求められる小型・低背と高効率の両立

携帯電話などの携帯電子機器は、ますます高機能で小型化が進行しており、それに伴った電子部品の高集積化、小型化、薄型化への要求は更に強くなる中で、電源ICも例外でなく小型化が求められます。

更に電池駆動の場合、電池の効率的な使用は重要な課題となっており、携帯電子機器では小型化と高効率化の両立が必須になります。

その中でDC/DCコンバータは、電力変換が高効率という点では有効な電源ですが、コイルは磁気飽和特性や焼損防止の必要性から低背化が困難で、実装基板上にIC、コイルおよびコンデンサを平面的に実装するのが一般的であるため、小型化には不向きなソリューションとなっていました。

これらの課題を解決するための方法はいくつか考案されています。

まず半導体シリコン上にコイルを形成する方法がありますが、DC/DCコンバータで使用するための十分なインダクタ値を確保するためには、半導体プロセスが複雑となるためコスト高になり、実際には高周波フィルタ程度に利用するにとどまっています。

次にコイルとDC/DCコンバータICを1つのプラスチックモールドパッケージに封止する方法は、単純に入れるだけでは実装面積があまり縮小されず大きなメリットを生みませんでした。

そこで、各部品を平面上配置するのではなく、ICを含む各部品をスタックする方法が考案され、実際にいくつかの製品が作られています。しかし、コイル上に配線用パターンが必要、ICがCSPに限定、IC封止の為のモールド行程が必要といった製造工程が複雑で高コストになるという課題もありました。

micro DC/DC XCL205/XCL206/XCL207シリーズ

今回開発された“micro DC/DC” XCLシリーズは、完成品のDC/DCコンバータICの上にコイルを載せるという単純な構造にすることで、実装面積の縮小と特性確保の両立を図ったコイル一体型降圧DC/DCコンバータです。 出力電流(最大600mA)を出力するのに必要な部品はわずか2個のコンデンサですので、基板実装時の小型化が可能となりました。〈図1〉 構造が単純であるため、ICの特性を劣化させることなくそのまま既存の量産品を流用できる事も大きなメリットとなっています。

構造がシンプル

XCLシリーズは製造工程をシンプルにするため、DC/DCコンバータとコイルを一体化する際、コイル中央部分に凹部を形成し、その部分にXC9235/XC9236/XC9237シリーズをはめ込み接着するだけという構造を実現し、工程の複雑さによるコスト高を解消しました。〈図2〉 またこの構造にすることで、上部にあるコイルの電極とICの端子をそれぞれ直接PCBへ実装する事ができ、DC/DCコンバータの配線をPCBのレイアウトで済ませることができます。

高さ1mmと低背化が実現

コイルとDC/DCコンバータを合わせた高さを1mmに抑えるため、DC/DCコンバータに使用するパッケージは高さが0.4mmという超薄型パッケージ(USP-6EL)を新規で開発し採用しています。〈図3〉

ICの特性はそのまま

XCL205/XCL206/XCL207に使用するDC/DCコンバータICは、XC9235/36/37シリーズで、主な特長として、動作電圧は2.0V~6.0V、出力電圧は0.8~4.0Vまで0.05Vステップで設定可能、スイッチング周波数3MHz、0.42ΩPchドライバTr.および0.52ΩNchスイッチTr.を内蔵した同期整流方式です。動作モードはPWM制御(XCL205)、PWM/PFM自動切替え制御(XCL206)、制御方式マニュアル切替え(XCL207)の3タイプから選択ができます。軽負荷から重負荷までの全負荷領域で高速応答、低リップル、高効率を実現し、スタンバイ時には全回路を停止することにより消費電流を1.0μA以下に抑えます。また、UVLO(Under Voltage Lock Out)機能を内蔵しており、入力電圧が1.4V以下では内部ドライバTr.を強制的にオフさせます。〈図4〉〈図5〉

アプリケーション

ターゲットにしている市場は、携帯電話、スマートフォン、PDA、携帯ゲーム機、デジタルカメラ、UMPC、PNDなど、特に高効率を必要とした部品実装面積が厳しいような小型携帯機器です。年々多機能化する小型携帯機器の需要を期待しています。

シリーズの詳細情報

関連情報

"micro DC/DC" XCL シリーズのパッケージタイプのご紹介