投稿日 : 2026年8月5日 / 最終更新 : 2026年8月5日
文責 : 釜野信彦
データシートを見ると、サーマルシャットダウンの検出温度が絶対最大定格のTjmaxより高く設定されています。
例えば、Tjmax = 125℃に対してサーマルシャットダウン検出温度 = 150℃といった設定です。「サーマルシャットダウンが動作する前にICが壊れるのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
この記事では、その理由と正しい使い方を解説します。
## サーマルシャットダウンの検出温度がTjmaxより高い理由
DC/DCコンバータやLDOは、自己発熱を伴いながらもTjmaxの範囲内で動作することが前提です。サーマルシャットダウンはあくまでも異常時の保護機能であり、通常動作中に動作することは想定されていません。
サーマルシャットダウンの検出温度をTjmaxより高く設定しているのは、**Tjmax以下の通常動作を妨げないようにするため**です。もしサーマルシャットダウンの検出温度がTjmaxより低ければ、正常な動作範囲内でサーマルシャットダウンが動作してしまいます。
* **絶対最大定格(Tjmax)**
ICの電気的特性を保証しつつ、長期間ストレスなく動作できる上限温度。
* **サーマルシャットダウン検出温度**
ICが熱破壊(物理的破損)に至る前に出力を遮断するための最終防衛ライン。
## 例外:長期間発熱が前提のICはサーマルシャットダウンを低めに設定する場合がある
リニア方式の充電ICのように長時間サーマルシャットダウン動作が維持される可能性のあるICでは、ICを保護するためにサーマルシャットダウンの検出温度をTjmaxより意図的に低めに設定している場合があります。
該当製品を使用する際はデータシートをよく確認してください。
## サーマルシャットダウンを常時動作させる使い方はNG
サーマルシャットダウンが繰り返し動作するような状況、すなわちジャンクション温度がサーマルシャットダウン検出温度付近を常に推移するような使い方は絶対にお止めください。
サーマルシャットダウンはあくまでも非常時のフェイルセーフです。通常動作では、ジャンクション温度がTjmaxを超えないよう、適切な熱設計を行ってください。
## まとめ
- TjmaxはICの電気的特性保証と長期動作の上限温度、サーマルシャットダウン検出温度は熱破壊を防ぐ最終防衛ライン
- サーマルシャットダウンの検出温度がTjmaxより高いのは、通常動作を妨げないため
- サーマルシャットダウンはあくまでも異常時の保護機能であり、常時動作することを前提に使用してはならない
- 通常動作ではTjがTjmaxを超えないよう熱設計を行うこと
文責 : 釜野信彦
トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。