投稿日 : 2026年9月2日 / 最終更新 : 2026年9月2日
機器出荷前のMCUへのファームウェア書き込みや基板テストで、書き込み器からMCUのVDDピンに直接電圧を印加することがあります。このとき電源ICのVOUT端子にも電圧が印加される形となります。 通常、電源ICはVINから電力を供給してVOUTを生成しますが、VOUTのみに外部電圧を印加する状態は**通常の動作状態とは異なり**、ICによっては破壊に至る可能性もあります。
## 発生する問題 VOUTのみに外部電圧を印加するとVIN < VOUTの状態が発生し、以下の問題が起こる場合があります。 * **VINへの逆流電流** VIN-VOUT間の寄生ダイオードやON状態のFETを経由してVOUT→VIN方向に逆流電流が流れます。 ICや回路によっては、この逆流電流によって**VOUT端子がVIN+0.3Vの絶対最大定格を超える**場合があります。 * **強制PWM制御やCLディスチャージ機能による電流引き抜き** 強制PWM制御やCLディスチャージ機能(出力放電機能)を搭載したICでは、VOUTに外部電圧が印加された際に、**電流を引き抜く(シンク電流)** 場合があります。書き込み器の電流供給能力によっては、印加電圧の低下や他経路への流入がある場合があります。 多くの電源ICはこれらの状態でも問題なく動作しますが、**製品によっては問題が発生する場合があります**。製品に依存するため、各メーカへの確認を推奨します。 ## 電源IC以外の回路への影響にも注意 VOUTに外部電圧を印加すると、電源IC以外の後段回路にも影響が及ぶ場合があります。通常と異なるバイアス条件で電圧が印加されるため、**SoCや他ICの内部寄生ダイオード等を経由して想定しない経路に電流が流れる**可能性があります。 電源IC単体の問題だけでなく、システム全体として意図しない電流経路が発生しないか、また各ICの絶対最大定格を超えないかを確認してください。 ## 書き込み治具の設計時の考慮事項 量産時の書き込みは専用治具(ポゴピン等)を用いることが多く、どのピンに何Vを印加するかは治具の設計次第です。上記の問題を回避するために、**治具設計の段階から以下を考慮してください**。 * VINにも同時に電圧を印加できるよう治具に電源供給ラインを設ける * 書き込み時の印加条件(電圧・タイミング)を明確に規定する ## 対策 * **VINにも同時に電圧を印加してVIN > VOUTを維持する** 電源ICのVINにも同時に電圧を印加し、VIN > VOUTの状態を保つことで逆流を防ぎます。最も確実な対策です。 * **VOUTへの印加電圧をVOUT設定値より高くする** 印加電圧をVOUT設定値より高くすることで、電源ICは動作停止し問題のない状態になります。 ただし**F-PWM制御のDC/DCコンバータは、VOUTが設定値を超えると逆流動作(シンク動作)をする製品があるため注意が必要です**。 ## VINへの電圧印加ができない場合 VINに電圧を印加できない場合、多くのICは問題ありませんが、製品によっては逆流電流によりVOUT端子が絶対最大定格を超える場合があります。製品によっては破壊や保証外となるため、**必ず問題ないかメーカへ確認してください。** ## まとめ - MCU書き込み時にVOUTのみへ外部電圧が印加されると通常の動作状態とは異なり、VIN < VOUTとなる - 逆流電流により定格超えが発生する場合や、強制PWM制御やCLディスチャージ機能が動作して電流を引き抜く場合がある - 電源IC以外の後段回路にも想定しない電流経路が発生する可能性があるため、システム全体での確認が必要 - 治具設計の段階からVINへの電圧供給・電流供給能力・印加条件を考慮すること - 製品によっては問題が発生する場合があるためメーカ確認が必須 - 最も確実な対策はVINにも同時に電圧を印加してVIN > VOUTを維持すること - VOUTへの印加電圧をVOUT設定値より高くする対策では、F-PWM制御DC/DCの逆流動作に注意