投稿日 : 2023年2月17日 / 最終更新 : 2023年10月5日

乾電池で動作する各種機器は身近に多くありますが、それに加えて多くの小型IoTデバイスやセキュリティ機器、産機センサが1次電池で動作し、その長期間動作が要求されます。
このため、センサ、MCU、無線通信の各機能向けに超低消費動作で、かつ高効率な電源を供給するとともに、電池の制御・モニタも重要になります。

ここでは、一般的かつ電池の長期間動作に適した電源構成と、輸送や不使用時の電源消費をカットする機能を付加したソリューションを例示します。

ブロック図(a) ソリューション概要を見る↓

ブロック図(b) ソリューション概要を見る↓

【参考】Li 1次電池について
3.0Vは二酸化マンガンタイプ / 3.6Vは塩化チオニルタイプ

ブロック図要求項目推奨製品特徴
Push Button Load SW
電源カット用

要求仕様
スタンバイ電流 0uA

その他

  • 製品出荷時シャットダウン
  • Pushボタンで起動
  • Pushボタン長押しで強制OFF
XC6194

Push Buttonインテリジェントロードスイッチ

  • シャットダウン機能により、出荷時のスタンバイ電流1nA
  • 機器のメインON/OFFスイッチとしても使用可能
  • 機器フリーズ時の強制OFFやUVLOによる液漏れ防止としても使用可能

VIN: 1.8~6.0V
IOUT: 1A
Iq: 0.001μA@シャットダウン, 0.13μA@ON時
SHDN Pin or Pushボタン長押し(Type A)で OFF、PushボタンでON

昇圧/LDO
RF/Sensor用

要求仕様
VOUT: 3.0V
IOUT: 50mA

その他

  • MCUから ON/OFF制御
  • 低ノイズ
XCL102 / XCL103
(XC9141 / XC9142)

コイル一体型昇圧DC/DC, PWM (XCL102), PWM/PFM (XCL103)

  • 低リップルとコイル一体型の低EMIで RF/センサに最適
  • チップイネーブル機能で、RF/センサ動作時にのみ電圧供給
  • 高効率用途にはXC9141 / XC9142(コイル外付け) が最適

VIN: 0.9~6.0V
VOUT: 2.2V~5.5V
IOUT: 350mA (1.8V to 3.3V)
fosc: 3.0MHz

XC6233 (XC6215)

高速過渡応答 / 高リップル除去電圧レギュレータ

  • 前段のDC/DCからのリップルを低減
  • 高速過渡応答でRFに最適
  • 100kHz以上のノイズが重要な用途には低消費レギュレータ: XC6215が適する場合も有り

VIN: 1.7~5.5V
VOUT: 1.2V~3.6V
IOUT: 200mA

RESET
電池電圧モニター用

要求仕様
検出電圧: 2.0V
超低消費電流

その他

  • 検出後も低消費電流
XC6136

超低消費電圧検出器

  • 100nAクラスで電池への負担が極小
  • MCUと電池電圧が同一の場合、CMOS出力が最適(XC6136 Cタイプ)

VIN: 0.4~6.0V(検出状態保持可能なVIN電圧)
検出電圧: 1.2V~5.0V
Iq: 117nA@1.8V

ソリューション概要

ブロック図(a) は MCUを電池に直結できるケースです。シンプルな IoT/セキュリティ/ウェアラブル/医療の小型デバイスはこの構成のものが多くあります。近年1.8V~3.8Vと広い範囲で動作する MCUが多くなり、この場合は電源ICを使うことなく電池直結で使うことができます。

昇圧ICについて

これに対し、RFやセンサは3.3Vと決まった電圧が必要だったり、動作電圧が広くてもスペックを満足するには一定電圧以上が必要な場合が多く、昇圧ICが必要になります。

RFやセンサは常時動作することは殆どなく、RFが通信するのは1日1回、しかも数秒というような場合もあります。
また、常時動作しているように見えても、細かにON/OFF制御することで消費電流を削減し電池を長持ちさせている場合も多くあります。
上記動作の実現のため、RFやセンサが必要な時に、MCUがRFやセンサの動作をON/OFF制御します。
また停止時はRFやセンサの機能を止めるだけでなく、昇圧ICおよび電圧レギュレータを動作停止させ、電池を長く使えるようにします。

動作時のリップルを抑え、そのノイズ周波数を一定とするにはPWM固定タイプが適しています。
軽負荷の動作状態が存在する場合は、PWM/PFM自動切り替えタイプを用います。またEMIを抑え、小型化するにはコイル一体型が適しています。

昇圧 DC/DC
 XCL102: PWM, コイル一体型
 XCL103: PWM/PFM, コイル一体型
 XC9141: PWM, コイル外付け
 XC9142: PWM/PFM, コイル外付け

LDOについて

RFやセンサへの電源をより低ノイズとするため、昇圧ICの後段に電圧レギュレータを用いるケースがあります。
このレギュレータには高リップル除去率/低ノイズかつRFのような急峻な消費電流の変化に対応できる優れた負荷過渡応答特性を持つ高速LDOが最適です。
なお、センサ用途で100kHz以上のノイズが重要なケースでは、高周波ノイズが低い低消費タイプが高速タイプよりも適するケースも有ります。

電圧レギュレータ
 XC6233: 高速
 XC6215: 低消費

RESET ICについて

電池電圧を監視し、電圧が下がるとMCUに信号を送ります。超低消費タイプを使用し、電池への負担を抑えます。
MCUの電源電圧とモニタしている電圧が同じなのでCMOS出力品を使用できます。CMOS出力品ではプルアップ抵抗が不要なため部品削減、かつプルアップ抵抗に流れる消費電流を削減できます。
Nchオープンドレイン品では、電池電圧低下時に"L"を出力する際に、プルアップ抵抗の消費電流が増えるので、電池には優しくありません。

MCUにはUVLOやA/Dコンバータなど電圧監視をできる製品もありますが、低消費での電圧監視や機能安全としてMCU外部にモニター機能が必要な場合に電圧検出器は重宝されます。

電圧検出器
 XC6136 Cタイプ: Iq~100nA(Cタイプ: CMOS出力)

電池の持ちを改善したソリューション / Push Button Load SWについて

ブロック図(b)はPush Buttonロードスイッチを付加して、機能追加と電池の持ちを大幅に改善するソリューションです。
SW端子の右側のSBDとMCUのVDDへのプルアップ抵抗は、MCUのコントロールとプッシュボタン制御を共用するために必要です。

Push Button ロードスイッチ
 XC6194: 1A SW内蔵
 XC6193: 外付けPch駆動大電流対応

本ソリューションには以下の大きなメリットが有ります。

1.製品出荷から、使用開始までの電池放電を防止

StorageモードやShipモードと呼ばれます。
電池が取り外せない機器に最適です。この際の消費電流はほぼ0になります。プッシュボタンを押すことで、すぐ使用開始できます。もちろんMCUのコントロール用のプッシュボタンをこのICと共有できます。

2.メイン電源ON/OFF SWとして利用可能

メカニカルSWの代わりにプッシュボタンでON/OFFできます。例えば防水機器に最適です。
MCUがSHDN端子に信号を送ってPush ButtonロードスイッチをOFFさせることができます。加えて、プッシュボタン長押しにより、Push ButtonロードスイッチをOFFできるタイプも準備しています。

3.フリーズの解除

機器がフリーズ等の異常時には、プッシュボタン長押しによるOFF機能が活用できます。5秒や10秒と長いタイプを選択すると誤操作でOFFする可能性が低く、フリーズ対策に好適です。
OFF後は再度プッシュボタンを押して通常にスタートさせることができます。

さらにPush Buttonロードスイッチには電池に優しい機能として以下の特徴を備えてます。

  • 突入電流防止機能で、起動時の突入電流を抑えます。
    立上り終了をPG端子で出力しますので、それを用いて次段の電源ICやMCUを動作させることができます。
  • 1.2VのUVLOでShutdown状態に入り、電池の液漏れ防止の効果も有ります。
  • VOUTが大きく下がると、出力短絡保護機能によりShutdownして守ります。

以上のように電池直結で動作するMCUをコアとしたシンプルな各種機器を少しの工夫でさらに電池持ちを良くしたり、より小型化や高感度の要求に応えることが容易に可能になります。