投稿日 : 2023年8月29日 / 最終更新 : 2024年4月25日

完全逆流防止回路の必要性

 二次電池を搭載しているモバイル機器の多くは AC/DCアダプタやUSB等の外部からの電源供給に対応する必要があり、そのための外部端子が必要となります。
 このような機器で外部からの電源供給がない場合に、二次電池の電圧が外部端子に出力されないことが、端子の腐食防止や安全的な観点から必要になります。
 一般的なリチウム電池向けの充電ICでは、逆流防止機能が内蔵されており外部端子への電圧出力を考える必要がありません。
 しかしながら、逆流防止機能が内蔵されていない充電ICを使用している場合や、充電ICが内蔵された機器と電池が搭載された機器が分離している機器については、外部端子への電圧出力を対策する必要があります。

課題と目的

 外部端子への電圧出力対策として単純な方法はディスクリートのダイオードを使うことです。
しかしながら、ディスクリートのダイオードでは順方向時のVF電圧降下や逆バイアス時のリーク電流が発生してしまいます。
特に二次電池の容量が小さい場合では、逆バイアス時のリーク電流が大きいと、二次電池の電池残量が低下するため致命的な問題となります。
そのため、低リーク電流の完全逆流防止回路が必要となります。

実現方法

一番容易かつ効果的な対策としては、理想ダイオードICを用いた完全逆流防止回路を構成することです。

単純に低リーク電流にするだけであれば、ショットキーバリアダイオードではなくPNダイオードを使うことでリーク電流の低減ができます。しかしながらPNダイオードはVFが0.7~1.0V程度となり、外部電源からの電源供給時の電圧降下が非常に大きくなります。
またショットキーダイオードでは、VFが0.3~0.5Vと小さいですが、リーク電流がuA~10uAオーダーと大きくなり、電池の消費電流を削減することができません。

理想ダイオードICであれば、消費電流を考慮しても1μA以下に抑えることが可能であり、容易に最適な特性の完全逆流防止回路が構成できます。
特に充電ICが内蔵された機器と電池が搭載された機器が分離している場合、ダイオードのVFが大きいと電圧降下が大きくなり二次電池の充電に影響を及ぼすため、VFが小さい理想ダイオードICを使うか、別回路にてFETを制御して回路を組む必要があります。

また逆流防止機能を搭載しているロードスイッチICを使用するという方法もあります。
しかしながら製品によってはスタンバイ状態でしか逆流防止できないロードスイッチICも存在するので、適切なロードスイッチICを選定する必要があります。

メリット

  • 低リーク電流により、電池残量低下を最小限に
  • VFが小さいことで出力電圧変動が小さく、システムの安定動作に貢献

デメリット

  • ディスクリートのダイオードと比べて、製品数が少ない/互換性が少ない

動作概要

1.逆流防止特性

以下の画像はVOUTに3.3Vを印加した状態でVINを5V→OPENに変化させた際のオシロスコープ波形になります。左側の理想ダイオード有りの波形ではVIN端子の電圧が0Vとなっていますが、理想ダイオード無しの波形ではVIN端子にVOUT端子の電圧が出てしまっています。

2.リーク電流

以下の画像は理想ダイオードとSBDのリーク電流について周囲温度ごとに比較したものです。理想ダイオードは高温時でも0.1μA程度ですが、SBDの場合は100μA以上流れてしまっています。

まとめ

理想ダイオードICを使うことで、容易に完全逆流防止回路を構成できることを説明しました。
逆流防止機能を搭載するロードSW等では、製品の逆流防止制御方式によっては 入力側に出力側の電圧が出力される場合があり注意が必要です。