投稿日 : 2023年6月20日 / 最終更新 : 2023年8月3日

DC/DCは電圧レギュレータと異なり、ICの制御方式や特性(消費電流/発振周波数/ドライバFETのオン抵抗 etc)、周辺部品の定数や特性により効率や損失が異なってきます。
そのため、効率・実装面積・コスト等を考慮に入れた周辺部品の選定が重要になります。

まず最初に、DC/DCの損失・損失割合グラフの使い方について説明を行います。
その次に、各項目の説明や損失に影響するパラメータの説明をすることで、適切なICおよび周辺部品の選定の指針を示します。

1. DC/DCの損失について

DC/DCの損失ですが、”導通損”, “スイッチング損失”, “消費電流”, “コイル損失”, “その他” の損失を足し合わせたものがDC/DC全体の損失となります。この全体損失がわかれば、各出力電流の効率を算出することが可能です。

本ツールでは、各損失の損失割合を容易に確認することができます。
これは効率を改善したい領域で、損失の大きい項目を把握することで、効果的に効率アップを行うことが可能です。
また、効率に影響のない範囲で周辺部品のコスト低減等を行うことで、コスト等を考慮した最適な部品選定にも活用可能です。

2. DC/DCの損失内訳、損失への影響するパラメータ

(a) 導通損

ドライバFETのオン抵抗や、ダイオードのVF損失により発生する損失です。
ドライバFETのオン抵抗およびダイオードのVFが大きいと損失が大きくなります。オン抵抗による損失は電流の2乗に比例するため、主に重負荷時の効率に影響を及ぼします。

FETおよびダイオードが外付けの製品では、オン抵抗やVFが小さい製品を選ぶことで導通損失を低減可能です。ドライバFETが内蔵されている場合、製品を変更する以外にオン抵抗の調整はできません。

ただしドライバFETのオン抵抗を小さくすると、ゲート容量が大きくなり、FETの駆動に使う消費電流が増加します。またVFが小さいSBDを選定するとリーク電流が増える傾向にあり、リーク電流により軽負荷時の効率が低下します。

Q1 RonドライバFET or 外付けFET Q1で発生する導通損
Q2 RonドライバFET or 外付けFET Q2で発生する導通損
D1外付けダイオードで発生する導通損

(b) スイッチング損失

スイッチング時のスイッチングノードの立上り/立下り時に発生する損失です。

スイッチング損失はスイッチングノードの電圧振幅、立上り/立下り速度、コイル電流(出力電流)、発振周波数に比例して増加します。

出力電流に比例するため、主に重負荷で効率に影響を及ぼします。 スイッチング損失を低減するには、

  • 発振周波数が低い製品を選定する or低くなるような周辺部品を選定する
  • 外付けFETの場合、ゲート抵抗を小さくする
  • 外付けFETのゲート容量を小さくすることでスイッチング速度を早くする

という方法が一般的です。

スイッチング速度を向上させた場合、高周波のノイズレベルが増加するデメリットがあります。
 またゲート容量を小さくした場合、同プロセスのFETではオン抵抗が大きくなる傾向のため、スイッチング損失と導通損のバランスを考慮してFETの選定を行う必要があります。

また本ツールでは、” Switching Loss” にデッドタイムで発生する損失も含めています。
デッドタイムとは、同期整流方式のDC/DCで High SideドライバとLow Sideドライバが同時にONする期間を防ぐために意図的に設けられた、High SideドライバとLow Sideドライバが同時にOFFする期間のことです。デッドタイム期間中は、コイル電流がドライバFETの寄生ダイオードに流れ損失が発生します。

Switching Lossスイッチングノードの立上り/立下りで発生するスイッチング損失
+ デッドタイムで発生する損失

(c) 消費電流

ICの内部回路や、ドライバFETの駆動に使うための消費電流です。
ICの消費電流や、スイッチング周波数、ドライバFETのゲート容量に依存します。主に軽負荷の効率に影響を及ぼします。

消費電流を低減させるには、

  • 消費電流が低い製品を選定
  • スイッチング周波数を低減させるため、PFM制御方式のDC/DCを選択
  • ゲート容量が小さいドライバFETを選定

という方法が一般的です。

ICの消費電流や、制御方式、スイッチング周波数については、選定するDC/DCが重要となります。
またゲート容量を小さくした場合、同プロセスのFETではオン抵抗が大きくなる傾向のため、導通損とのバランスを考慮してFETの選定を行う必要があります。

Supply CurrentICの内部回路の動作や、ドライバFETの駆動に使う消費電流

(d) コイル損失

コイルで発生する損失です。
主にコイルのDCR、ACR等により損失が発生します。

DCRはDC的な抵抗成分で、コイル電流が大きくなるとコイル電流の2乗に比例して損失が発生します。主に重負荷時の効率に影響を及ぼします。

ACRはAC的な抵抗成分で、表皮効果等の影響により周波数が増加すると抵抗成分が増加します。主にコイル電流の振幅が大きく、DC電流が小さいPFM時の効率に影響を及ぼします。
インダクタによってはインダクタメーカのサイトでACR特性を確認できます。

本ツール上ではACRを入力することはできず、DCRの一定の倍率となるように設計してます。
ACRを入力してシミュレーションしたい場合は、個別にお問い合わせをお願い致します。

CoilコイルのDCR / ACR / ヒステリシス損による損失

(e) その他

上記以外のその他の損失です。
本ツールでは、上記以外の損失として、入力ラインの抵抗成分(Rvin)や出力コンデンサのESRによる損失を計算しています。

入力ラインの抵抗成分(Rvin)は、抵抗値が大きいと効率の大幅な低下や最大出力電流に大きな影響を与えるので、十分考慮にいれて設計を行う必要があります。

ESR出力コンデンサのESRで発生する損失
Rvin入力ラインの抵抗成分で発生する損失