投稿日 : 2023年2月17日 / 最終更新 : 2023年4月6日

PSRRはリップル除去率 (PSRR : Power Supply Rejection Ratio)の略称で、入力電圧の変動を出力電圧の変動としてどれだけ小さくできるかの指標です。

電圧レギュレータの過渡応答特性を示す指標としてよく用いられます。
過渡応答特性は測定する出力電流の条件が異なった場合に、製品間の過渡応答能力を比較することの難しい特性です。

しかしながらPSRRは、過渡応答特性より測定条件を合わせることが容易です。またPSRRが良い電圧レギュレータは過渡応答特性も早い傾向があることから、PSRRを高速応答の指標として使われています。

上記の簡単な説明ではPSRRがどのようなものかわかりにくいので、具体例を用いてPSRRを説明します。

リップル除去率(PSRR)

入力端子に周波数成分のある電圧ΔVINを入力した際の、出力電圧の変化ΔVOUTする割合。

PSRR(dB) = 20log(ΔVOUT/ΔVIN)
⇒20dB : 1/10に減衰
 40dB : 1/100に減衰
 80dB : 1/1000に減衰

PSRRは電圧レギュレータの入力側に印加された正弦波を、出力側でどれだけ小さく出来るかという特性です。上図では、入力側A点に正弦波が印加された場合に、出力側B点では出力電圧がどれだけ安定しているかを示します。

例えば入力側に1kHzの500mVp-pの波形を印加し、出力側の変動を5mVp-pに抑えた場合は、1/100(5mVp-p/500mVp-p)に減衰しているので、PSRRは40dB@1kHzとなります。

PSRRは周波数に依存し、スペック表記では1kHz時の値が使われることが一般的ですが、規定されている周波数が違う場合があるので周波数には注意が必要です。

ここで実際の製品のPSRRを見てみましょう。

高速タイプは1kHz時に70dB(=1/3200)ありますが、低消費タイプでは20dB(=1/10)とPSRRに大きな差があることがわかります。一般的には高速タイプのPSRRのほうが低周波側のPSRRが高い傾向になります。

入力側からの揺れ成分が、低周波から高周波になるとICが反応出来なくなり、PSRRが徐々に低下していきます。この場合 除去しきれなかい揺れ成分が出力側に伝わってしまいます。
さらに高周波になると、PSRRが減少傾向から増加傾向になります。これはICが完全に高周波に応答できなくなり、ドライバFETのオン抵抗が固定になっていることを示します。
この状態では、ドライバFETの固定のオン抵抗と出力容量によりRCフィルタが形成されるため、PSRRが増加傾向となります。