投稿日 : 2026年9月7日 / 最終更新 : 2026年9月9日
文責 : 釜野信彦
EDLCは電気二重層コンデンサで、スーパーキャパシタ・ウルトラキャパシタとも呼ばれます。
大容量(F単位)ですが、1セルあたりの最大電圧が2.5V〜2.7V程度と低く、放電とともに電圧が線形に低下する特性があります。主に短時間のバックアップ電源・ピーク電流アシスト用途に使用されます。
EDLCの充電には専用の充電ICも存在しますが、製品数が少なく高価なのが実情です。この記事では、安価で入手性の良いLDOを使ったEDLC充電回路の構成と注意点を解説します。
## EDLCを充電する際の要件
EDLCを適切に充電するには、以下のポイントを理解しておく必要があります。
* **電圧制限**
EDLC 1セルあたりの最大電圧(2.5V〜2.7V)を超えると劣化・破壊につながります。
充電完了電圧(LDOの出力電圧)を使用するEDLCの最大電圧以下に設定してください。
* **多セル直列接続時の電圧バランス**
2セル以上を直列接続する場合、各セルの自己放電特性のばらつきや容量劣化のばらつきにより電圧バランスが崩れることがあります。
多セルで使用する場合は、**各EDLCに並列にバランス抵抗等**を追加してセルバランスを保ってください。
* **突入電流の制限**
EDLCを電源に直接接続すると、充電開始時に非常に大きな突入電流が流れます。
入力側の電流制限が動作してシステムが停止する可能性があるため、充電ICや制限抵抗で突入電流を適切に制限することが重要です。
* **逆流防止**
VINが遮断・オフになった際にEDLCに蓄積された電荷が充電ICに逆流し、ICが破壊される場合があります。
専用の充電ICを用いない場合は、逆流防止用のダイオードを挿入するか、逆流防止機能を搭載したLDOを選定してください。
* **Tj max(ジャンクション温度)の管理**
充電中は充電ICや制限抵抗に継続的に電流が流れ、損失が発生してジャンクション温度が上昇します。
Tj maxを超えないよう熱設計が必要です。
## LDOによるEDLC充電の基本回路
LDOの出力電圧をEDLC1セルの充電電圧(2.5V以下)に設定することで、LDOを用いたシンプルかつ安価にEDLCを充電できます。
ただし、**どんなLDOでもEDLCを充電できるわけではありません。** 数F〜数十Fという「桁違いの超大容量負荷」が接続されても発振しない
安定した位相補償性能(一般に低消費型のLDOに多い傾向があります)を持ち、かつ電流・熱の管理が可能なデバイスの選定が必要です。
また充電電流・Tjの管理を行う必要があるため、電流制限外調機能を搭載したLDOが好ましいです。
## 注意事項
### Tj max(ジャンクション温度)の制限
充電中のLDOの損失は以下の式で求められます:
$$P_{LDO} = (V_{IN} - V_{EDLC}) \times I_{charge}$$
充電時の電流は、LDOに搭載された電流制限特性によって決まります。
そのため、LDOの発熱が一番大きくなるEDLCの電圧は製品に搭載された電流制限特性により異なるため、使用するLDOの電流制限特性を把握した上でTjを計算し、Tj maxを超えないよう熱設計・動作条件を確認してください。
充電速度(充電電流)を早くしようとすると、許容損失の大きいLDOや抵抗が必要になります。
反対に充電速度が遅くていい場合は、小型のLDOや抵抗で対応でき、低コストで構成できます。
### LDOとEDLC間の抵抗挿入
メーカが推奨しない場合を除いて、LDOの出力とEDLCを直接接続することは位相補償上好ましくありません。安定性を確保するため、**出力-EDLC間に0.5〜数Ωの抵抗を挿入**してください。この抵抗がEDLCのESRとして機能し、LDOの安定動作に寄与します。
### 電流制限値の考慮
前段の電源の供給能力以下の電流制限を持つLDO、または電流制限値を調整できるLDOを選定してください。
## まとめ
- EDLCを電源に直接接続すると突入電流が流れ入力側の電流制限が動作する恐れがある。LDOや制限抵抗による電流制限が重要
- LDOの出力電圧をEDLC1セルの最大電圧(2.5V〜2.7V)以下に設定する
- VIN遮断時の逆流によるIC破壊を防ぐため、逆流防止ダイオードの追加または逆流防止機能付きLDOの選定が必要
- LDOの電流制限特性を把握した上でTjを計算し、充電速度に応じた熱設計を行う
- LDOとEDLC間には0.5〜数Ωの抵抗を挿入して安定性を確保する


文責 : 釜野信彦
トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。