投稿日 : 2023年2月17日 / 最終更新 : 2023年4月6日

負荷過渡応答特性とは 出力電流を過渡的(瞬間的)に変動させた際の出力電圧変動量のことです。
理想的な負荷過渡応答特性は、出力電圧変動が小さく、出来るだけ早く設定電圧に戻る特性です。

下図 左側の破線部分は、出力電流が1mAから100mAに増加したことで、出力電圧が低下していることを表しています。
右側の破線丸部分は、出力電流が100mAから1mAまで低下したことで、出力電圧が増加(オーバーシュート)しています。

電圧レギュレータの負荷過渡応答特性はICの消費電流に大きく依存します。
主に「消費電流が大きい高速応答タイプ」と「低消費電流だが過渡応答が遅い」という2つのタイプに分類されます。

出力電流1mAから50mAの過渡応答で比較してみましょう。2つの波形では、縦軸: VOUTレンジが違うことにも注目です。

高速タイプ

電圧変動:10mV
消費電流:100μA

低消費タイプ

電圧変動 : 500mV
消費電流 : 0.6μA

左側の高速タイプは出力電圧の低下幅は10mV。これに対し、低消費タイプは出力電圧の低下幅は500mVと高速タイプより大幅に大きいです。
また設定電圧に戻るまでの時間も、高速タイプのほうが低消費タイプよりも大幅に短いことがわかります。

単純に消費電流値に比例した変動幅になりませんが、”消費電流の値に応じて、過渡応答特性に差が出る傾向にある” ことが分かったと思います。

なぜ高速タイプと低消費タイプで過渡応答特性に大きな違いが生じるか、電圧レギュレータの動作原理から説明したいと思います。

高速タイプでは消費電流が大きいことで、エラーアンプの出力を高速に変動させることが可能です。これにより、ドライバFETのゲート電圧制御を高速にでき、ドライバFETのオン抵抗を素早く変更することが可能です。この動作により高速な過渡応答特性を得ることができます。

反対に低消費タイプではエラーアンプの出力を高速に変動することができません。そのためドライバFETのゲート電圧制御を遅くなり、ドライバFETのオン抵抗を変更も遅くなります。このため過渡変動により出力電圧が低下しても高速な応答ができないということになります。

過渡応答特性を “反応速度” というイメージでとらえた場合に、早くするにはエラーアンプの消費電流を増やす必要があり、”過渡応答と消費電流はトレードオフの関係” となります。