カレントパス回路とは
カレントパスとは、電池充電中でも入力電源(USB等)からシステム側に直接電力供給する機能です。これにより電池への充電を行いながら、システムを同時に使用できます。充電しながらでも通信機能を使用するような機器や、バックアップ回路等に最適です。
課題と目的
カレントパスが無い場合の課題
- USB等の入力電源の 接続に関わらず、電池を経由してシステム側に電力を供給するため、負荷電流により電池の充放電が繰り返され、電池の劣化に繋がる。
- 入力電源の接続時 : 充電ICを経由してシステム側に電力を供給するため、最大電流が充電電流で制限される。
カレントパス回路を追加する場合のメリット
カレントパス回路を追加することで 電池の充電ラインとシステム側への供給ラインが独立します。これにより、下記のメリットがあります。
- 負荷電流による電池の充放電の繰り返しが低減され、電池の劣化が抑制される。
- 入力電源の接続時 : 最大電流が充電電流に制限されることなく、システム側に電流を供給できる。
本資料では外付け部品を用いたカレントパス回路の実現方法、メリット/デメリット、動作概要を紹介します。
実現方法
ここではカレントパス機能が非搭載の充電ICでも、わずかな外付け部品によりカレントパス機能を追加する方法を説明します。
メリット
- カレントパス機能が無い安価な充電ICでも、充電中にシステムの使用が可能。
- Li-ion/polymer電池の充放電サイクルを低減することで電池劣化を防ぐ。
- USB接続時は電池を経由せずシステムに電流供給するので、充電電流以上の電流供給が可能。
デメリット
- カレントパス機能搭載の充電ICよりも周辺回路が大きくなる。
動作概要
実際にカレントパス回路を追加した構成で、入力電源接続時と未接続時の動作を説明します。
入力電源接続時
経路1 : 入力電源からSBDを通り、負荷側に電流を供給。
経路2 : 入力電源から充電ICを通り、Li-ion/polymer電池を充電。
入力電源接続時は電池を介さず負荷に電力供給するので、充電ICの充電電流やLi-ion/polymer電池の最大放電電流以上の電流を流すことが可能です。
また同時にLi-ion/polymer電池の充電を行えるので、USB接続時に充電しておき、未接続時は充電しておいた電池から電源供給という動作が可能になります。
Li-ion/polymer電池と負荷側との間にあるPch FETは、USB接続時にOFFします。
またソースを電位が高くなるシステム側にすることにより、寄生ダイオードを介してLi-ion/polymer電池に電流を流れないように構成しています。
図3に入力電源接続時の動作波形を示します。
上記の動作波形からも負荷に電流を供給しつつ、電池を充電できていることが確認できます。またVINの電圧とシステムの電圧で差があるのはSBDのVF分がドロップしているためです。
入力電源未接続時
経路1 : Pch FETがONし、電池からPch FETを経由し電力供給。
入力電源未接続時は電池から負荷側へ電流供給するので、負荷電流の最大値は電池の最大放電電流となることに注意が必要です。
図5に入力電源喪失時の動作波形を示します。
入力電源喪失時は電池から負荷へと電流供給していることが確認できます。電池電流がマイナスになっているのは電池からの放電を表しています。
利用できる製品一覧
XC6803 | 40~280mA, 4.20V, 電池温度検出機能付き1セル Li電池充電IC |
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XC6804 | 200~800mA, 4.20V, 電池温度検出機能付き1セル Li電池充電IC |
XC6808 | 5~40mA, 4.20V/4.35V/4.40V, 電池温度検出機能付き1セル Li電池充電IC |
まとめ
カレントパス機能が搭載されていない安価な充電ICでも、わずかな外付け部品を追加することで、カレントパス機能を実現することができ、電池の劣化防止や長寿命化、充電電流に制限されない回路を組むことが可能になります。
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単機能充電ICを使った外付けカレントパス回路 [1.0MB]