投稿日 : 2026年9月8日 / 最終更新 : 2026年9月8日
同期整流型DC/DCコンバータでは、スイッチング端子(Lx/SW端子)の絶対最大定格に「-0.3V」や「VIN+0.3V」が記載されているのが一般的です。しかし実際にDC/DCを動作させてスイッチングノードの波形を観測すると、この定格電圧を超えていることに気づいた方もいるのではないでしょうか。
普通に動作させているだけなのに定格外になっているが、本当に大丈夫なのか?そのまま使っていいのか?
本記事ではその理由と絶対最大定格との関係について解説します。
## 1-1. デッドタイム中にLx/SW端子がマイナスになる理由
同期整流型DC/DCコンバータは、主制御スイッチ(High側FET)と同期整流スイッチ(Low側FET)を交互にオン・オフして動作します。両方のFETが同時にオンすると貫通電流が流れるため、両方がオフになるデッドタイム期間が設けられています。
デッドタイム期間中はコイル電流の経路がなくなりますが、コイルは電流を流し続けようとする性質があるため、Low側FETのボディダイオードを通じて電流が流れます。このときLx/SW端子の電圧はGNDからボディダイオードの順方向電圧(VF)分だけマイナスになります。
$$V_{Lx} = -V_F \approx -0.6\text{V} \sim -1.0\text{V}$$
このマイナス電圧はデータシートの絶対最大定格(例:-0.3V)を超えるように見えますが、多くの製品ではデッドタイム中に発生するボディダイオードのVF分のマイナス電圧は設計上考慮済みであり、通常動作の範囲内として扱われています。TOREXの製品では基本的に問題ありません。
ただし、メーカーや製品によってポリシーが異なるため、各メーカーへ確認することを推奨します。
## 1-2. High側FETのボディダイオードによるVIN超え
マイナス電圧と同様に、デッドタイム期間中にLx/SW端子がVINを超える電圧になる場合があります。
デッドタイム期間中にコイル電流が逆方向(コイルからGND方向ではなくVIN方向)に流れる場合、High側FETのボディダイオードを通じて電流が流れます。このときLx/SW端子の電圧はVINからボディダイオードのVF分だけ高くなります。
$$V_{Lx} = V_{IN} + V_F \approx V_{IN} + 0.6\text{V} \sim 1.0\text{V}$$
なお、昇圧DC/DCなどのトポロジーによっては、基準電圧がVINと異なる場合があります。詳細はデータシートを確認してください。
こちらもデータシートの絶対最大定格(例:VIN+0.3V)を超えるように見えますが、1-1と同様に設計上考慮済みの製品が多く、TOREXでは基本的に問題ありません。
ただし、メーカーや製品によってポリシーが異なるため、各メーカーへ確認することを推奨します。
## 2. 注意が必要なケース
通常動作中のデッドタイム中のボディダイオードのVF分のマイナス電圧は、問題なく使えます。ただし、以下のようなケースでは通常動作とは異なる動作のため、ICが破壊する可能性があります。
* **通常の動作範囲を超えるマイナス電圧の印加**
外部からの電圧印加や、外部回路や誤配線によってLx/SW端子に通常動作では発生しないマイナス電圧が印加された場合、絶対最大定格を超える可能性があります。
* **推奨レイアウトからの乖離による想定外エネルギーの印加**
PCBレイアウトが推奨レイアウトから大きく乖離している場合、配線パターンの寄生インダクタンスが大きくなり、スイッチング時にLx/SW端子に想定外のリンギングや電圧スパイクが発生することがあります。この場合、ボディダイオードに想定外のエネルギーが印加され、絶対最大定格を超える可能性があります。
## まとめ
1. 同期整流型DC/DCコンバータのデッドタイム中、Low側FETのボディダイオードを通じて電流が流れ、Lx/SW端子がVF分マイナスになる
2. 同様に、High側FETのボディダイオードによりLx/SW端子がVIN+VF以上になる場合がある
3. これらの電圧は多くの製品で設計上考慮済みであり、TOREXでは基本的に問題ない
4. ただしメーカー・製品によってポリシーが異なるため、データシートの確認と個別問い合わせを推奨する
5. 推奨レイアウトからの乖離による寄生インダクタンス等で想定外のエネルギーが印加された場合は注意が必要
