先端を、VOUT側とGND側に直接押し当てて測定する(通称:直接当て測定)。 * GNDスプリング(アースアタッチメント)を使用しても同様の効果が得られます。
通常プローブと直接当ての測定波形を比較すると、GNDリードを使った通常のプローブ方法ではスパイクノイズが大きく測定されており、高周波信号が正確に測定できてないことがわかります。
## 3. 測定環境による使い分けと工数の考慮 測定の目的や優先度に応じて、接続方法を適切に選択してください。 | 測定内容 | 推奨接続方法 | 理由 | |---|---|---| | リップル電圧(数MHz以下) | 通常のGNDリード接続 | 利便性が高く、評価工数を抑えられる | | スパイクノイズ(数十MHz以上) | 直接当て測定(GNDリード除去) | 高周波信号の正確な評価 | 高周波測定には、プローブの準備や安定したコンタクトを維持するための工夫が必要となり、どうしても評価工数がかかります。そのため、**リップル電圧のような低周波測定であれば、無理に直接当て測定を行わず、通常のGNDリードで測定する判断も実務上は重要です。** また、不要な高周波ノイズの混入を避けたい場合や、スパイクノイズの正確な評価が難しい環境下では、**オシロスコープの帯域制限フィルタ(BW Limit 20MHz等)を積極的に活用してください。** これにより、測定系に由来する高周波の映り込みを物理的にカットできるため、ノイズ評価の効率と信頼性が向上します。 ## 4. パッシブプローブの帯域の注意点 高周波ノイズを正確に測定するには、プローブ自体の帯域も重要です。測定対象のノイズ周波数に対して十分な帯域を持つプローブを選択してください。また、高周波測定時にはプローブの倍率(10:1)を使用し、入力容量を最小化することも重要です。 ## まとめ 1. 長いGNDリードはインダクタンスによりスパイクノイズを過大評価させる 2. 正確なスパイクノイズ測定には、GNDリードを外してプローブ先端を直接当てるのが鉄則 3. 高周波用の直接当て測定は工数がかかるため、目的(リップル確認等)に応じて通常のGNDリード接続と使い分けるのが効率的 4. 測定目的に合わせ、オシロスコープ側の帯域制限フィルタ(BW Limit)を適切に活用する

デッドタイム期間中のスイッチング端子(Lx/SW端子)の絶対定格電圧
同期整流型DC/DCコンバータでは、スイッチング端子(Lx/SW端子)の絶対最大定格に「-0.3V」や「VIN+0.3V」が記載されているのが一般的です。しかし実際にDC/DCを動作させてスイッチングノードの波形を観測すると、この定格電圧を超えていることに気づいた方もいるのではないでしょうか。 普通に動作させているだけなのに定格外になっているが、本当に大丈夫なのか?そのまま使っていいのか? 本記事ではその理由と絶対最大定格との関係について解説します。 ## 1-1. デッドタイム中にLx/SW端子がマイナスになる理由 同期整流型DC/DCコンバータは、主制御スイッチ(High側FET)と同期整流スイッチ(Low側FET)を交互にオン・オフして動作します。両方のFETが同時にオンすると貫通電流が流れるため、両方がオフになるデッドタイム期間が設けられています。 デッドタイム期間中はコイル電流の経路がなくなりますが、コイルは電流を流し続けようとする性質があるため、Low側FETのボディダイオードを通じて電流が流れます。このときLx/SW端子の電圧はGNDからボディダイオードの順方向電圧(VF)分だけマイナスになります。 $$V_{Lx} = -V_F \approx -0.6\text{V} \sim -1.0\text{V}$$
このマイナス電圧はデータシートの絶対最大定格(例:-0.3V)を超えるように見えますが、多くの製品ではデッドタイム中に発生するボディダイオードのVF分のマイナス電圧は設計上考慮済みであり、通常動作の範囲内として扱われています。TOREXの製品では基本的に問題ありません。 ただし、メーカーや製品によってポリシーが異なるため、各メーカーへ確認することを推奨します。 ## 1-2. High側FETのボディダイオードによるVIN超え マイナス電圧と同様に、デッドタイム期間中にLx/SW端子がVINを超える電圧になる場合があります。 デッドタイム期間中にコイル電流が逆方向(コイルからGND方向ではなくVIN方向)に流れる場合、High側FETのボディダイオードを通じて電流が流れます。このときLx/SW端子の電圧はVINからボディダイオードのVF分だけ高くなります。 $$V_{Lx} = V_{IN} + V_F \approx V_{IN} + 0.6\text{V} \sim 1.0\text{V}$$ なお、昇圧DC/DCなどのトポロジーによっては、基準電圧がVINと異なる場合があります。詳細はデータシートを確認してください。 こちらもデータシートの絶対最大定格(例:VIN+0.3V)を超えるように見えますが、1-1と同様に設計上考慮済みの製品が多く、TOREXでは基本的に問題ありません。 ただし、メーカーや製品によってポリシーが異なるため、各メーカーへ確認することを推奨します。 ## 2. 注意が必要なケース 通常動作中のデッドタイム中のボディダイオードのVF分のマイナス電圧は、問題なく使えます。ただし、以下のようなケースでは通常動作とは異なる動作のため、ICが破壊する可能性があります。 * **通常の動作範囲を超えるマイナス電圧の印加** 外部からの電圧印加や、外部回路や誤配線によってLx/SW端子に通常動作では発生しないマイナス電圧が印加された場合、絶対最大定格を超える可能性があります。 * **推奨レイアウトからの乖離による想定外エネルギーの印加** PCBレイアウトが推奨レイアウトから大きく乖離している場合、配線パターンの寄生インダクタンスが大きくなり、スイッチング時にLx/SW端子に想定外のリンギングや電圧スパイクが発生することがあります。この場合、ボディダイオードに想定外のエネルギーが印加され、絶対最大定格を超える可能性があります。 ## まとめ 1. 同期整流型DC/DCコンバータのデッドタイム中、Low側FETのボディダイオードを通じて電流が流れ、Lx/SW端子がVF分マイナスになる 2. 同様に、High側FETのボディダイオードによりLx/SW端子がVIN+VF以上になる場合がある 3. これらの電圧は多くの製品で設計上考慮済みであり、TOREXでは基本的に問題ない 4. ただしメーカー・製品によってポリシーが異なるため、データシートの確認と個別問い合わせを推奨する 5. 推奨レイアウトからの乖離による寄生インダクタンス等で想定外のエネルギーが印加された場合は注意が必要
フの字型電流制限とマイナス電圧による起動不良
LDOレギュレータが正常に起動しない原因のひとつに、**フの字型電流制限とマイナス電圧の組み合わせ**による起動不良があります。回路設計上は問題がなくても、入力電圧の立ち上がり条件によって発生することがあるため注意が必要です。 ## **1. フの字型電流制限とは** LDOの電流制限には大きく2種類あります。 * **定電流型(フラット型)**:出力電流が制限値に達すると、それ以上電流が増えないよう一定値に制限する * **フの字型**:出力電流が制限値に達した後、出力電圧の低下に伴って電流制限値も低下する フの字型は、出力電圧が低いほど電流制限値が小さくなる特性をもっています。これにより出力短絡時のICの発熱・破損を防ぎ、**ICの保護性能を高める**ことができます。
## **2. 出力電圧がさらに低下すると(マイナス電圧での挙動)** フの字型電流制限の特性上、出力電圧が低下するほど電流供給能力が低下します。出力端子にマイナス電圧が印加された状態で起動する場合、LDOは「出力電圧 = マイナス電圧」の状態から動作を開始します。 この状態では以下のような悪循環が発生します。 1. 出力電圧がマイナス → フの字型電流制限が動作し電流供給能力が極端に低下 2. さらに電流制限が低下し、電流制限が0Aになる 3. 電流制限0Aのため、ドライバFETから電流供給しない状態で釣り合う 4. ドライバFETからの電流供給が無く、出力電圧が上昇しない 5. 電流制限がかかり続ける 6. LDOが起動できない状態を維持する
## **3. マイナス電圧が発生するシナリオ** 通常のLDOは入力・出力ともにプラス電圧での動作を前提としています。しかし以下のような条件では、出力端子にマイナス電圧(負電圧)が印加されることがあります。 * **正負電源構成** プラス電源とマイナス電源を組み合わせたシステム(オペアンプ等の両電源回路)では、マイナス電源がLDOの出力端子に影響を与えることがあります。特に起動シーケンスによってはマイナス側が先に立ち上がり、LDO出力端子にマイナス電圧が印加される場合があります * **センサーなどによる引き抜き** 後段のセンサーや回路が、LDOの出力端子から電流を引き抜く(シンク電流)ことで出力端子がマイナスになる場合があります * **電池抜き・チャタリング・シーケンスの問題** 電池を抜いた際の残留電荷の放電経路やコネクタのチャタリング、複数電源のシーケンスのタイミングによって出力端子が一時的にマイナスになることがあります ## **4. 対策** フの字型電流制限によるマイナス電圧起動不良への対策は以下のとおりです。 * **電源シーケンスの見直し** 複数電源構成の場合、LDOが先に起動してから後段電源が起動するようシーケンスを設定する * **出力コンデンサの放電回路追加** 電源オフ時に出力コンデンサを適切に放電させ、マイナス電圧が蓄積しないようにする * **SBD(ショットキーバリアダイオード)の追加** GND-出力端子にSBDを逆流防止用として挿入し、出力端子に一定以下のマイナス電圧が印加されないようにする * **別方式またはマイナス電圧起動対策済みのICへの変更** 定電流型電流制限のLDOへの変更、またはフの字型であってもマイナス電圧領域での起動不良対策を実施したICを選定することで対策できる場合があります。ICのデータシートや電流制限特性を確認してください ## **5. DC/DCコンバータでも同様の現象が発生する** フの字型の電流制限を持つDC/DCコンバータでも、同様のマイナス電圧起動不良が発生する場合があるので、注意が必要です。 ## **まとめ** 1. フの字型電流制限は出力電圧の低下に伴い電流制限値も低下する特性をもつ 2. 出力端子にマイナス電圧が印加された状態で起動すると、電流不足により起動不良が発生する 3. 正負電源構成・センサーの引き抜き・電池抜きやシーケンス問題がマイナス電圧の主な原因 4. 電源シーケンスの見直し・放電回路の追加等が有効な対策 5. フの字型電流制限でもマイナス電圧起動対策製品が存在する
光が原因でICが誤動作・停止することがありますか?
通常の使用環境では問題なく動作していたICが、特定の光源が近くにある環境で出力が停止したり、動作が不安定になることがあります。 これは、半導体素子に光が照射されると、**光電効果**によって電子-正孔対が生成され、リーク電流が増加します。 ICの内部回路には、微小な電流で動作している回路があります。光照射によってリーク電流が発生すると、**内部回路の動作バランスが崩れ、ICが正常に動作できなくなる場合があります**。 ## パッケージ構造と光の影響 光の影響を受けやすいかどうかは、**パッケージ構造**に大きく依存します。 * **モールド樹脂封止(QFN・SOT・SOP等)** 一般的なICはモールド樹脂でシリコンダイが覆われています。 モールド樹脂は可視光をほぼ遮断しますが、**紫外線・赤外線・近赤外線は完全に遮断できません**。これらの波長帯を含む強い光源がある環境では、光がモールド樹脂を透過してシリコンに到達し、影響を与える可能性があります。 * **WLP/CSP(ウェハレベルパッケージ)** WLPやCSPはシリコンダイがほぼむき出しの状態です。 光が直接シリコンに照射されるため、**モールド樹脂封止品に比べて光の影響を受けやすい**です。ICに強い光が当たる場合には特性に影響が出る可能性があります。 * **缶パッケージ(メタルキャン)** 金属ケースでシリコンダイを封止する構造です。金属が光を完全に遮断するため、光の影響を受けません。 光の影響が問題になる用途では有効なパッケージ選択肢のひとつです。 なお、缶パッケージは主にオペアンプや一部のアナログICに使われています。 ## 光の影響を受けやすい条件 - **WLP/CSPパッケージ** - **強い光源**(太陽光・白熱灯・ハロゲン・赤外線LED等)が近傍にある - **遮光なしで光源に直接さらされる** - **内部動作電流が小さい**IC ## 対策 * **遮光** 最も確実な対策です。ICを遮光テープ・遮光カバー・金属シールドで覆い、光が直接当たらないようにします。 基板全体をケースに収納する設計であれば、ケース自体が遮光になります。 * **光源の管理** 評価・デバッグ環境では照明の種類や向きを変えることで影響を確認・排除できます。 紫外線・赤外線を多く含む白熱灯・ハロゲンランプをLED照明に変えることで改善する場合があります。 * **実装位置の見直し** 光源に近い位置にICを配置しない、または光が当たりにくい面に実装するなど、基板レイアウトで対応できる場合があります。 ## 確認方法 光の影響が疑われる場合、**ICを遮光した状態で動作確認**を行います。遮光後に正常動作すれば光の影響が原因と特定できます。 ## まとめ - 光電効果により半導体素子のリーク電流が増加し、内部回路の動作バランスが崩れる - モールド樹脂封止品は可視光をほぼ遮断するが、紫外線・赤外線・近赤外線は完全に遮断できない - WLP/CSPはシリコンがむき出しのため光の影響を受けやすく、遮光設計が必要 - 缶パッケージは金属封止のため光の影響を受けないが、電源ICでは一般的ではない - 対策は遮光が最も確実。まず遮光での動作確認で原因を切り分ける
出力電圧が設定電圧以上に上昇します。原因と対策を教えて下さい。
DC/DCコンバータやLDOの出力電圧が設定値より高くなる場合、主に以下の原因が考えられます。 ## **1. フィードバック抵抗の実装ミス・抵抗値ミス** 出力電圧はFB端子に接続された分圧抵抗($R_{FB1}$・$R_{FB2}$)によって設定されます。この抵抗に問題があると、出力電圧が設定値からずれます。 ### **確認ポイント** * **抵抗値の確認**: $R_{FB1}$・$R_{FB2}$ の抵抗値が設計値通りか確認してください。似た抵抗値の部品の取り違えに注意が必要です。 * **半田不良の確認**: FB端子周辺の半田ブリッジやオープンがないか確認してください。特に $R_{FB2}$ がオープンになると、フィードバックが効かなくなり出力電圧が大きく上昇します。
## **2. 出力側からの電流流入による電圧浮き上がり** 電源ICの出力端子に外部から電流が流れ込む場合があります。この電流により出力電圧が設定値以上に浮き上がることがあります。 多くのLDOやDC/DCは、出力電圧が低下した場合に電圧を維持する制御が備わっています。しかし、出力側から電流が流れ込んで出力電圧が上昇した場合に、電圧を引き下げる制御機構が備わっていない製品がほとんどです。 ### **主な原因** * **SBDのリーク電流** 入出力間や後段デバイスとの間に接続されたSBDのリーク電流が出力側に流れ込むことがあります。 特に高温時はリーク電流が増大するため、出力電圧の浮き上がりが発生しやすくなります。 * **後段デバイスからの電流流入** 負荷側に接続されたSoCなどのチップセットが出力側に数μA程度の電流を流し込むことがあります。 後段がアンプの場合、回路によっては出力側に電流を流しこみ出力電圧の浮き上がりの原因となる場合があります。
### **対策・軽減策** * **出力-GND間への負荷抵抗の追加** VOUT-GND間に抵抗を挿入し、常時電流を流すことで浮き上がった出力電圧を引き下げる方法です。 ただし、常時電流が流れるため消費電流が増加します。設計の制約と照らし合わせて検討してください。 * **リーク電流の小さいSBDの選定** SBDのリーク電流が原因の場合、リーク電流仕様の小さい製品に変更することで軽減できます。 温度条件等によっては、品番変更だけでは完全な対策は難しいのでSBDから理想ダイオードやPNダイオードに変更しなければいけない場合もあります。 ## **3. その他の原因** * **外部ノイズによる誤動作** 外部ノイズが大きい環境では、FB端子や出力ラインにノイズが乗ることでICが誤動作し、出力電圧が設定値通りに制御されない場合があります。 * **PCBレイアウトの問題** パスコンの配置が遠い、フィードバックラインがノイズ源の近くを通っているなど、レイアウトが適切でないと出力電圧が設定値通りに制御されない場合があります。データシートの推奨レイアウトを参考に見直してください。 ## **まとめ** | 原因 | 確認・対策 | |---|---| | **FB抵抗の実装ミス・値ミス** | 抵抗値・半田をテスターで確認 | | **出力側からの電流流入** | リーク電流の小さいSBDへの変更、VOUT-GND間への負荷抵抗追加 | | **外部ノイズ・レイアウト問題** | パスコン配置の見直し・フィードバックラインの引き回し改善 |
回路図が正しいか自信がありません。どのように確認したらいいですか?
「回路図を書いたけれど、本当にこれで合っているか不安」「データシートの通りに設計したつもりだけど確信が持てない」「IC個別の周辺回路は問題ないが、システム全体として問題ないか不安」——回路図の確認は、設計経験が浅いうちは特に難しく感じるものです。 ここでは電源回路を中心に、回路図の自己チェックポイントをまとめます。 ## **1. ICの品番・仕様の確認** そもそも使用するICが要件に合っているか確認しましょう。 * 入力電圧範囲・出力電圧範囲が使用条件を満たしているか * 最大出力電流が要求仕様を満たしているか(マージンも含めて) * システム要件を満たす特性・機能を持っているか * 動作温度範囲が使用環境をカバーしているか * パッケージ・実装方法が基板設計の制約に合っているか ## **2. データシートとの照合・定数の確認** データシートに記載されている推奨回路・動作条件と回路図を照らし合わせます。 * 推奨回路(アプリケーション回路)と異なる接続がないか * 回路図の端子番号・名称が間違えていないか * 絶対最大定格を超えた電圧・電流が印加される条件がないか * 端子の処理(放熱板・NC端子・GND・プルアップ等)が適切か * 起動シーケンス・イネーブル信号のタイミング要件を満たしているか * 出力電圧設定の分圧抵抗値が正しく計算されているか * コイルのインダクタンス値・定格電流がデータシートの推奨範囲内か * 入出力コンデンサの容量・耐圧・種類がデータシートの推奨範囲内か * 電流制限・タイマー設定など、各種定数の計算に誤りがないか ## **3. IC以外の周辺回路の確認** ICだけでなく、周辺回路全体も確認しましょう。 * 大容量の入力容量を接続した場合に、前段の電源ICは正常に動作するか * 電源投入シーケンス・パワーオンリセットが意図通りに動作するか * 保護回路(過電流・逆接・過電圧等)が正しく機能するか * 複数電源構成の場合、各電源の起動順序・タイミングに問題がないか * 後段デバイスへの電圧・電流が仕様範囲内に収まっているか * 電圧・定格電圧が異なるラインの信号線に、適切なレベルシフト回路を用いているか ## **4. それでも不安な場合** 自己チェックだけでは見落としが生じることがあります。 特に経験が少ない場合や、初めて扱うICを使う場合は、第三者によるレビューが有効です。 TOREXでは自社製品の周辺回路にとどまらず、電源回路全体の回路図レビューサポートも承っています。『この回路で問題ないか確認してほしい』『最適なIC選定について相談したい』といったご要望もお気軽にお問い合わせください。
基板の汚染・湿気・人体接触による回路特性への影響と対策
試作基板の評価時や量産品の市場環境下において、設計上は問題がないにもかかわらず動作不良が発生することがあります。 主な原因は、**フラックス残渣・湿気・汚染物質による絶縁抵抗低下(リーク)** や、**人体由来の寄生成分**、そして過酷な環境下での **腐食(塩害・ガス硫化)** です。 ## 1. 絶縁抵抗の低下とリーク電流 基板上の残留物や湿気は、意図しない電流の通り道(リークパス)を作ります。 * **原因** * **フラックス残渣・汚染** 洗浄不足により残ったフラックスは導電性を持つことがあります。 * **湿気** 高湿度環境では基板表面に微細な水膜が形成されます。 特に不純物が混ざるとイオン化し、絶縁抵抗が桁違いに低下します。 * **回路特性への影響例** * **出力電圧のずれ** FB抵抗に高抵抗値(例:200kΩ〜MΩオーダー)を使用している場合、微小なリーク電流が分圧比を乱し、出力電圧が変動します。 * **消費電流の増加** リークパスが電源ライン間に形成されると、実測消費電流が増加し、省電力設計が損なわれます。 ## 2. 人体の寄生成分による影響 人体は数kΩ〜数10kΩの抵抗と、数百pF程度の容量を持っています。 評価中に素手で回路に触れると、これらが回路に対して並列に接続された状態となります。高抵抗回路ではこの影響が顕著で、触れている間だけ動作が変わる「再現性のないトラブル」の主要因となります。 ## 3. 環境汚染物質による「腐食」リスク(量産設計) 量産環境では、単なるリークを超えた物理的な破壊要因を考慮する必要があります。 * **塩害(塩分付着)** 海沿いだけでなく道路の凍結防止剤なども原因となります。 塩分は極めて吸湿性が高く、低湿度でも液膜を形成して「電食(電気化学腐食)」を促進し、パターンを断線させます。 * **硫化・腐食性ガス** 温泉地や工場等に存在する硫黄成分は、金属端子やはんだ部を黒く変色させ、導電性悪化や接触不良、最悪の場合は端子の金属腐食を引き起こします。これらは**洗浄では除去できず、空気に触れる限り進行します**。 ## 4. 対策 ### 試作時 * **フラックスの徹底洗浄** 特に高抵抗回路周辺は念入りに洗浄・乾燥を行ってください。 * **接触回避** 基板は手袋を着用し、回路部には極力触れないようにします。 * **評価環境の管理** 湿度管理を徹底し、結露が発生しないよう配慮してください。 ### 量産時 * **防湿コーティング** シリコン系・アクリル系等のコーティング剤で基板を覆い、湿気や汚染物質を遮断します。 * **ポッティング・密閉筐体** 腐食性ガスや塩害が懸念される環境では、コーティングだけでは不十分な場合があります。密閉容器への封入や、樹脂によるポッティングで基板全体を物理的に隔離することを検討してください。 * **耐環境部品の選定** 耐硫化抵抗器の使用など、環境耐性の高い部品を選定します。 ## まとめ 1. フラックス・湿気・汚染はリークパスを作り、特に高抵抗回路で誤差を引き起こす 2. 人体も回路へ影響を与えるため、素手での接触は厳禁 3. 塩分や腐食性ガスは「リーク」だけでなく「腐食による断線」を引き起こすため、量産設計では対策が必須 4. 試作時は洗浄と保護を徹底し、量産時は環境に応じたコーティングや密閉化を検討すること
実装した部品・ICが正しい部品か簡易確認する方法
試作基板が届いたが動作しない、回路図や部品表と実装内容が合っているか不安、購入した部品が本当に正しいか確かめたい——そのような場面で役立つ確認方法を紹介します。 特に初期試作では、部品の定数ミスや極性ミスが動作不良の原因になるケースも多く、まず実装部品を確認することが問題解決の近道になります。 外観確認とテスターを使った確認の2段階で行うのが基本です。 ## 1. 目視確認 まず外観を確認します。顕微鏡やスマホのカメラを活用すると細かい印字も確認しやすくなります。 * **品番・マーキングの確認** ICには品番を示すマーキングが印字されています。抵抗・コンデンサには定数を示すマーキングが印字されていれば、データシートやマーキング表と照合して、正しい部品が実装されているか確認します。
* **極性・向きの確認** ICや受動部品には極性・向きがあります。シルク印刷の切り欠きマークや1番ピンマークと、部品本体の印字・形状が合っているか確認します。電解コンデンサやダイオードなど極性がある部品も同様に確認します。 * **パッケージの確認** 部品の外形・パッケージが指定品と一致しているか確認します。同じ品番でもパッケージが異なる場合があるため注意が必要です。 ## 2. テスターで確認 外観確認で問題がない場合は、テスターを使って電気的な特性を確認します。**必ず電子機器の電源をオフにした状態で測定してください。** また並列に接続された部品や回路構成によっては正確な値が測定できない場合があります。 * **抵抗の確認** 抵抗モードで抵抗値を測定し、回路図の定数と一致しているか確認します。 * **コンデンサの確認** 容量モードで容量値を測定し、回路図の定数と一致しているか確認します。 * **ダイオード向きの確認** ダイオードチェックモードで順方向電圧(0.3V〜0.7V程度)が正しい向きで測定されるか確認します。 逆向きに実装されている場合は導通しません。 ## 3. 偽物・粗悪品に注意 正規代理店以外のルートで購入した部品には、偽物や粗悪品が混入している可能性があります。外観やマーキングが本物と同一でも電気的特性が全く異なる場合があり、目視やテスターだけでは判別できないケースもあります。 部品は**メーカーの公式サイトに記載されている正規代理店**からの購入を推奨します。
昇圧DC/DCや反転DC/DCで出力電流が引けなくなりました。原因と確認方法を教えてください
昇圧DC/DCコンバータや反転DC/DCコンバータは、データシートに記載された最大出力電流(IOUT max)を実際の回路で常に引けるとは限りません。試作時には動作していたのに量産品で電流が引けない、低温や電池末期になると動作しなくなる、といったトラブルは、複数の制限要素が重なって発生することが多いです。この記事では、昇圧DC/DCや反転DC/DCの最大出力電流を制限する要因と、量産設計で注意すべき点を解説します。 ## 最大出力電流を制限する要素 昇圧DC/DCや反転DC/DCの最大出力電流は、IC単体の特性だけでなく、周辺部品や入力経路の抵抗成分・温度条件など複数の要因によって制限されます。 * **ピーク電流制限** ICに内蔵されたピーク電流制限回路の動作電流値です。コイル電流がILIMに達するとスイッチングがOFFになり、これ以上の出力電流が取り出せなくなります。 * **最大Duty比(Duty max)** 昇圧比(VOUT/VIN)が高いほどDutyが大きくなります。Duty maxに達すると、それ以上エネルギーをコイルに蓄えられなくなり出力電流が制限されます。VINが低下するほど制限が効きやすくなります。 * **コイルのDCRと電流飽和特性(Isat)** コイルの直流抵抗(DCR)による電圧降下は効率低下と出力電流の低下を招きます。またコイルの電流飽和特性(Isat)を超えるとインダクタンスが急激に低下し、電流制限が正常に機能しなくなります。 * **ICのドライバオン抵抗** スイッチングFETのオン抵抗による損失が効率を低下させ、結果として最大出力電流が低下します。 * **入力経路の抵抗成分** 入力ラインに入っているヒューズ・ポリヒューズ・ロードスイッチ・FETなどの抵抗成分による電圧降下が実効的なVINを低下させます。電池駆動の場合は電池の内部抵抗も加わります。これらは見落とされやすいですが、大電流時には無視できない電圧降下になります。 * **最大ジャンクション温度(Tj max)** ICの接合部温度がTj maxに近づくと、サーマルシャットダウンや保護動作が動作します。高温環境や連続大電流動作時は熱設計の確認が必要です。 ## なぜ量産で問題が顕在化するのか 試作では動作していても量産で問題が出るケースの多くは、**TYP(標準)条件だけで設計・確認していたことが原因**です。 ICや受動部品には製造ばらつきがあり、量産品では以下のようなワースト条件が重なることがあります: * ILIMがMin側にばらつく * コイルのDCRがMax側にばらつく * 電池の内部抵抗が高い個体・低温・放電末期の組み合わせ * ヒューズやロードスイッチの抵抗がMax側にばらつく * 高温環境でオン抵抗が増大する これらのワースト条件を全て考慮して設計しないと、量産品の一部で電流が引けず動作しない機器が発生するリスクがあります。**TYP値だけで確認・提示されている場合は必ずワースト条件での確認を行ってください。** ICや周辺部品のばらつき仕様については、データシートに記載されている場合があります。記載がない場合はメーカに確認してください。
## 算出方法 上記の制限要素はすべて相互に影響し合うため、手計算でワースト条件を正確に算出するのは困難です。シミュレーションツールを用いて算出することを推奨します。 TORexでは昇圧DC/DCの動作シミュレーションが行えるWEB Simを提供しています。入力電圧・出力電圧・コイル定数などの条件を入力することで、最大出力電流の概算値を確認できます。 [TOREX WEB Sim(DC/DCシミュレーション)](https://product.torexsemi.com/ja/design-support/dcdc-simulation)
## まとめ - 昇圧DC/DCや反転DC/DCの最大出力電流はILIM・Duty max・コイルDCR/Isat・ICオン抵抗・入力経路の抵抗・Tj制約など複数の要因で制限される - 電池内部抵抗・ヒューズ・ロードスイッチなど入力経路の抵抗成分も見落とさないこと - TYP条件だけでなく、ICや部品のばらつきを考慮したワースト条件で必ず確認する - ワースト条件の算出はシミュレーションツールの活用が現実的
昇圧DC/DC+LDOで実現する安価な昇降圧電源
昇降圧DC/DCコンバータは入力電圧が出力電圧より高くても低くても安定した出力を供給できますが、専用ICは高価で製品ラインアップも少ないのが実情です。出力電流が小さい用途であれば、安価な昇圧DC/DC+LDOの組み合わせで昇降圧動作を実現できます。 この記事では、その構成の原理と注意点を解説します。 ## 動作原理 昇圧DC/DCで入力電圧をLDOの最低動作電圧以上に昇圧します。その後段にLDOを配置して目的の出力電圧に降圧・安定化させます。
* **VIN < VOUT**:昇圧DC/DCが動作し、LDOが降圧・安定化 * **VOUT < VIN**:昇圧DC/DCが昇圧動作を停止(パススルーまたはVINをそのまま出力)、LDOが降圧・安定化 いずれの条件でもLDOが出力電圧を安定化するため、入力電圧によらず安定したVOUTが得られます。 ## メリット * **安価・入手性が良い** 昇圧DC/DCとLDOはいずれも製品ラインアップが豊富で、専用の昇降圧ICより安価に入手できます。 複数のメーカから同等品が供給されているため、代替品の確保がしやすいです。 * **出力リップルが小さい** LDOが出力段に入るため、昇圧DC/DCのリップル電圧がLDOのPSRRによって減衰・遮断されます。 ノイズに敏感なアナログ回路やRF回路の電源に適しています。 * **組み合わせの自由度が高い** 昇圧DC/DCとLDOをそれぞれ独立して選定できるため、低消費電流・高PSRR・低ドロップアウトなど用途に応じた最適な組み合わせが可能です。 ## 注意事項 * **昇降圧DC/DCと比べて効率が低い** LDOで損失が発生するため、昇降圧DC/DCと比べて効率が低くなる傾向にあります。 * **出力電流が小さい用途に限られる** LDOのドロップアウト電圧分の損失が常時発生します。 また昇圧DC/DCの出力電圧(VBOOST)とVOUTの差がLDOの損失となるため、小電流用途(目安:数十〜数百mA以下)に適した構成です。 * **昇圧DC/DCの出力電圧設定** 昇圧DC/DCの出力電圧はVOUT+LDO ドロップアウト電圧を上回るよう設定します。 昇圧DC/DCの出力電圧や、LDOの入出力電位差がばらついたときでも昇圧DC/DC 出力>VOUT+LDO ドロップアウト電圧が成立することを確認してください。 $$V_{BOOST} \geq V_{OUT} + V_{LDO} + \alpha$$ - $V_{LDO}$:LDOのドロップアウト電圧 - $\alpha$:余裕分(温度・ばらつき考慮) * **昇圧DC/DCのパススルー動作の確認** 入力電圧が昇圧DC/DCの設定電圧より高いときに、その状態で出力側に電流が供給されるか または 電流が供給することが許可されている製品か確認してください。 ## まとめ - 昇圧DC/DC+LDOの組み合わせで、専用昇降圧ICを使わずに昇降圧動作を実現できる - 小電流用途・低ノイズ要求での選択肢として有効 - VBOOSTはLDOの最低動作電圧を常に上回るよう設定する - 昇圧DC/DCのパススルー動作の有無と、大電流時の効率低下に注意する
正負電源構成におけるLDO起動不良の原因と対策
## 現象 オペアンプなどの正負電源(±電源)構成において、プラス側またはマイナス側のLDOが起動しない、または出力電圧が立ち上がらない現象が発生することがあります。 ## 原因:フの字型電流制限と逆極性電圧の組み合わせ この現象の主な原因は、**LDOの出力端子に逆極性の電圧が印加された状態でフの字型電流制限が動作すること**です。 - **正側LDO** マイナス側電源が先に立ち上がると、オペアンプ等の負荷を介してプラス側LDOの出力端子にマイナス電圧が印加されます。 - **負側LDO** プラス側電源が先に立ち上がると、オペアンプ等の負荷を介してマイナス側LDOの出力端子にプラス電圧が印加されます。 いずれの場合も、フの字型電流制限は出力電圧が低下するほど電流制限値(電流供給能力)が小さくなる特性を持ちます。この特性により、正側LDOは出力電圧がマイナスになると、負側LDOは出力電圧がプラス側になると電流供給能力がほぼゼロとなり、起動不良が発生します。 フの字型電流制限のメカニズムの詳細は「LDOが起動しません。フの字型電流制限とマイナス電圧が原因の場合の対策を教えてください」を参照してください。
## 両方がフの字型の場合はさらに注意が必要 プラス側・マイナス側の両方にフの字型電流制限のLDOを使用している場合、片方が先に起動するとオペアンプ等の出力が先に起動した電源側に引っ張られます。これにより、まだ起動していないもう一方のLDO出力端子には逆極性の電圧がさらに強く印加されることになり、**起動不良がより発生しやすくなります**。 この構成では、どちらのLDOが先に起動しても相互に影響し合うため、**両電源を同時に起動することが重要**です。 ## 対策 * **正負電源を同時に起動する** プラス側・マイナス側のLDOを同時に起動するようシーケンスを設計します。 EN端子を共通の制御信号で同時にアサートする方法が一般的です。ただし実際には部品のばらつきや配線遅延により起動タイミングにわずかなずれが生じる場合があるため、そのずれの間に起動不良が発生しないかを実機で確認することが重要です。 * **フの字+垂下型または垂下型電流制限のICへの変更** フの字型のみの電流制限では逆極性電圧が印加されると電流供給能力が著しく低下します。 **フの字+垂下型**または**垂下型**の電流制限を持つLDOへの変更が根本的な対策となります。 これらの方式では逆極性電圧が印加された状態でも電流供給能力がゼロに近づきにくく、起動不良が発生しにくくなります。 ## まとめ - 正負電源構成では起動シーケンスのタイミングにより、各LDO出力端子に逆極性の電圧が印加される場合がある - フの字型電流制限のLDOは逆極性電圧印加時に電流供給能力がほぼゼロになり起動不良が発生する - 両方がフの字型の場合、片方の先行起動がもう一方の起動不良をさらに悪化させる - 対策は正負電源の同時起動、またはフの字+垂下型/垂下型電流制限のICへの変更
試作時に表面実装部品の実装が上手くいきません。簡単に実装する方法を教えて下さい。
QFNやDFNなどのリードレスパッケージは手半田での実装が難しく、慣れるまで作業工数や低歩留まりに悩まされることになります。またBGA(Ball Grid Array)やWLP(Wafer Level Package)など、底面に電極が並ぶパッケージはさらに困難です。 試作時にこれらの部品を実装する方法として、**クリーム半田+リフロー**を使った方法が有効です。 ## **1. 必要なもの** * **クリーム半田**:ペースト状の半田。試作用途であれば少量で入手可能です。 * **メタルマスク or つまようじ等**:クリーム半田を塗布するための道具 * **簡易リフロー装置 or ホットプレート**:半田を溶かすための加熱装置 ## **2. クリーム半田の塗布方法** ### **方法A:メタルマスクを使う(推奨)** 基板と同時にメタルマスクを発注する方法です。 中国の基板製造業者等では、試作用のフレームレス メタルマスクを安価に発注できます。 メタルマスクを基板に位置合わせして固定し、クリーム半田をヘラで塗布します。 ヘラはメタルマスク用の専用のものでなくてもホームセンターで売っているプラスチックタイプのものや、不要なカード(クレジットカードのようなもの)でも代用できます。 手塗りと比べて、均一な厚さでクリーム半田を塗布でき、作業工数が削減できます。 半田量が不適切だった場合は、つまようじや針等で半田量の調整を行うと、歩留りが改善します。
### **方法B:手塗り** メタルマスクがない場合は、つまようじや針等を使ってパッドにクリーム半田を手塗りします。 メタルマスクほど均一にはなりませんが、試作の少量実装であれば十分実用的です。 塗りすぎるとブリッジの原因になるため、半田量を調整して塗布してください。 ## **3. 部品の搭載** クリーム半田を塗布したら、ピンセットで部品を搭載します。クリーム半田の粘性で部品が仮固定されます。 細ピッチICは方向・ピン1の向きに注意してください。 ## **4. リフロー(加熱)** ### **簡易リフロー装置** 試作向けの小型リフロー装置が市販されています。温度プロファイルを設定できるものが多く、安定した結果が得られます。
### **ホットプレート** ホットプレートでも代用できます。基板をホットプレートに乗せて加熱し、クリーム半田が溶けて部品が自己整合(セルフアライメント)で正しい位置に収まるのを確認します。 温度の目安はクリーム半田の仕様に依存しますが、鉛フリー半田の場合は概ね220〜250℃程度です。加熱しすぎるとパッドやレジストが傷むため注意してください。 ## **5. 実装後の確認** リフロー後は目視または顕微鏡でブリッジや半田不足がないか確認してください。確認方法については「ICの半田付けが正常にできているか確認する方法」の記事も参考にしてください。 ## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **クリーム半田の塗布** | メタルマスク(推奨)またはつまようじ等で手塗り | | **加熱方法** | 簡易リフロー装置またはホットプレート | | **実装後の確認** | 目視・顕微鏡でブリッジ・半田不足をチェック |
起動時のオーバーシュートのメカニズムと対策:入力電圧の立ち上がりが遅い場合
電源ICの起動時に出力電圧が設定電圧を超えてオーバーシュートする現象が発生することがあります。 オーバーシュートの原因はいくつかありますが、本記事では**入力電圧(VIN)の立ち上がりが遅い場合**のメカニズムと対策について解説します。 ## 1. オーバーシュートが発生するメカニズム 入力電圧(VIN)の立ち上がりが遅い状況で、EN端子をVIN端子に接続(直結)している場合、以下のメカニズムでオーバーシュートが発生します。 ### フェーズ1:起動開始(VIN不足の状態) 1. VINが0Vからゆっくり上昇し、ICの動作開始電圧に到達。 2. ICがソフトスタートを開始するが、VINが低いため目標電圧(VOUT)まで到達できない。 3. フィードバック制御が「出力不足」を検出し、出力を上げようとするDC/DCならDutyを最大へ、LDOならドライバのゲート電圧を上昇させる)。 ### フェーズ2:VINの上昇と制御の飽和 4. VINが上昇し、出力電圧が設定値付近まで到達し始める。 5. しかし、IC内部の制御回路は「まだ出力が足りない」と判断した状態(Duty最大等)を維持している。 ### フェーズ3:オーバーシュート発生 6. VINが十分に供給された瞬間、最大Dutyのままエネルギーが一気に供給される。 7. その結果、設定電圧を超えて出力が跳ね上がる(オーバーシュートが発生)。 ※なお、フィードバックループの応答速度はICによって異なるため、過渡応答特性の良い製品ほどオーバーシュートが出にくい傾向があります。
## 2. 対策 VINが十分に立ち上がってから電源ICを起動させることが基本的な対策です。 システム側でCE/EN端子を制御できない場合は、以下の手法が有効です。 * **RCディレイ回路でCE/EN端子の起動を遅らせる** CE/EN端子にRCディレイ回路を挿入し、VINが十分に立ち上がった後に電源ICを起動させます。回路が簡単ですが、VINの立ち上がり時間が変動する場合は遅延時間の調整が必要です。
* **ソフトスタート時間を長くする** 外付けのソフトスタート設定機能がある場合、VINの立ち上がり時間より十分に長い時間設定にすることで、VINが低い期間にソフトスタート期間を完了させないようにします。 * **電圧検出器で起動タイミングを制御する** 電圧検出IC(ボルテージディテクタ)でVINを監視し、VINがある電圧に達した後にCE/EN端子をアサートします。VINの立ち上がり時間が変動する場合でも確実に制御可能です。 * **出力容量(CL)を大きくする** CLを大きくすることで、オーバーシュート時に電荷を吸収し電圧上昇を抑制できます。 ただし、CLが大きすぎると起動時間が長くなるだけでなく、位相余裕が悪化して発振等の不安定動作を招く恐れがあります。。 ## まとめ 1. EN端子をVINに接続している場合、VINの立ち上がりが遅いとオーバーシュートが発生しやすい 2. VINが低い間に制御量が飽和し、VINが十分に上昇した瞬間に過剰なエネルギーが供給される 3. 基本的な対策は「VINが十分に立ち上がってからICを起動させる」こと 4. RCディレイ回路、電圧検出器、ソフトスタート調整、CL増量が有効な対策手法となる
起動直後に電源ICが停止します。対策を教えて下さい。
電源ICが起動直後に停止してしまう原因のひとつに、**ソフトスタート(起動モード)中に出力電圧が設定電圧まで到達できず、起動モード終了時に保護機能(短絡保護・電流制限・積分ラッチ)が動作してしまう**ケースがあります。 ## 1. 起動不良の原因 出力コンデンサ(CL)が大きい場合や、ソフトスタート時間(tss)が短い場合、起動モード中に出力電圧が設定出力電圧まで到達できないことがあります。 出力電圧が低い状態で起動モードが終了すると、下記のような保護機能が動作する可能性があります。 保護機能の動作については、使用する製品により異なるので、各製品のデータシートを確認してください。 * **短絡保護** 出力電圧が異常に低いと判断し、動作停止する * **電流制限/積分ラッチ** 出力電圧が低いため、設定出力電圧まで上昇させるためにドライバ電流を電流制限まで上昇させる。 この状態が一定期間継続することで、ICが動作停止する
## 2. 対策 基本的な対策方針は起動モード中に、出力電圧を設定出力電圧まで上昇させることです。 そのために、下記の対策を行います。 ### ソフトスタート時間を長くする ソフトスタート時間が外調できる製品では、外付けCSS(ソフトスタートコンデンサ)でtssを長く設定することで、起動モード中に出力電圧が設定電圧まで到達できるよう調整してください。以下の式を目安にtssの下限値を確認します。 $$t_{ss} \geq \frac{C_L \times V_{OUT}}{I_{OUTmax} - I_{OUT}}$$ ここで$I_{OUT}$​は起動途中に負荷回路が引く電流です。 ### 出力コンデンサ(CL)を見直す tssが固定の製品では、以下の式を目安にCLの上限値を確認します。 $$C_L \leq \frac{(I_{OUTmax} - I_{OUT}) \times t_{ss}}{V_{OUT}}$$ CLがこの値を超えている場合は容量を小さくすることを検討してください。 ただしCLは出力電圧の安定性に影響するため、データシートの推奨範囲内で調整してください。 ## まとめ 1. CLが大きい・tssが短いと、起動モード中に出力電圧が設定出力電圧まで到達できない場合がある 2. 起動モード終了時に保護機能が動作して停止することがある 3. ソフトスタートが外調できる製品ではtssを長く設定する 4. tssが固定の場合はCLの上限目安値を確認し、必要に応じてCLを見直す
電圧検出器(VD)で負電圧ラインを監視する方法
# 電圧検出器(VD)で負電圧ラインを監視する方法 オペアンプや一部のアナログ回路では、正負両電源が必要なケースがあります。このような回路では正電圧だけでなく負電圧ラインの電圧監視も重要ですが、一般的な電圧検出器(VD)は正電圧の検出を前提に設計されています。 この記事では、VDを使って負電圧ラインを監視するための回路と設計上の注意点を解説します。 ## 負電圧をVDで検出する際の基本的な考え方 一般的なVDは、電圧監視端子の電圧が設定した閾値を下回ったときにリセット信号を出力します。 負電圧をそのまま電圧監視端子に入力することはできないため、**正電源(VREF)と負電圧ラインの間に分圧抵抗を挿入し、分圧点の電位を電圧監視端子に入力する**方法を使います。 ## 必要な条件:VSEN端子分離品の使用 分圧抵抗を用いた負電圧監視では、**VDの電源端子と電圧監視端子(VSEN端子)が分離されている製品**を使用する必要があります。 電源供給と監視が同一端子の製品では、この構成を取ることができません。 また、通常のリセット用途と異なり、負電圧監視では「負電圧の絶対値が下がった(負電圧が浅くなった)とき」に検出信号が出力されます。論理が通常と反転するため、**検出"H"論理出力(電圧低下時にHigh出力)** の製品を使用すると回路がシンプルになります。 ## 回路構成と設計計算 ここでは、センス分離品の電圧検出器 XC6132を例に回路・定数選定を行います。
検出したい負電圧の閾値を $-V_{SEN}$、VDの検出閾値電圧を $V_{D}$、正電源電圧を $V_{REF}$ とすると: $$V_{D} = (V_{REF} + V_{SEN}) \times \frac{R_2}{R_1 + R_2} - V_{SEN}$$ この式を用いて、R1・R2を決定します。検出電圧と解除電圧のヒステリシス幅を調整する場合は、R3を調整します。 詳細な計算はエクセルの計算ツールをご活用下さい。 定数選定ツールについては、"XC6132 製品ページ" → "技術資料"からDLください。 [XC6132製品ページ](https://product.torexsemi.com/ja/series/xc6132) ## 設計時の注意事項 * **VREFのばらつきによる精度悪化** VREFが変動すると分圧点の電位も変動するため、監視電圧の精度が悪化します。 高精度な負電圧監視が必要な場合は、VREFにLDO等の高精度電源を使用してください。 * **VSEN端子の絶対最大定格** VREF電圧の喪失など、VSEN端子がマイナス電位に引き込まれると絶対最大定格を超えます。 VSEN端子とGND間にSBD(ショットキーバリアダイオード)を挿入してVSEN端子電圧の定格を超えないようにしてください。 * **VSEN端子-GND間 SBDの選定** SBDのリーク電流は精度悪化の原因になります。**低リークのSBDを選定**してください。 * **分圧抵抗値の選定** 分圧抵抗が大きすぎると、VSEN端子の端子電流やSBDのリーク電流による誤差が増加します。 必要な精度を考慮して抵抗値を選定してください。 ## まとめ - 一般的なVDは正電圧検出が前提のため、負電圧をそのまま入力することはできない - 分圧抵抗を使った負電圧監視にはVSEN端子分離品が必要 - 負電圧の絶対値が下がったときに検出するため、検出"H"論理出力品を使用すると回路がシンプルになる - VSEN端子保護のためGND-VSEN間にSBDを挿入する - SBDの高温リーク電流・VREFのばらつき・分圧抵抗値の選定が精度に影響する - ヒステリシス幅を含めた設計計算は部品選定ツールを活用する
電子回路設計におけるプルアップ・プルダウン抵抗の選定方法と注意点
Nchオープンドレイン出力にプルアップ抵抗を接続する場合や、誤動作防止用のプルダウン抵抗を追加する場合に、データシートに具体的な抵抗値が指定されていないことがあります。ここでは、そのような場面でのプルアップ・プルダウン抵抗値の選定指針を説明します。 ## Nchオープンドレインのプルアップ抵抗 ### 役割 Nchオープンドレイン出力は、ドライバFETがONのとき出力をGNDに引き下げますが、OFFのときは出力がハイインピーダンスになります。このため、外部にプルアップ抵抗を接続して出力"H"電圧を確保する必要があります。 I2C等のオープンドレイン通信方式では、信号をなまりなく届けるためにプルアップ抵抗値の選定が特に重要になります。
### 選定方法 基本的な前提は、**"H", "L"時に後段デバイスの論理閾値を満たすこと**です。その上で消費電流・耐ノイズ性等を考慮して選定します。 プルアップ抵抗値が小さすぎると、FETがON時にRONとRpullの電圧分割により出力"L"電圧が浮き上がります。 逆に抵抗値が大きすぎると、FETがOFF時にリーク電流によるRpullでの電圧降下で出力"H"電圧が低下します。 一般的に**1kΩ〜数100kΩ程度**を目安に、以下の計算で"H", "L"を満たすか確認します。 I2C等のオープンドレイン通信方式では、速度モードごとにプルアップ抵抗値が規定されている場合があります。通信用途では**ICのデータシートまたは規格の推奨値に従って**選定してください。 #### 出力"L"電圧の計算 ドライバFETがONのとき、プルアップ抵抗RpullとFETのON抵抗RONで電圧分割が発生します。 $$V_{OL} = V_{pull} \times \frac{R_{ON}}{R_{pull} + R_{ON}}$$ * $V_{pull}$:プルアップ先の電圧 * $R_{pull}$:プルアップ抵抗値 * $R_{ON}$:ドライバFETのON抵抗 RONはデータシートの電気的特性から以下のように算出できます: $$R_{ON} = \frac{V_{OL}}{I_{OL}}$$ **計算例)** Vpull = 1.8V、Rpull = 10kΩ、RON = 120Ω の場合 $$V_{OL} = 1.8\text{V} \times \frac{120\Omega}{10\text{k}\Omega + 120\Omega} \approx 21\text{mV}$$ #### 出力"H"電圧の計算 ドライバFETがOFFのとき、FETのリーク電流ILEAKがプルアップ抵抗に流れ、電圧降下が発生します。 $$V_{OH} = V_{pull} - R_{pull} \times I_{LEAK}$$ * $V_{pull}$:プルアップ先の電圧 * $R_{pull}$:プルアップ抵抗値 * $I_{LEAK}$:ドライバFETのリーク電流 **計算例)** Vpull = 1.8V、Rpull = 100kΩ、ILEAK = 0.1μA の場合 $$V_{OH} = 1.8\text{V} - 100\text{k}\Omega \times 0.1\mu\text{A} = 1.79\text{V}$$ ### 注意事項 * **後段のRC回路を駆動する場合** (シーケンス制御等)はRC時定数による駆動能力も考慮が必要なため、別途 抵抗値を検討してください * **消費電流** "L"時にプルアップ抵抗に電流が流れるため、低消費電力が必要なアプリケーションでは抵抗値を高めに設定してください * **高速通信ライン(I2C等)** プルアップ抵抗値が高すぎると信号の立上りがなまり、通信エラーの原因になります。 I2Cなどの通信用途では使用するICのリファレンス回路や規格の推奨値に従って選定してください * **プルアップ電圧(Vpull)** ICの絶対最大定格以内に収まるよう注意してください ## 誤動作防止用のプルアップ抵抗・プルダウン抵抗 ### 役割 入力端子や信号線がハイインピーダンス状態になった際に、ノイズやリーク電流によって誤った信号にならないように、プルアップ抵抗・プルダウン抵抗を入れる場合があります。信号入力ラインへのプルアップ・プルダウンや、ドライバ回路の駆動用FETのゲート部などの様々な箇所で使われます。 ### 選定方法 プルアップ・プルダウン抵抗値は、**リーク電流・ノイズに負けない**低い値を選定します。 ただし抵抗値が小さすぎると消費電流が増加するため、低消費電力が必要なアプリケーションでは高め(100kΩ程度)に設定し、ノイズ・リーク電流との兼ね合いで決定します。 また極端に抵抗値が低すぎる場合は、そのプルアップ・プルダウン抵抗により信号を駆動できない・信号がなまることもあるので注意が必要です。 ## まとめ - Nchオープンドレイン出力には外部プルアップ抵抗が必要。一般的に1kΩ〜数100kΩ程度 - 選定の前提は"H","L"時に後段デバイスの論理閾値を満たすこと - 出力"L"電圧はRONとRpullの電圧分割で決まる。Rpullが小さいほど"L"電圧が上昇する - 出力"H"電圧はリーク電流×Rpullの電圧降下で決まる。Rpullが大きいほど"H"電圧が低下する - 高速通信ライン(I2C等)ではプルアップ抵抗が高すぎると信号がなまるため、ICのリファレンスや規格の推奨値に従うこと - 誤動作防止用のプルダウン抵抗はリーク電流・ノイズに負けない値を選定し、消費電流とのバランスで決める
電子負荷のCC(定電流)モードで評価すると正常に起動しません。なぜですか?
電源ICの評価において、電子負荷を活用している人も多いかと思います。電源ICの評価に電子負荷を使用する場合、CC(定電流)モードで接続すると「ICが起動しない」「出力電圧が正常に上がらない」「保護回路が動作してしまう」といった問題が発生することがあります。 これは設計や実装の問題ではなく、**電子負荷のCCモードと電源ICの動作が干渉している**ことが原因である可能性があります。 また電源ICの起動シーケンスや保護機能によっては、ICが動作停止や誤動作する可能性もあります。 ## **1. 電子負荷の動作モード** 電子負荷には主に以下の動作モードがあります。 * **CC(定電流)モード** 設定した電流値を一定に保つように動作します。出力電圧が変化しても、電子負荷は設定電流を流し続けようとします * **CR(定抵抗)モード** 設定した抵抗値に相当する電流を流します。出力電圧に比例した電流が流れるため、実際の抵抗負荷に近い挙動になります * **CV(定電圧)モード** 設定した電圧値に収束するように動作します このうち**CCモードは「電圧によらず一定電流を流す」という動作**のため、電源ICの起動シーケンスや保護機能と干渉するケースがあります。 ## **2. CCモードで問題が起きる原因** ### **起動時の電流制限との干渉** 電源ICは起動時に出力電圧を上昇させ、設定電圧まで上昇させていきます。 電子負荷のCCモードは、出力電圧が低い状態でも設定電流を流し続けようとします。 フォールバック型の電流制御や、起動時に電流制限値を絞っている電源ICでは、電子負荷が電流制限以上の電流を引き抜くことで出力電圧が上昇しなかったり、そのまま起動停止になる場合があります。 起動時は出力電圧0Vから動作するため、フォールドバック型の電源ICは、出力電圧が0Vに近い起動初期において、供給できる電流能力が**「短絡電流」**のレベルまで低く制限されています。ここから電圧の上昇とともに最大出力電流能力まで回復していきますが、電子負荷のCCモードがそれ以上の「設定電流」を最初から要求すると、IC側の供給能力が追いつきません。 その結果、下のグラフのように、設定出力電圧に到達する前の **「起動時の動作点」で電圧と電流のバランスが釣り合ってしまい、出力電圧が途中で止まったまま起動が完了しなくなります。**
## **3. 切り分け方法** 「CCモードが原因かどうか」を簡単に切り分けるには、**電子負荷を外して抵抗負荷(固定抵抗/可変抵抗)に置き換えて動作確認**します。抵抗負荷で正常に動作する場合は、電子負荷が原因である可能性が高いです。 次に電子負荷をCRモードに切り替えて同様に確認します。CRモードでも正常に動作する場合は、CCモード特有の挙動が干渉していることが確定できます。 なお、電子負荷の応答特性は電子負荷の機種によって異なるため、使用する機器によっては問題が再現しない場合や、逆により顕著に現れる場合があります。 ## **4. 正しい評価方法** ### **CCモードを使う場合の注意点** 定常動作時の特性評価(効率・リップル電圧など)にCCモードを使用すること自体は一般的には問題ありません。 使用する際は以下の点に注意してください。 * **起動時はCCモードをオフにする** ICが起動して出力電圧が安定してからCCモードをオンにする * **電流設定をゼロから徐々に増やす** 電子負荷によっては起動時に電流が瞬間的に設定値を超えることがあるため注意 また電子負荷の機種によっては、ノイズの混入や負荷変動時のスルーレートの違いが評価結果に影響が出る可能性があります。加えて、電子負荷の制御系とDC/DCコンバータが干渉して、電源ICが発振する場合もあるため注意が必要です。 ## **まとめ** 1. 電子負荷のCCモードは出力電圧によらず一定電流を流し続けるため、起動時に電流制限と干渉して 起動不良が発生しやすい 2. まず抵抗負荷・CRモードに置き換えて動作確認し、CCモードが原因かを切り分ける 3. 起動評価には固定抵抗/可変抵抗や電子負荷のCRモードの使用を推奨する 4. 電子負荷のCCモードを使う場合は、ICが起動・安定してから電子負荷をオンにする 5. 電子負荷のCCモードの応答特性は機種によって異なるため、電子負荷を変えると挙動が変わる場合がある
電池の内部抵抗(インピーダンス)による電圧低下と誤動作の原因・対策
# 電池の内部抵抗(インピーダンス)による電圧低下と誤動作の原因・対策 電池駆動機器の開発において、「電池残量は十分あるはずなのにICがリセットされる」「無線送信(BluetoothやWi-Fiなど)のたびにシステムが誤動作する」といったトラブルは珍しくありません。 これらの多くは、電池の「内部抵抗(インピーダンス)」に起因する瞬間的な電圧低下が原因です。 この記事では、電池の内部抵抗による電圧低下のメカニズムとその具体的な回路・ソフト側の対策について解説します。 ## 電池の内部抵抗とは 電池は理想的な電圧源ではなく、内部に必ず抵抗成分(内部抵抗)を持っています。電池から負荷回路へ電流が流れると、この内部抵抗による電圧降下(オームの法則)が発生するため、実際に回路へ供給される「電池端子電圧」は無負荷時よりも低下します。 $$V_{\text{terminal}} = V_{\text{BAT}} - I_{\text{BAT}} \times R_{\text{BAT}}$$ - $V_{\text{terminal}}$:実際の電池端子電圧 [V] - $V_{\text{BAT}}$:無負荷時の電池電圧(起電力) [V] - $I_{\text{BAT}}$:放電電流 [A] - $R_{\text{BAT}}$:電池の内部抵抗(インピーダンス) [$\Omega$] ※電池の内部抵抗は直流抵抗だけでなく、化学反応の遅れに起因する容量成分も含むため、周波数特性を持ちます。 そのため、パルス状の大電流が流れた瞬間と、継続して電流を流し続けた場合では電圧の落ち込み方が異なります。 一般的な電池では、以下の条件で内部抵抗が著しく増大するため注意が必要です。 * **低温環境下**:電解液の粘度が上がり、イオン導電率が低下するため * **放電末期(電池残量少)**:活物質の消耗や内部組成の変化によるもの * **経年劣化**:充放電サイクルの増加に伴い、内部構造が劣化するため ## 発生する主なトラブル * **瞬間的な電圧低下によるシステムリセット** 無線送信・モータ起動・LED点灯など、ミリ秒単位で大電流が流れる「パルス負荷」の瞬間に、電池端子電圧が一瞬だけ大きく落ち込みます。この落ち込みがマイコンや電源ICの動作下限電圧(UVLO閾値)を下回ると、システムに予期せぬリセットが発生します。
* **昇圧DC/DCコンバータの起動不良** 昇圧DC/DCが起動する際、出力コンデンサへの突入電流によって電池電圧がグッと落ち込みます。 昇圧DC/DCコンバータは電圧が下がると「さらに多くの入力電流を引いて電力を補おうとする」特性があるため、電池の電圧降下がさらに加速し、起動不可のループに陥ることがあります。 * **電池残量の誤判定** 電圧の高さだけで電池残量を推定している簡易的なシステムでは、負荷電流による一時的な電圧低下を「電池の寿命(消耗)」と誤判定し、まだ残量があるのにローバッテリー警告を出してしまうことがあります。 ## 確認方法 電池端子電圧と負荷電流をオシロで同時にモニタし、大電流タイミングで電池電圧が低下していないか確認します。 ## 電池電圧の低下を抑制する対策 * **$C_{IN}$(入力コンデンサ)の増量と低ESR化** 電源ラインの入力容量を増やし、瞬時のパルス大電流をコンデンサ側から放電させて補うことで、電池から引き出される電流の急峻な変化をなだらかにし、電圧の落ち込みを抑制します。 大容量化と同時に、**ESR(等価直列抵抗)が低いコンデンサ(セラミックコンデンサや低ESRのポリマーコンデンサ)を選定すること**が重要です。ESRが高いとコンデンサ自身で電圧降下が生じ、バックアップ効果が激減します。 * **低内部抵抗な電池への変更** 内部抵抗が低い電池種・グレードへの変更を検討します。 パルス放電特性はデータシートや製品仕様で確認してください。 * **ソフトウェアによる負荷ピークの低減・分散** 複数の周辺機能(無線送信、センサー計測、LED駆動など)の動作タイミングが重ならないよう、ソフト側でタイムスロットをずらして電流ピークを分散させます。また、電池電圧を事前にチェックし、低電圧時は送信出力を一時的に落とすといった制御も有効です。 ## まとめ - 電池には内部抵抗があり、「電池電流 × 内部抵抗」の分だけ必ず端子電圧が低下する - 低温・放電末期・経年劣化時には内部抵抗が急増し、トラブルが顕在化しやすい - 無線送信などのパルス大電流による瞬間的な電圧低下が、ICのリセットや起動不良を引き起こす - 対策は低ESRコンデンサによるバックアップが最も手軽。根本対策として低内部抵抗電池の選定や、ソフトによる電流ピークの分散を行う
電源端子と制御端子の電圧印加シーケンスの注意点
起動シーケンスの設計上の都合により、CE・EN・MODE・VSEL・VSEN・PG等の制御端子へ、VIN端子より先に電圧が印加されるケースがあります。 本記事では、この場合の影響と判断方法について解説します。 ## 1. VIN端子より先に制御端子へ電圧が印加される場面 複数電源を扱うシステムでは、起動シーケンスによってVIN端子への供給前に制御端子へ電圧が印加されることがあります。具体的には以下のような場面です。 * MCUやFPGAの電源が先に立ち上がり、制御端子へ電圧が印加される * VSEN端子やMODE端子が、先に立ち上がる他の電源ラインから抵抗分割等で接続されている * PG端子が、先に立ち上がる他の電源ラインへプルアップされている
## 2. 影響の判断方法 ICによってはVIN端子より先に電圧を印加しても問題ありませんが、製品によってはこれが禁止されていたり、定格保証外となったりする場合があります。この違いは、主に**制御端子のESD保護素子の有無**に起因します。 * **ESD保護素子がない場合** 内部素子のゲートへ電圧が印加されるのみで、電流経路が形成されません。このため、**VIN端子より先に電圧を印加しても問題ない**場合が多いです。 この場合、データシートの絶対最大定格には「-0.3V〜7.0V」のように絶対値で記載されており、VIN端子の状態に関わらず定格内であれば印加可能です。 * **ESD保護素子がある場合** 制御端子とVIN端子の間にESD保護素子(寄生ダイオード)が存在します。VIN端子が0V(GND)の状態で制御端子に電圧を加えると、この寄生ダイオードを通じてVINラインへ電流が流れ込みます。これにより「VIN+0.3V」の絶対最大定格を即座に超えてしまい、**ICの定格保証外となります**。
## 3. 確認方法 データシートの「絶対最大定格」項目を確認してください。 * **VIN基準の記載(例:-0.3V〜VIN+0.3V)** 制御端子とVIN端子の間にESD保護素子が存在します。**VIN端子より先に電圧を印加することはNGです。** * **独立した絶対値の記載(例:-0.3V〜7.0V)** 制御端子-VIN端子間に上記の寄生ダイオードが存在しない設計です。 VIN端子電圧の状態に関わらず、印加電圧が定格範囲内であれば、先に電圧を印加しても問題ないケースが多いです。 ## 4. 注意とメーカーへの確認 データシート上の記載から上記のように判断が可能ですが、以下の点には注意が必要です。 * **IC内部のテストモード** ESD保護素子が無くても、IC内部の回路構成やテストモードの仕様により、特定シーケンスでの電圧印加が誤動作を誘発する可能性があります。 * **製品ごとの設計思想** データシートの記載はあくまで「定格」であり、保証する「動作」とは異なる場合があります。 量産設計などでシーケンス条件が厳しい場合は、必ずメーカーへ「VIN端子より先に電圧を印加しても良いか」を個別にお問い合わせください。 ## まとめ 1. VIN端子より先に制御端子(CE/EN/MODE/VSEL/VSEN/PG等)へ電圧が印加されるケースがある 2. ESD保護素子がある場合、寄生ダイオードを経由してVINラインへ電流が流れ込むためNG 3. ESD保護素子がない場合、内部素子のゲートへの電圧印加のみとなるためOKの場合が多い 4. データシートの絶対最大定格の記載(VIN基準か、絶対値か)で判断可能だが、不明な場合はメーカーへ問い合わせること

音鳴きとは何ですか?音鳴きの原因と対策を教えてください
電子機器を動作させると、「ピー」「キーン」「ジー」といった異音が発生することがあります。これを**音鳴き**(または**音鳴り**)と呼びます。電子部品が機械的に振動し、その振動が空気を伝わって人の耳に聞こえる現象です。 ## **1. 可聴帯域とは** 人間が聴くことができる音の周波数範囲を**可聴帯域**(可聴周波数帯域)といい、個人差はありますが一般的に **20Hz ~ 20kHz** とされています。この帯域で部品が振動すると、音として聞こえる場合があります。 ## **2. 音鳴きのメカニズム** 電子機器の音鳴きは、主に基板上の2つの受動部品が振動源となって引き起こされます。 ### **コイル(インダクタ)/ トランスの音鳴き** スイッチング電源ではコイル/トランスに電流が流れると、巻き線やコアに**電磁力**が発生し、機械的な変形・振動が生じます。 この振動がコア材・ボビン・基板に伝わって音として放射されます。 コイルの音鳴きに関係する主な要因は以下のとおりです。 * **コア材の磁歪**:磁界によってコア材が微小に伸縮する現象(磁歪)により振動が発生します * **巻き線の電磁力**:電流が流れる導体間には電磁力が働き、巻き線が振動します * **コアと巻き線の共振**:コア・巻き線・封止材の機械的な固有振動数に一致すると振動が大きくなります ### **MLCC(積層セラミックコンデンサ)の音鳴き** MLCCに使用されるチタン酸バリウム系の誘電体材料は、**圧電効果**(電圧をかけると機械的に変形する性質)をもっています。 MLCCの印加電圧が変動すると、電圧変化に応じてMLCCが微小に伸縮し、振動が発生します。この振動が基板・筐体に伝わると音として聞こえます。 MLCCの音鳴きに関係する主な要因は以下のとおりです。 * **誘電体の圧電効果**:チタン酸バリウム系誘電体(X5R・X7Rなど)は圧電性が高く、音鳴きが発生しやすい * **基板との共振**:MLCCの振動が基板を励振し、基板が振動板となって音を増幅します ## **3. 可聴帯域に入る主な原因** 電圧や電流の変化が可聴帯域(20Hz ~ 20kHz)に入る場合に音鳴きが発生します。以下が主な原因です。 ### **出力発振・不安定動作** 位相マージン不足などによって電源回路が発振している場合、出力電圧が可聴帯域の周波数で発振することがあります。 この場合は音鳴きとともに出力電圧の異常な変動も観測されるため、波形を確認することで判断できます。
### **負荷変動・入力変動** 負荷が周期的に変動する場合(マイコンの間欠動作・モータの回転数変動、PWM調光など)、その変動周波数が可聴帯域に入ると音鳴きが発生します。これは、**出力電圧や入力電圧の変動周波数**がそのまま可聴帯域と同調してしまうためです。
### **DC/DCコンバータのPFM動作** DC/DCコンバータは軽負荷時に高効率を実現するため、**PFM(パルス周波数変調)動作**に切り替わることがあります。 PFM動作では負荷電流に応じてスイッチング周波数が変化し、**軽負荷になるほど周波数が低下**します。このスイッチング周波数が可聴帯域まで低下するような負荷電流領域では、コイルやMLCCが可聴帯域で振動して音鳴きが発生します。
## **4. 音鳴き部品の特定方法** 音鳴きへの対策を行う前に、どの部品が鳴いているかを確実に特定することが重要です。 ### **ステップ1:可聴帯域の電圧・電流変化を確認する** まずオシロスコープで各ノードの電圧波形を確認し、**可聴帯域(20Hz ~ 20kHz)に変動が存在するノード**を探します。 周期的な変動が見つかったノードに接続されている部品(コイル・MLCC)が音鳴きの第一候補になります。 オシロプローブで直接波形を確認するだけでなく、FFT機能を使うと周波数成分を視覚的に把握しやすくなります。 * 出力電圧ノード * 入力電圧ノード * スイッチングノード(Lx端子) 各電源の上記ノードを確認し、可聴帯域の変動がどこから来ているかを絞り込みます。 基板条件によっては、数十mVから数百mVの電圧変動で音鳴きする場合もあるので、音鳴きしている候補を見逃さないようにプローブしましょう。 ### **ステップ2:指・綿棒で部品を押さえる(大型部品のみ有効)** トランスや大型の巻き線コイルなどの場合、絶縁された綿棒などで軽く押さえることで、機械的振動が抑制されて音が変化し、音源を特定できることがあります。 ただし、小型のMLCCやチップインダクタでは押さえても効果が出にくい上、力を入れすぎるとはんだクラックや基板パターンの破損を招くリスクがあるため、基本的にはオシロスコープでの絞り込みと部品交換による確認を推奨します。 *(※実施する場合は、感電やショートによる部品破壊を防ぐため、必ず絶縁された工具を使用し、高電圧部には触れないよう注意してください)* ### **ステップ3:部品の交換・変更で絞り込む** 波形から候補が絞り込めたら、該当する部品を別の種類や対策品の品番に仮交換し、音鳴きが改善するかどうかを確認します。 たとえば、怪しいMLCCを一時的に音鳴き対策品やリード品へ交換してみる、あるいはコイルをモールドタイプに変更してみる等のアプローチが有効です。 部品を変える際は、一度にすべてを変えず、1点ずつ変更して影響を確認していくのが原因特定の基本です。 ## **5. 対策方法** ### **制御・回路側の対策** 音鳴きの根本原因は、**電圧・電流が可聴帯域で変動していること**そのものです。部品を物理的に変えるだけでなく、電気的な変動自体を抑制することも非常に有効です。 * **出力の発振を抑える** 出力が発振していた場合、周辺部品(位相補償定数など)の調整によって出力電圧を安定させ、可聴帯域での不要な揺れを排除します。 * **出力容量を増やす・過渡応答特性を改善する** 出力電圧の変動を小さくすることで、MLCCへの交流電圧成分が減少し、音鳴きが抑制されます。 また過渡応答を改善するために、PFM制御からPWM制御(強制PWM等)に変更するなども有効です。具体的な方法はメーカーに確認しましょう。 * **スイッチング周波数を可聴域外に設定する** 通常動作時のスイッチング周波数を20kHz以上に設定します。PFM動作がある場合は、軽負荷時も含めてスイッチング周波数が可聴域まで落ち込まないか、仕様の確認が必要です。 ### **MLCCの対策** MLCCの圧電音鳴きには以下の対策が有効です。 * **リード付きMLCC / メタルフレーム付きMLCC に変更する** リードやメタルフレームがクッションとなって振動を吸収するため、基板への振動伝達が大幅に低減されます。
* **音鳴き対策品(低圧電タイプ)に変更する** 圧電性の低い誘電体材料を使用した専用の製品です。同容量・耐圧でラインナップがあるか確認を推奨します。 * **MLCC以外のコンデンサに変更する** 機能性高分子コンデンサ(ポリマーコンデンサ)など、そもそも圧電性のないコンデンサに変更します。ただし、回路条件や仕様によってはMLCC以外のコンデンサが対応していない場合もあるため注意が必要です。 ### **コイル/トランスの対策** コイル/トランスの音鳴きに対して、最も効果的な対策は**モールドタイプ(樹脂封止型)のコイルへの変更**です。 巻き線とコアが樹脂でしっかりと固定されているため、機械的な振動そのものが強力に抑制されます。 * **モールドタイプ(樹脂封止型)コイルに変更する** 巻き線・コアを樹脂で固定・一体化することで振動を抑制します。 * **トランスに接着剤・封止材を塗布する** トランスの巻き線にワニス等の樹脂を浸透させて焼き固めることで、巻き線同士の微小な隙間を埋め、振動を抑制することが可能です。 ### **実装位置・基板設計の対策** MLCCから基板へ伝わった振動は、基板そのものがスピーカーの振動板のようになることで音鳴りを増幅させます。 この現象は基板自体の共振のしやすさにも依存するため、MLCCの基板内での配置場所や配置する向きを変更することでも対策が可能です。 ## **6. まとめ** 1. 音鳴きは、コイルの磁歪・電磁力やMLCCの圧電効果による「物理的なミクロの振動」が原因 2. 電圧・電流の変動周波数が20Hz ~ 20kHzの可聴帯域に入ると音波として聞こえる 3. PFM動作・スイッチング周波数設定・負荷変動・出力発振が可聴域に突入する主な原因 4. 特定はオシロスコープで可聴帯域の変動ノードを探し、該当部品を交換・変更して消去法で絞り込む 5. 対策はまず回路側で電圧変動を抑制し、それでも残る場合はコイルのモールド化やMLCCの対策品へ変更する

電源ICの適切な測定方法

電源ICの効率を正確に測定する方法
電源ICの効率測定は、マルチメータの挿入位置や接続方法によって正確な測定ができない場合があります。 また測定系の抵抗による電圧降下を考慮しないと、ICの本来の性能より悪い効率が算出されてしまいます。 ## 1. 効率の定義 効率($\eta$)は出力電力を入力電力で割った値です。 $$\eta = \frac{P_{OUT}}{P_{IN}} = \frac{V_{OUT} \times I_{OUT}}{V_{IN} \times I_{IN}}$$ $V_{IN}$・$V_{OUT}$・$I_{IN}$・$I_{OUT}$のいずれかに測定誤差があると、効率の計算結果に誤差が生じます。 ## 2. マルチメータの挿入位置 ### 電圧計の挿入位置 電圧計はDUT(Device Under Test:被測定デバイス、評価対象の基板・IC)の入力・出力端子の**直近**で測定することが重要です。 電源装置や負荷の端子の電圧を測定すると、配線抵抗・接触抵抗による電圧降下が含まれてしまい、DUTに実際に印加されている電圧と異なる値が測定されます。また電源装置の設定電圧を計算に使わず、電圧計で測定した入力・出力端子の**直近**を計算に用いましょう。 ### 電流計の挿入位置 電流計は電源装置とDUTの間(入力側)、およびDUTと負荷の間(出力側)に直列に挿入します。電流計自体にも内部抵抗があるため、挿入位置によって電圧降下が生じることに注意が必要です。 ## 3. 電流計の抵抗成分 電流計(マルチメータの電流レンジ)には内部抵抗があります。また電流測定にシャント抵抗を使用する場合も同様に抵抗成分が生じ、電流計の両端に電圧降下が発生します。 この電圧降下が電圧計の測定値に含まれないよう、**電流計と電圧計の挿入位置の関係**に注意が必要です。電圧計はDUT端子の直近で測定し、電流計の抵抗による電圧降下が電圧測定値に含まれないようにします。
## 4. レンジ設定の注意 ### 電圧計 電圧計は自動レンジで問題ありません。 ### 電流計 電流計は**手動で適切なレンジを設定**することを推奨します。 自動レンジの場合、電源ON時に低い電流レンジから測定を開始するため、起動時の突入電流がレンジ切り替え前の低いレンジに流れてしまいます。この状態では電流計の内部抵抗が高く、電圧降下が大きくなるため、DUTが正常に起動できない場合があります。また動作中にレンジが切り替わると内部抵抗が変化し、特性測定に影響が出ることがあります。 あらかじめ測定する電流値を把握した上で、適切なレンジに手動設定してから電源をONすることが重要です。 ## まとめ 1. 効率は$V_{IN}$・$V_{OUT}$・$I_{IN}$・$I_{OUT}$の4つの測定値から計算するため、いずれかの誤差が効率計算全体に影響する 2. 電圧計はDUT端子直近に接続し、配線・接触抵抗による電圧降下を測定値に含めない 3. 電流計の内部抵抗・シャント抵抗による電圧降下が電圧測定値に含まれないよう挿入位置に注意する 4. 電流計は測定電流に応じたレンジに手動設定する
スパイクノイズの正しい測定方法:高周波信号測定時のオシロプローブ接続
DC/DCコンバータの出力スパイクノイズ等の高周波信号を測定する際、オシロプローブの接続方法によって測定結果は劇的に変化します。誤った測定方法では、実際には存在しないノイズや、測定系由来の過大なリンギングを拾ってしまい、誤った評価につながります。 ## 1. GNDリードが長いと何が起きるか 通常のプローブに付属するGNDリード線には**インダクタンス成分**があります。 これがプローブの入力容量と共振回路を形成し、数十MHz以上の高周波成分を過大に増幅・リンギングさせます。このため、GNDリードを使って測定すると、実際より何倍も大きなノイズ値や波形が観測されてしまいます。 ## 2. スパイクノイズを正確に測定するには GNDのインダクタンスを排除するため、プローブのGNDを最短距離(測定点の直近)で取ることが必須です。 **推奨手順:** 1. プローブのGNDリードやフックチップを外す。 2. プローブ先端のコンタクト部と、金属製のGNDスリーブ(シールド部)を露出させる。 3. この状態のプローブ先端を、VOUT側とGND側に直接押し当てて測定する(通称:直接当て測定)。 * GNDスプリング(アースアタッチメント)を使用しても同様の効果が得られます。
通常プローブと直接当ての測定波形を比較すると、GNDリードを使った通常のプローブ方法ではスパイクノイズが大きく測定されており、高周波信号が正確に測定できてないことがわかります。
## 3. 測定環境による使い分けと工数の考慮 測定の目的や優先度に応じて、接続方法を適切に選択してください。 | 測定内容 | 推奨接続方法 | 理由 | |---|---|---| | リップル電圧(数MHz以下) | 通常のGNDリード接続 | 利便性が高く、評価工数を抑えられる | | スパイクノイズ(数十MHz以上) | 直接当て測定(GNDリード除去) | 高周波信号の正確な評価 | 高周波測定には、プローブの準備や安定したコンタクトを維持するための工夫が必要となり、どうしても評価工数がかかります。そのため、**リップル電圧のような低周波測定であれば、無理に直接当て測定を行わず、通常のGNDリードで測定する判断も実務上は重要です。** また、不要な高周波ノイズの混入を避けたい場合や、スパイクノイズの正確な評価が難しい環境下では、**オシロスコープの帯域制限フィルタ(BW Limit 20MHz等)を積極的に活用してください。** これにより、測定系に由来する高周波の映り込みを物理的にカットできるため、ノイズ評価の効率と信頼性が向上します。 ## 4. パッシブプローブの帯域の注意点 高周波ノイズを正確に測定するには、プローブ自体の帯域も重要です。測定対象のノイズ周波数に対して十分な帯域を持つプローブを選択してください。また、高周波測定時にはプローブの倍率(10:1)を使用し、入力容量を最小化することも重要です。 ## まとめ 1. 長いGNDリードはインダクタンスによりスパイクノイズを過大評価させる 2. 正確なスパイクノイズ測定には、GNDリードを外してプローブ先端を直接当てるのが鉄則 3. 高周波用の直接当て測定は工数がかかるため、目的(リップル確認等)に応じて通常のGNDリード接続と使い分けるのが効率的 4. 測定目的に合わせ、オシロスコープ側の帯域制限フィルタ(BW Limit)を適切に活用する

車載対応品

AEC-Q100とはなんですか?

AEC規格の1つで、集積回路(IC)のための各種信頼性試験を定めたものです。

AECとはなんですか?

AECはAutomotive Electronics Councilの略称で、大手自動車メーカーと米国の電子部品メーカーが設立した車載用電子部品信頼性の標準化団体です。

IATF16949は取得していますか?

トレックスはファブレスメーカーのため、自社でIATF16949を認証取得することはできませんでしたが、2019年にグループ会社のIATF16949取得工場の遠隔地支援部門として認証登録を頂いております。▶IATF16949への取り組み
また、IATF16949で求められるコアツール(SPC、MSA)を用いた管理の導入の他、お客様からのご要望に応じてPPAPドキュメントの提供も行っております。

トレックスの車載製品の定義を教えてください。

製品リリース時はAEC-Q100での製品認定を行っています。
また量産テストやトレーサビリティなどで量産品と異なる管理を実施しています。

品質や環境対応はどうなっていますか?

ISO9001、ISO14001の認証を取得しています。またEURoHS/REACH並びにハロゲン&アンチモンフリーに対応しています。

車載製品のサポートはどのようになっていますか?

車載ビジネス拡大に向けた中核拠点として2016年4月に【関西技術センター】を開設いたしました。
各地に分散していた製品設計、量産技術、品質保証の機能を集約し、「営業・開発/技術・品質保証」による一気通貫の対応力を提供いたします。

その他

オンラインでの製品購入は可能ですか?

当社の製品や評価基板は、主要なオンラインストアを通じて手軽にご購入いただけます。

オンラインストアで、希望する製品や評価基板の在庫が無い場合は、弊社営業またはWEBお問合せフォームよりご要望下さい。

主な購入先

TOREX Direct:当社直販オンライン販売サイト

https://direct.torexsemi.com/ja-jp/

オンライン代理店

未実装評価基板の入手について

当社は、お客様の柔軟な設計・評価を支援するため、未実装の評価基板を無償で提供しています。
これにより、お客様は基板設計の手間なく、ご自身の環境や部品構成で迅速にIC評価を進められます。

また一部製品の未実装の評価基板は、TOREX Directにて購入頂けます。

未実装基板の無償提供申し込み方法について

未実装基板の無償提供をご希望の際は、弊社営業またはWEBお問合せフォームよりお問合せ下さい。
製品名、パッケージ名、評価目的をお伝えいただくとスムーズです。

未実装基板の購入について

一部製品の未実装評価基板は購入も可能です。
当社のオンライン直販サイトTOREX Directで販売情報をご確認ください。

評価基板の提供・購入は可能ですか?

当社は、お客様の製品開発支援のため、評価基板の無償提供を行っています。
基本的には、当社が扱う全製品について評価基板の無償提供が可能です。

また一部の製品では、TOREX Directおよびオンライン代理店にて評価基板の販売を行っています。

評価基板の無償提供について

1.お客様仕様に応じたカスタム対応

標準的な周辺部品に加え、お客様の仕様に応じたカスタムの評価基板も提出可能です。
これにより、実使用に近い環境での評価と設計の確実性向上を支援します。
ご要望は詳細をお伺いし、個別に対応します。

2.最適な製品選定のサポート

「電源仕様は決まっているけど、どの製品を使えばいいかわからない」場合でも、
電源仕様をお伝え頂ければ、最適な製品の評価基板を提供することが可能です。

3.お申し込み方法

評価基板の無償提供については、弊社営業またはWEBお問合せフォームよりお問合せ下さい。
電源仕様や電源に必要な要件(小型、低消費、高効率etc)を教えていただけると、スムーズな提供や製品提案が可能です。

評価基板の購入について

評価基板は提供だけでなく、TOREX Directおよびオンライン代理店からのご購入も可能です。

1.当社直販オンラインサイト【TOREX Direct】からのご購入

当社の直販サイトTOREX Directを通じて、一部の評価基板が購入可能です。

2.オンライン代理店からのご購入

主要な電子部品ディストリビューターのオンラインストアでも、一部の評価基板が購入可能です。

ご利用上の留意事項

詳細な技術サポートは、弊社営業またはWEBお問合せフォームよりお問合せ下さい。

試作用の無償サンプル提供は可能ですか?

設計・開発を支援するため、当社は試作用サンプルを無償提供しています。
これは、お客様が製品評価を通じて設計リスクを低減し、開発期間を短縮することを目的としたプログラムです。

1.提供条件と数量:最大50個まで

無償サンプルは、試作、評価、および検証目的に限定して提供されます。
1品番あたり最大50個までの無償提供が可能です。

2.お申し込み方法:専用ページ

無償サンプル請求は、当社のサンプル請求ページから承ります。

3.ご利用上の留意事項

無償サンプルは 外形及び電気的特性は量産品と同等ですが、無償サンプルを使用したことによる不具合、誤動作等の如何なる問題についても当社は責任を負いません。

製品選定や設計に関する詳細な技術サポートは、弊社営業またはWEB問合せフォームよりお問合せ下さい。