リニアレギュレータとの比較
DC/DCコンバータの最大の特長の一つは、その高い電力変換効率です。これは、リニアタイプの電圧レギュレータと比較して大幅に効率が高いことでも知られています。
なぜDC/DCコンバータはこれほど高効率を実現できるのでしょうか?
まずは、リニアタイプの電圧レギュレータとDC/DCコンバータが、実際の動作においてどのように損失を発生させているのかを見ていきましょう。
リニアタイプの電圧レギュレータの損失
リニアタイプの電圧レギュレータは、入力電圧と出力電圧の間にあるドライバFET(またはトランジスタ)のオン抵抗を連続的に調整することで、出力電圧を制御します。
具体的には、入力電圧から出力電圧まで電圧を降下させる際に、ドライバFETが抵抗として機能し、その抵抗成分と出力電流によって下記の損失が発生します。
この損失は、リニアタイプの電圧レギュレータの動作原理上、避けられないものです。
損失 = (入力電圧−出力電圧) × 出力電流

リニアレギュレータでは、入力と出力の電圧差:Aと出力電流:Bの積がそのまま損失電力となります。
出力電圧を入力電圧より低く設定するほど、この電圧差が大きくなり、結果として損失が増加します。
これは、余分な電力を熱として消費しているためであり、効率が低い主な理由です。
DC/DCコンバータ(降圧タイプ)の損失
DC/DCコンバータは、リニアタイプの電圧レギュレータとは根本的に異なり、スイッチ素子(FETなど)を高速でオン/オフ(スイッチング制御)することにより出力電圧を制御します。
スイッチ素子がONの状態では、抵抗成分が非常に小さい(低オン抵抗の)FET、または順方向電圧降下(低VF)が小さいダイオードにコイル電流が流れます。
このON状態での電流によって、以下の導通損が発生します。
FET導通損 = (コイル電流 )^2 × オン抵抗
ダイオード導通損 = コイル電流 × VF
この図に示されるように、DC/DCコンバータではスイッチ素子がONまたはOFFのいずれかの状態にある時間が大部分を占めます。
スイッチがONの時には電圧降下(C)は非常に小さく、OFFの時には電流が流れません。
ダイオードについても同様に、電流が流れる時の電圧降下(D)は小さいです。
コイル電流(E)は流れていますが、スイッチ素子が「抵抗」として常に機能するリニアレギュレータとは異なり、DC/DCコンバータのスイッチ素子の導通損は非常に小さく抑えられます。
そのため、DC/DCコンバータの効率はリニアタイプの電圧レギュレータより大幅に高くなります。
(実際には、DC/DCコンバータ全体の損失は、スイッチ素子やコイルの導通損、スイッチング損失、制御回路の消費電力などを合計したものとなります。
しかしながら主要な損失源であるスイッチ素子での損失がリニアレギュレータに比べて格段に小さいため、高効率を実現しています。)

トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。