投稿日 : 2026年9月2日 / 最終更新 : 2026年9月2日
電源ICの評価において、電子負荷を活用している人も多いかと思います。電源ICの評価に電子負荷を使用する場合、CC(定電流)モードで接続すると「ICが起動しない」「出力電圧が正常に上がらない」「保護回路が動作してしまう」といった問題が発生することがあります。
これは設計や実装の問題ではなく、**電子負荷のCCモードと電源ICの動作が干渉している**ことが原因である可能性があります。
また電源ICの起動シーケンスや保護機能によっては、ICが動作停止や誤動作する可能性もあります。
## **1. 電子負荷の動作モード**
電子負荷には主に以下の動作モードがあります。
* **CC(定電流)モード**
設定した電流値を一定に保つように動作します。出力電圧が変化しても、電子負荷は設定電流を流し続けようとします
* **CR(定抵抗)モード**
設定した抵抗値に相当する電流を流します。出力電圧に比例した電流が流れるため、実際の抵抗負荷に近い挙動になります
* **CV(定電圧)モード**
設定した電圧値に収束するように動作します
このうち**CCモードは「電圧によらず一定電流を流す」という動作**のため、電源ICの起動シーケンスや保護機能と干渉するケースがあります。
## **2. CCモードで問題が起きる原因**
### **起動時の電流制限との干渉**
電源ICは起動時に出力電圧を上昇させ、設定電圧まで上昇させていきます。
電子負荷のCCモードは、出力電圧が低い状態でも設定電流を流し続けようとします。
フォールバック型の電流制御や、起動時に電流制限値を絞っている電源ICでは、電子負荷が電流制限以上の電流を引き抜くことで出力電圧が上昇しなかったり、そのまま起動停止になる場合があります。
起動時は出力電圧0Vから動作するため、フォールドバック型の電源ICは、出力電圧が0Vに近い起動初期において、供給できる電流能力が**「短絡電流」**のレベルまで低く制限されています。ここから電圧の上昇とともに最大出力電流能力まで回復していきますが、電子負荷のCCモードがそれ以上の「設定電流」を最初から要求すると、IC側の供給能力が追いつきません。
その結果、下のグラフのように、設定出力電圧に到達する前の **「起動時の動作点」で電圧と電流のバランスが釣り合ってしまい、出力電圧が途中で止まったまま起動が完了しなくなります。**
## **3. 切り分け方法**
「CCモードが原因かどうか」を簡単に切り分けるには、**電子負荷を外して抵抗負荷(固定抵抗/可変抵抗)に置き換えて動作確認**します。抵抗負荷で正常に動作する場合は、電子負荷が原因である可能性が高いです。
次に電子負荷をCRモードに切り替えて同様に確認します。CRモードでも正常に動作する場合は、CCモード特有の挙動が干渉していることが確定できます。
なお、電子負荷の応答特性は電子負荷の機種によって異なるため、使用する機器によっては問題が再現しない場合や、逆により顕著に現れる場合があります。
## **4. 正しい評価方法**
### **CCモードを使う場合の注意点**
定常動作時の特性評価(効率・リップル電圧など)にCCモードを使用すること自体は一般的には問題ありません。
使用する際は以下の点に注意してください。
* **起動時はCCモードをオフにする**
ICが起動して出力電圧が安定してからCCモードをオンにする
* **電流設定をゼロから徐々に増やす**
電子負荷によっては起動時に電流が瞬間的に設定値を超えることがあるため注意
また電子負荷の機種によっては、ノイズの混入や負荷変動時のスルーレートの違いが評価結果に影響が出る可能性があります。加えて、電子負荷の制御系とDC/DCコンバータが干渉して、電源ICが発振する場合もあるため注意が必要です。
## **まとめ**
1. 電子負荷のCCモードは出力電圧によらず一定電流を流し続けるため、起動時に電流制限と干渉して 起動不良が発生しやすい
2. まず抵抗負荷・CRモードに置き換えて動作確認し、CCモードが原因かを切り分ける
3. 起動評価には固定抵抗/可変抵抗や電子負荷のCRモードの使用を推奨する
4. 電子負荷のCCモードを使う場合は、ICが起動・安定してから電子負荷をオンにする
5. 電子負荷のCCモードの応答特性は機種によって異なるため、電子負荷を変えると挙動が変わる場合がある
