投稿日 : 2026年9月2日 / 最終更新 : 2026年9月9日
Nchオープンドレイン出力にプルアップ抵抗を接続する場合や、誤動作防止用のプルダウン抵抗を追加する場合に、データシートに具体的な抵抗値が指定されていないことがあります。ここでは、そのような場面でのプルアップ・プルダウン抵抗値の選定指針を説明します。
## Nchオープンドレインのプルアップ抵抗
### 役割
Nchオープンドレイン出力は、ドライバFETがONのとき出力をGNDに引き下げますが、OFFのときは出力がハイインピーダンスになります。このため、外部にプルアップ抵抗を接続して出力"H"電圧を確保する必要があります。
I2C等のオープンドレイン通信方式では、信号をなまりなく届けるためにプルアップ抵抗値の選定が特に重要になります。
### 選定方法
基本的な前提は、**"H", "L"時に後段デバイスの論理閾値を満たすこと**です。その上で消費電流・耐ノイズ性等を考慮して選定します。
プルアップ抵抗値が小さすぎると、FETがON時にRONとRpullの電圧分割により出力"L"電圧が浮き上がります。
逆に抵抗値が大きすぎると、FETがOFF時にリーク電流によるRpullでの電圧降下で出力"H"電圧が低下します。
一般的に**1kΩ〜数100kΩ程度**を目安に、以下の計算で"H", "L"を満たすか確認します。
I2C等のオープンドレイン通信方式では、速度モードごとにプルアップ抵抗値が規定されている場合があります。通信用途では**ICのデータシートまたは規格の推奨値に従って**選定してください。
#### 出力"L"電圧の計算
ドライバFETがONのとき、プルアップ抵抗RpullとFETのON抵抗RONで電圧分割が発生します。
$$V_{OL} = V_{pull} \times \frac{R_{ON}}{R_{pull} + R_{ON}}$$
* $V_{pull}$:プルアップ先の電圧
* $R_{pull}$:プルアップ抵抗値
* $R_{ON}$:ドライバFETのON抵抗
RONはデータシートの電気的特性から以下のように算出できます:
$$R_{ON} = \frac{V_{OL}}{I_{OL}}$$
**計算例)** Vpull = 1.8V、Rpull = 10kΩ、RON = 120Ω の場合
$$V_{OL} = 1.8\text{V} \times \frac{120\Omega}{10\text{k}\Omega + 120\Omega} \approx 21\text{mV}$$
#### 出力"H"電圧の計算
ドライバFETがOFFのとき、FETのリーク電流ILEAKがプルアップ抵抗に流れ、電圧降下が発生します。
$$V_{OH} = V_{pull} - R_{pull} \times I_{LEAK}$$
* $V_{pull}$:プルアップ先の電圧
* $R_{pull}$:プルアップ抵抗値
* $I_{LEAK}$:ドライバFETのリーク電流
**計算例)** Vpull = 1.8V、Rpull = 100kΩ、ILEAK = 0.1μA の場合
$$V_{OH} = 1.8\text{V} - 100\text{k}\Omega \times 0.1\mu\text{A} = 1.79\text{V}$$
### 注意事項
* **後段のRC回路を駆動する場合**
(シーケンス制御等)はRC時定数による駆動能力も考慮が必要なため、別途 抵抗値を検討してください
* **消費電流**
"L"時にプルアップ抵抗に電流が流れるため、低消費電力が必要なアプリケーションでは抵抗値を高めに設定してください
* **高速通信ライン(I2C等)**
プルアップ抵抗値が高すぎると信号の立上りがなまり、通信エラーの原因になります。
I2Cなどの通信用途では使用するICのリファレンス回路や規格の推奨値に従って選定してください
* **プルアップ電圧(Vpull)**
ICの絶対最大定格以内に収まるよう注意してください
## 誤動作防止用のプルアップ抵抗・プルダウン抵抗
### 役割
入力端子や信号線がハイインピーダンス状態になった際に、ノイズやリーク電流によって誤った信号にならないように、プルアップ抵抗・プルダウン抵抗を入れる場合があります。信号入力ラインへのプルアップ・プルダウンや、ドライバ回路の駆動用FETのゲート部などの様々な箇所で使われます。
### 選定方法
プルアップ・プルダウン抵抗値は、**リーク電流・ノイズに負けない**低い値を選定します。
ただし抵抗値が小さすぎると消費電流が増加するため、低消費電力が必要なアプリケーションでは高め(100kΩ程度)に設定し、ノイズ・リーク電流との兼ね合いで決定します。
また極端に抵抗値が低すぎる場合は、そのプルアップ・プルダウン抵抗により信号を駆動できない・信号がなまることもあるので注意が必要です。
## まとめ
- Nchオープンドレイン出力には外部プルアップ抵抗が必要。一般的に1kΩ〜数100kΩ程度
- 選定の前提は"H","L"時に後段デバイスの論理閾値を満たすこと
- 出力"L"電圧はRONとRpullの電圧分割で決まる。Rpullが小さいほど"L"電圧が上昇する
- 出力"H"電圧はリーク電流×Rpullの電圧降下で決まる。Rpullが大きいほど"H"電圧が低下する
- 高速通信ライン(I2C等)ではプルアップ抵抗が高すぎると信号がなまるため、ICのリファレンスや規格の推奨値に従うこと
- 誤動作防止用のプルダウン抵抗はリーク電流・ノイズに負けない値を選定し、消費電流とのバランスで決める
