投稿日 : 2023年2月17日 / 最終更新 : 2023年4月6日

チャージポンプとは

チャージポンプとは、クロック信号とコンデンサとスイッチ(FET or ダイオード)により、電圧を昇圧や反転する回路です。チャージポンプは、以下の特徴をもっています。

メリット

  • コンデンサ、スイッチ(ダイオード)のみで構成可能なので省スペース
  • コイル不要
  • 放射ノイズが少ない
  • 昇圧/負電圧が可能

デメリット

  • 大電流は出力できない
  • コンデンサの充放電を利用するため、リップル電圧が大きい

高電圧や負電圧を安価に作成したい場合に、クロック信号(DC/DCのスイッチングノード等)とダイオードによる、ダイオードチャージポンプがよく使われます。ここでは、ダイオードチャージポンプを用いた 反転電源作成方法について原理や実例を紹介します。

反転チャージポンプ回路の動作原理

コンデンサCPUMPへの充電動作/放電動作に分けて動作を説明します。

Step1: 充電動作
Step2: 放電動作

Step1: 充電動作

1­­,S3がオン、S2,S4がオフすることで、B点の電圧がGNDになります。青線に電流が流れることで、CPUMPの電圧がVINまで充電され、CPUMP端子間電圧がVINとなります。

Step2: 放電動作

S2,S4がオン、S1,S3がオフすることで、A点の電圧がGNDになります。CPUMPの端子間電圧はV IN が維持されるので、A点の電圧がVINからGNDに低下するのに伴い、B点の電圧もGNDから-VINに低下します。

B点の電圧が-VINに低下すると、CPUMPから出力容量CLに放電し出力電圧が低下していきます。(赤線参照)
この動作を繰り返すことで、出力容量CLに負電圧を蓄えていくことが可能です。

ダイオードを用いた負電圧生成回路

実際にダイオードを用いた負電圧生成方法を紹介します。
ダイオードチャージポンプ回路では、回路方式により -N倍の電圧を生成することが可能です。

基本回路(1)

基本回路(1)

クロック出力から-N(≧1)倍の出力電圧を出力することが可能です。

ダイオードチャージポンプの段数を重ねることで、より低い電圧を出力できます。各段にてショットキーダイオードによるロスがあり、N倍での出力電圧は以下の式の値となります。

VOUT(N) = VIN × N - VF × 2(N - 1) - α
VF:ショットキーダイオードの順方向電圧 α:その他のロス分

基本回路(2)

基本回路(2)

基本回路(1)に比べて立ち上がり時間は早くなりますが、安定度は若干悪くなります。N倍での出力電圧は基本回路(1)と同様に以下の式で表せます。

VOUT(N) = VIN × N - VF × 2(N - 1) – α
VF:ショットキーダイオードの順方向電圧 α:その他のロス分

基本回路(1)とDC/DCのスイッチングノードを用いた”-1倍のダイオードチャージポンプ”で負電圧が生成するか確認してみます。

実験回路
実験回路基板
ロードレギュレーション: 負荷抵抗無し
ロードレギュレーション: 負荷抵抗有り

入力電圧の -1倍の出力電圧が出力されていますが、軽負荷では出力電圧が-1倍より高い電圧が出力されています。
DC/DCのスイッチングノードにはスイッチングノイズにより、出力電圧以上の高周波成分であるスイッチングノイズが含まれます。チャージポンプでは、このスイッチングノイズも反転されてしまうために出力電圧が-1倍より高い電圧が出力されます。
出力電流を大きくすることで出力電圧が-1倍に近づきます。そのため出力電圧の浮き上がり対策には、出力側に負荷抵抗を接続することで浮き上がり対策をするのが一般的です。

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