投稿日 : 2026年9月2日 / 最終更新 : 2026年9月2日
試作基板の評価時や量産品の市場環境下において、設計上は問題がないにもかかわらず動作不良が発生することがあります。 主な原因は、**フラックス残渣・湿気・汚染物質による絶縁抵抗低下(リーク)** や、**人体由来の寄生成分**、そして過酷な環境下での **腐食(塩害・ガス硫化)** です。 ## 1. 絶縁抵抗の低下とリーク電流 基板上の残留物や湿気は、意図しない電流の通り道(リークパス)を作ります。 * **原因** * **フラックス残渣・汚染** 洗浄不足により残ったフラックスは導電性を持つことがあります。 * **湿気** 高湿度環境では基板表面に微細な水膜が形成されます。 特に不純物が混ざるとイオン化し、絶縁抵抗が桁違いに低下します。 * **回路特性への影響例** * **出力電圧のずれ** FB抵抗に高抵抗値(例:200kΩ〜MΩオーダー)を使用している場合、微小なリーク電流が分圧比を乱し、出力電圧が変動します。 * **消費電流の増加** リークパスが電源ライン間に形成されると、実測消費電流が増加し、省電力設計が損なわれます。 ## 2. 人体の寄生成分による影響 人体は数kΩ〜数10kΩの抵抗と、数百pF程度の容量を持っています。 評価中に素手で回路に触れると、これらが回路に対して並列に接続された状態となります。高抵抗回路ではこの影響が顕著で、触れている間だけ動作が変わる「再現性のないトラブル」の主要因となります。 ## 3. 環境汚染物質による「腐食」リスク(量産設計) 量産環境では、単なるリークを超えた物理的な破壊要因を考慮する必要があります。 * **塩害(塩分付着)** 海沿いだけでなく道路の凍結防止剤なども原因となります。 塩分は極めて吸湿性が高く、低湿度でも液膜を形成して「電食(電気化学腐食)」を促進し、パターンを断線させます。 * **硫化・腐食性ガス** 温泉地や工場等に存在する硫黄成分は、金属端子やはんだ部を黒く変色させ、導電性悪化や接触不良、最悪の場合は端子の金属腐食を引き起こします。これらは**洗浄では除去できず、空気に触れる限り進行します**。 ## 4. 対策 ### 試作時 * **フラックスの徹底洗浄** 特に高抵抗回路周辺は念入りに洗浄・乾燥を行ってください。 * **接触回避** 基板は手袋を着用し、回路部には極力触れないようにします。 * **評価環境の管理** 湿度管理を徹底し、結露が発生しないよう配慮してください。 ### 量産時 * **防湿コーティング** シリコン系・アクリル系等のコーティング剤で基板を覆い、湿気や汚染物質を遮断します。 * **ポッティング・密閉筐体** 腐食性ガスや塩害が懸念される環境では、コーティングだけでは不十分な場合があります。密閉容器への封入や、樹脂によるポッティングで基板全体を物理的に隔離することを検討してください。 * **耐環境部品の選定** 耐硫化抵抗器の使用など、環境耐性の高い部品を選定します。 ## まとめ 1. フラックス・湿気・汚染はリークパスを作り、特に高抵抗回路で誤差を引き起こす 2. 人体も回路へ影響を与えるため、素手での接触は厳禁 3. 塩分や腐食性ガスは「リーク」だけでなく「腐食による断線」を引き起こすため、量産設計では対策が必須 4. 試作時は洗浄と保護を徹底し、量産時は環境に応じたコーティングや密閉化を検討すること