投稿日 : 2023年8月29日 / 最終更新 : 2023年9月22日

OR接続とは

2電源以上の複数の入力源を使用する機器では、状況に応じて入力源を切替える必要があります。
入力源の切替えとして一番容易な方法は、ダイオードOR接続です。
ダイオードOR接続では複数の入力源が接続されている場合は、一番高い電圧の入力源から出力電力が供給され、ダイオードにより自動的に入力源の選択が行われます。

ダイオードOR接続例

課題と目的

ダイオードOR接続は、安価/容易で多くの回路で使われている手法です。しかしながらダイオードOR接続では、ダイオードを使うことによるデメリットも存在します。

  1. ダイオードの順方向電圧VFによって生じる損失や発熱が大きく、電池駆動時間が短くなる。
  2. 順方向電圧VFの電圧降下により出力電圧低下・変動が大きくなり、システムが誤動作する要因となる。
  3. ダイオードのリーク電流が大きく、ダイオードのアノード側に悪影響を及ぼす可能性がある。ダイオードのアノード側に一次電池があり、一次電池側に電流が流れる場合等が挙げられます。

これらのデメリットにより 電池駆動時間を長くしたいバックアップ用途や、安定した出力電圧を供給したい用途では、ダイオードOR接続のデメリットを解消する方法が必要とされています。

実現方法

ダイオードOR接続において、ダイオードを理想ダイオードICに置き換えることで ダイオードOR接続のデメリットを全て解消することが可能です。
この手法はダイオードOR接続と同様に回路構成が容易でありながら、ダイオードのデメリットを解消でき、多くの場合において最適なOR接続ソリューションとなります。

また理想ダイオードICでは保護機能が搭載されており、より安全な機器を容易に設計することが可能となります。

理想ダイオードICを用いたOR接続例

メリット

  • VFが20mVと非常に小さい & 低リーク電流により、低損失
  • VFが小さいことで出力電圧変動が小さく、システムの安定動作に貢献
  • 電源ソースの切替制御回路不要で、設計が容易
  • 各種保護機能内蔵
  • 制御回路不要かつ小型パッケージ

デメリット

  • 最大出力電流や出力電圧の制限有り

動作概要

実際にAC/DCアダプタ等の5V外部電源と二次電池のOR接続を想定して、”ディスクリートのダイオードOR” と “理想ダイオードICを使った場合のダイオードOR接続”で、どの程度特性に違いがあるのか実験をしてみました。

実験1-1:電源の切替え

外部電源の抜き・挿しにより、システム電圧が電池電圧にスムーズに切り替わるか図1,2の回路で確認しました。

理想ダイオードを用いたOR接続回路

SBDを用いたOR接続回路

どちらのOR接続回路でもOR接続回路に求められている、電圧のスムーズの切り替えが行われることを確認できました。

・5V外部電源(VIN)がバッテリー電圧(VBAT)より高くなると、Voutが外部電源に切り替わる
・5V外部電源(VIN)が喪失しバッテリー電圧(VBAT)より低くなると、Voutがバッテリー電圧に切り替わる

理想ダイオードICを用いたOR接続回路では、外部電源の立下り・立上り速度や理想ダイオードICの応答性等により、切り替わり時にシステム電圧が変動する場合があります。この場合は出力容量を増やす等して出力電圧の変動を抑制する必要があります。

XC8110を用いた電源切替結果
SBDを用いた電源切替結果

実験1-2:順方向電圧

実験1-1の結果からわかるように、理想ダイオードICでは入力電圧と出力電圧がほぼ同等であり、電圧降下がほとんどありません。実際に順方向電圧と出力電流の関係をグラフにしたものが下図になります。
この特性によりダイオード部分での損失が小さく、電圧降下が小さいため安定した電圧を出力できます。

順方向電圧-出力電流

実験1-3:リーク電流

理想ダイオードICではリーク電流(通常のダイオードにおけるカソード側からアノード側に流れる電流)がほとんど流れません。実際に以下の回路で測定を行いました。

この特性により、リーク電流による損失を削減できると同時に電池への逆流防止が可能です。

結果は以下の通りです。

まとめ

理想ダイオードを使うことで、容易に高性能なOR接続回路を構成できることを紹介しました。
この回路を応用することで、さらに低消費電流化や大電流化を行える製品もあります。