投稿日 : 2026年8月5日 / 最終更新 : 2026年8月5日
文責 : 釜野信彦
LDOやDC/DCコンバータは、出力電圧を一定に保つために **負帰還制御(フィードバック制御)** を行っています。 この制御の仕組みと、安定して動作させるために必要な「位相補償」について解説します。 ## **1. 負帰還制御と発振のリスク** LDOやDC/DCは、出力電圧をFB端子/FBノードで検出し、目標値とのズレをエラーアンプで増幅して出力を調整する負帰還制御を行っています。 この負帰還制御は、フィードバック量(ゲイン)が大きすぎたり、信号の位相(タイミング)がずれたりすると、制御が安定せず出力電圧が振動し続ける状態になることがあります。 発振が起きると出力電圧が不安定になり、後段の回路が正常に動作しなくなります。また、ドライバに流れるピーク電流が大きくなることで保護機能が動作し電源ICが停止することもあります。さらに周辺部品に流れる電流も増大するため、周辺部品の定格・飽和電流を超えた異常動作の原因にもなります。
また出力が発振した状態は、**発振**・**不安定**・**安定性がない**など複数の言葉で表現されることがありますが、いずれも同じ現象を指しています。 ## **2. 位相補償とは** 発振を防ぐために、フィードバックループの特性を調整することを **位相補償** と呼びます。主に以下の2つの方法があります。 * **エラーアンプの周波数特性を調整する方法** エラーアンプの位相補償が外付けで調整できる製品では、外部抵抗・コンデンサを接続してエラーアンプの応答速度を調整します。 * **出力コンデンサ・インダクタンス値を調整する方法** 出力コンデンサの容量やESR、インダクタンス値によってループ特性が変化することを利用して調整します。 どちらの場合も、推奨範囲外の定数を使用すると出力が発振するおそれがあります。データシート記載の推奨範囲内の定数を選定するようにしましょう。 ## **3. 出力コンデンサのESRの影響** 位相特性は出力コンデンサの **ESR(等価直列抵抗)** によっても変化します。 ESRの値によってフィードバックループのゲインや位相が変わるため、推奨されていない種類のコンデンサを使用すると発振するケースがあります。(例:タンタルコンデンサが推奨なのに、セラミックコンデンサを使用等) データシートに記載されている推奨コンデンサの種類・容量・ESR範囲を必ず確認してください。 ## **4. 安定性の評価方法** 出力が安定して動作しているかを確認するには、以下の方法が使われます。 * **過渡応答波形** 出力電流を急変させたときの出力電圧の変化をオシロスコープで観測します。 電圧変動が収束するまでの波形を見ることで、安定性を評価できます。安定している場合はリンギングが収束し、不安定な場合は収束するまでのリンギングの回数が多かったり、波形が収束せず振動し続けます。 * **ボード線図(周波数特性)** ゲインと位相の周波数特性をグラフ化したもので、安定性の余裕(ゲイン余裕・位相余裕)を定量的に評価できます。 ただしDC/DCの場合、非連続モード(DCM)等ではボード線図で適切に評価できない領域があります。どの動作領域でボード線図が有効かを判断した上で活用することが重要です。
## **まとめ** | 項目 | 内容 | |---|---| | **発振のリスク** | フィードバック量や位相のずれにより出力が発振状態になることがある | | **位相補償** | 発振を防ぐためにフィードバックループの特性を調整する | | **ESRの影響** | 出力コンデンサのESRによって位相特性が変化するため注意が必要 | | **安定性の評価** | 過渡応答波形やボード線図で確認。ボード線図は活用できない条件が存在する。 |

文責 : 釜野信彦

トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。