投稿日 : 2026年9月8日 / 最終更新 : 2026年9月8日
文責 : 釜野信彦
# 電圧検出器(VD)で負電圧ラインを監視する方法
オペアンプや一部のアナログ回路では、正負両電源が必要なケースがあります。このような回路では正電圧だけでなく負電圧ラインの電圧監視も重要ですが、一般的な電圧検出器(VD)は正電圧の検出を前提に設計されています。
この記事では、VDを使って負電圧ラインを監視するための回路と設計上の注意点を解説します。
## 負電圧をVDで検出する際の基本的な考え方
一般的なVDは、電圧監視端子の電圧が設定した閾値を下回ったときにリセット信号を出力します。
負電圧をそのまま電圧監視端子に入力することはできないため、**正電源(VREF)と負電圧ラインの間に分圧抵抗を挿入し、分圧点の電位を電圧監視端子に入力する**方法を使います。
## 必要な条件:VSEN端子分離品の使用
分圧抵抗を用いた負電圧監視では、**VDの電源端子と電圧監視端子(VSEN端子)が分離されている製品**を使用する必要があります。
電源供給と監視が同一端子の製品では、この構成を取ることができません。
また、通常のリセット用途と異なり、負電圧監視では「負電圧の絶対値が下がった(負電圧が浅くなった)とき」に検出信号が出力されます。論理が通常と反転するため、**検出"H"論理出力(電圧低下時にHigh出力)** の製品を使用すると回路がシンプルになります。
## 回路構成と設計計算
ここでは、センス分離品の電圧検出器 XC6132を例に回路・定数選定を行います。
検出したい負電圧の閾値を $-V_{SEN}$、VDの検出閾値電圧を $V_{D}$、正電源電圧を $V_{REF}$ とすると:
$$V_{D} = (V_{REF} + V_{SEN}) \times \frac{R_2}{R_1 + R_2} - V_{SEN}$$
この式を用いて、R1・R2を決定します。検出電圧と解除電圧のヒステリシス幅を調整する場合は、R3を調整します。
詳細な計算はエクセルの計算ツールをご活用下さい。
定数選定ツールについては、"XC6132 製品ページ" → "技術資料"からDLください。
[XC6132製品ページ](https://product.torexsemi.com/ja/series/xc6132)
## 設計時の注意事項
* **VREFのばらつきによる精度悪化**
VREFが変動すると分圧点の電位も変動するため、監視電圧の精度が悪化します。
高精度な負電圧監視が必要な場合は、VREFにLDO等の高精度電源を使用してください。
* **VSEN端子の絶対最大定格**
VREF電圧の喪失など、VSEN端子がマイナス電位に引き込まれると絶対最大定格を超えます。
VSEN端子とGND間にSBD(ショットキーバリアダイオード)を挿入してVSEN端子電圧の定格を超えないようにしてください。
* **VSEN端子-GND間 SBDの選定**
SBDのリーク電流は精度悪化の原因になります。**低リークのSBDを選定**してください。
* **分圧抵抗値の選定**
分圧抵抗が大きすぎると、VSEN端子の端子電流やSBDのリーク電流による誤差が増加します。
必要な精度を考慮して抵抗値を選定してください。
## まとめ
- 一般的なVDは正電圧検出が前提のため、負電圧をそのまま入力することはできない
- 分圧抵抗を使った負電圧監視にはVSEN端子分離品が必要
- 負電圧の絶対値が下がったときに検出するため、検出"H"論理出力品を使用すると回路がシンプルになる
- VSEN端子保護のためGND-VSEN間にSBDを挿入する
- SBDの高温リーク電流・VREFのばらつき・分圧抵抗値の選定が精度に影響する
- ヒステリシス幅を含めた設計計算は部品選定ツールを活用する

文責 : 釜野信彦
トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。