ここでは、電圧検出器の検出電圧/解除電圧のヒステリシス幅が小さい場合を例に、どのような現象が発生するのか説明します。
ヒステリシス幅が小さいと
コイン電池のような内部インピーダンスが大きい電池にMCUが接続され、電池電圧を電圧検出器で監視している回路を想定します。
このような場合、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される現象が発生する場合があります。
実際にそのような状態が発生する仕組みを、1~6の時系列に分けて説明します。
1. 電池電流が増加することで、電池電流と電池の内部インピーダンスにより電池電圧が低下する。
2. 電池電圧が低下することで、電圧検出器が検出状態になる。
検出状態になると、MCUにリセット信号を送りMCUを動作停止させる。
3. MCUが動作停止したことで、負荷電流が減少する
4. 負荷電流が減少したことで、電池電流と電池の内部インピーダンスによる電圧降下が無くなり電池電圧が高くなる。
5. 電池電圧が高くなると、電圧検出器が解除状態となりMCUを動作させる
6. MCUの負荷電流(電池電流)が増加する。
* 1~6の動作を繰り返し、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される。
電圧検出器の検出⇔解除を防ぐには
電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される現象ですが、負荷電流により電池電圧の変動が発生したことが原因です。電池電圧の変動幅が電圧検出器のヒステリシス幅より大きいと、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返されます。
今回は電池の内部インピーダンスによる電圧変動を例に挙げましたが、ヒューズやフィルタ回路の抵抗成分でも、電圧検出器が監視するラインの電圧変動が発生し、電圧検出器の検出⇔解除状態が繰り返される原因となります。
一般的な対策としては、
・電池電圧(監視ライン)の電圧変動幅より大きいヒステリシス幅を設定する。
・内部インピーダンスが小さい電池に変更する / DCRが小さいヒューズ・フィルタに変更する
が挙げられます。
電圧検出器以外でも
電圧検出器を例に、事例紹介を行いましたが、電圧検出器以外のデバイスでも同様の現象は発生します。
ヒステリシス幅が小さく、検出・解除状態が継続した状態になる事例としては、
(a) UVLO機能搭載の電圧レギュレータやDC/DCコンバータで、UVLO検出電圧と解除電圧のヒステリシス幅が小さい場合
(b) CE/EN機能搭載の電圧レギュレータやDC/DCコンバータで、CE/EN “L”電圧と“H”電圧のヒステリシスが小さい場合
が挙げられます。
上記以外にも、ICや回路の過電流保護・過熱保護・低電圧保護等が動作することにより、異常状態と起動・定常状態が繰り返される事例が発生します。
単体のICや部品を見るだけでなく、回路全体におけるICや部品の動作を把握し、回路設計することが重要です。