一般的な電圧レギュレータでは、起動時にICが供給できる電流(IOUT)は電流制限特性により決まります。 起動時に供給できる電流(IOUT)は、電流制限特性に従い出力電圧が上昇するにつれ変動します。
電圧レギュレータの起動特性を、前回紹介したタイプA(垂下型⇒フォールドバック)、タイプB(フォールドバックのみ)、タイプC(垂下型⇒垂下型)の起動波形を用いて説明をします。
同じタイプの電流制限でも、ソフトスタート機能や突入電流防止機能により、起動特性が電流制限特性だけに依存しない製品がありますので、使用する製品のデータシート・実機特性を確認してから設計をして下さい。
測定方法・条件
以降で示す電圧レギュレータの出力電流(IOUT)波形ですが、電圧レギュレータのVOUT端子と出力コンデンサCL間を電流プローブで測定しています。
この出力電流はICが供給する電流と等しくなります。 電流プローブを出力コンデンサの後ろに挿入すると、過渡的な電流が出力コンデンサによって平滑されるため、ICが供給する電流を正確に測定することができません。
特に記載のない場合は、CIN=CL=1μF、VIN=設定出力電圧+1.0Vとし、出力電流を可変抵抗器で設定しています。
1) 電流制限 タイプA(垂下型⇒フォールドバック)
XC6219B302(出力電圧3.0V品)がCE端子で起動する波形を例に、起動波形を説明します。
起動直後~フォールドバック電流制限 : V1, I1 ~ V3, I3
起動直後の出力電圧は0Vです。
出力電圧が0Vの時の、電流制限特性はIOUTが約20mAであるため、起動直後はICが出力側に20mAの電流を供給します。
出力側に電流供給を行うと、出力容量に電荷がチャージされるため出力電圧が上昇していきます。
フォールドバック電流制限では、出力電圧が上昇すると出力電圧に比例してICの供給電流が増加していきます。
出力電圧がフォールドバックと垂下型の切り替わり箇所であるV3にまで達すると、ICの供給電流上昇は止まり垂下型電流制限に移行します。
垂下型 電流制限 : V3, I3 ~ V4, I4
垂下型電流制限では、ICの供給電流は一定となります。ICの供給電流が一定のまま出力電圧が上昇していき、設定出力電圧V4に達します。
起動完了
設定出力電圧V4に達すると、出力電圧をこれ以上上昇させる必要がなくなるため、ICからの供給電流は低下します。起動後にICが供給する電流量は、負荷電流によるものだけとなります。
2) 電流制限 タイプB(フォールドバック電流制限のみ)
XC6221A302(出力電圧3.0V品)がCE端子で起動する波形を例に、起動波形を説明します。
起動直後~フォールドバック電流制限 : V1, I1 ~ V3, I3
起動直後の出力電圧は0Vです。
出力電圧が0Vの時の、電流制限特性はIOUTが約30mAであるため、起動直後はICが出力側に30mAの電流を供給します。
出力側に電流供給を行うと、出力容量に電荷がチャージされるため出力電圧が上昇していきます。
フォールドバック電流制限では、出力電圧が上昇すると出力電圧に比例してICの供給電流が増加していきます。
出力電圧がフォールドバックと垂下型の切り替わり箇所であるV3にまで達すると、ICの供給電流上昇は止まり垂下型電流制限に移行します。
起動完了
設定出力電圧V4に達すると、出力電圧をこれ以上上昇させる必要がなくなるため、ICからの供給電流は低下します。起動後にICが供給する電流量は、負荷電流によるものだけとなります。
3-1) 電流制限 タイプC(垂下型⇒垂下型)
XC6223B301(出力電圧3.0V品)がCE端子で起動する波形を例に、起動波形を説明します。
起動直後~垂下型 電流制限 : V1, I1 ~ V2, I2
起動直後の出力電圧は0Vです。
出力電圧が0Vの時の、電流制限特性はIOUTが約50mAであるため、起動直後はICが出力側に50mAの電流を供給します。垂下型電流制限を採用しているため、出力電圧が0.8V(V2参照)に達するまでは供給電流は50mAに制限されます。
垂下型 電流制限~垂下型 電流制限 : V2, I2 ~ V4, I4
出力電圧が0.8V(V2参照)に達すると、垂下型 電流制限の電流制限値を大きくします。
電流制限値が大きくなったことに伴い、出力側へ供給電流が増加していき供給電流がI2 からI4へ遷移し、出力電圧が上昇します。
起動完了
設定出力電圧V4に達すると、出力電圧をこれ以上上昇させる必要がなくなるため、ICからの供給電流は低下します。起動後にICが供給する電流量は、負荷電流によるものだけとなります。
3-2) 電流制限 タイプC(垂下型⇒垂下型) + 突入電流防止機能
最後に3-1で説明した製品に突入電流防止機能が追加された、XC6223F301(出力電圧3.0V品)の起動特性を説明したいと思います。
突入電流防止機能の効果を確認するため、定常状態の負荷電流が150mAとなる条件で測定を行っています。
XC6223F301の突入電流防止とは、起動後に出力電圧が0.8V(3.0V設定品)まで上昇すると、120μs 程度の期間、出力側へ供給する突入電流を規定値内に抑制する機能です。突入電流防止機能解除後は、出力側への供給電流は電流制限特性で制限されます。
起動直後~垂下型 電流制限 : V1, I1 ~ V2, I2
起動直後の出力電圧は0Vです。
出力電圧が0Vの時の、電流制限特性はIOUTが約50mAであるため、起動直後はICが出力側に50mAの電流を供給します。垂下型電流制限を採用しているため、出力電圧が0.8V(V2参照)に達するまでは供給電流は50mAに制限されます。
垂下型 電流制限~突入電流防止機能 : V2, I2 ~ V3, I3
出力電圧が0.8V(V2参照)に達すると、突入電流防止機能が動作します。
突入電流防止機能により120μs 程度の期間、出力側へ供給する突入電流を規定値内に抑制します。
今回の条件では、突入電流防止機能無しで突入電流370mAだったものを、突入電流110mAまで抑制しました。
突入電流防止機能~垂下型 電流制限 : V3, I3 ~ V4, I4
突入電流防止機能が完了すると、垂下型 電流制限に移行します。
今回の場合、出力電圧 2V付近で突入電流が解除され、供給電流を電流制限値に遷移中に出力電圧が設定出力電圧まで上昇しています。
起動完了
設定出力電圧V4に達すると、出力電圧をこれ以上上昇させる必要がなくなるため、ICからの供給電流は低下します。起動後にICが供給する電流量は、負荷電流によるものだけとなります。