投稿日 : 2026年9月2日 / 最終更新 : 2026年9月9日
電子機器の設計や規格認証の場面で「**EMI**」「**EMS**」「**EMC**」という言葉をよく目にします。混同されやすい用語ですが、それぞれ異なる概念です。 ## **1. EMCとは(電磁両立性)** EMC(Electromagnetic Compatibility)とは、**機器が電磁ノイズを出さず、かつ外部からの電磁ノイズにも影響されずに正常動作できる能力**のことです。 EMCはEMIとEMSという2つの観点を合わせた概念です。 ## **2. EMIとは(電磁妨害)** EMI(Electromagnetic Interference)とは、電子機器から発生する**電磁ノイズが他の機器に干渉し、誤動作や性能低下を引き起こす現象**です。「ノイズを出す側」の問題です。 EMIを引き起こすノイズの放出(エミッション)には、経路によって大きく2種類あります。 * **放射エミッション(Radiated Emission)**:空間を伝わる電磁波として放射されるノイズ。 * **伝導エミッション(Conducted Emission)**:電源ラインや信号ラインを通じて伝わるノイズ。 DC/DCコンバータのスイッチング動作は高周波の電流変化を伴うため、EMIの主要な発生源の一つです。 ## **3. EMSとは(電磁感受性)** EMS(Electromagnetic Susceptibility)とは、外部からの電磁ノイズに対して機器がどれだけ影響を受けやすいかを示す概念です。「ノイズを受ける側」の問題で、イミュニティ(Immunity)とも呼ばれます。 EMSが低い(耐性が高い)機器は、外部ノイズが存在しても正常に動作し続けることができます。 外部ノイズにはさまざまな種類があり、それぞれに対応したイミュニティ試験が規定されています。 * **静電気放電(ESD)**:人体や機器からの静電気放電による瞬間的な高電圧 * **電源ライン上のバースト・サージ**:雷や開閉サージなどによる瞬間的な過電圧 * **放射イミュニティ**:外部からの電磁波(携帯電話、無線機器など)による影響 * **伝導イミュニティ**:電源ラインや信号ラインを通じて侵入するノイズへの耐性 ## **4. EMC規格と認証** 電子機器を市場に出すためには、各国・地域のEMC規格への適合が必要です。規格には国際規格とローカル規格があります。 ### **国際規格** * **CISPRシリーズ**:IEC傘下の国際無線障害特別委員会が制定。民生機器向け(CISPR32等)や車載向け(CISPR25等)など用途別に規格が分かれています。欧州EN規格のベースにもなっています。 * **IEC 61000シリーズ**:EMCに関する国際規格群。イミュニティ試験などをカバーします。 ### **各国・地域のローカル規格** * **EN規格(欧州)**:CEマーキング取得に必要。 * **FCC規格(北米)**:FCCマーク。 * **VCCI規格(日本)**:自主規制規格。VCCIマーク。 * **GB規格(中国)**:CCC認証(中国強制認証)に対応。 ## **まとめ** | 用語 | 意味 | |---|---| | **EMC** | EMIとEMSの両方を満たす電磁両立性 | | **EMI** | 機器から外部へ放出される電磁ノイズによる干渉(ノイズを出す側) | | **EMS** | 外部ノイズに対する耐性・感受性(ノイズを受ける側) | | **国際規格** | CISPR、IEC 61000シリーズなど | | **ローカル規格** | EN(欧州)、FCC(北米)、VCCI(日本)など |