投稿日 : 2026年1月8日 / 最終更新 : 2026年3月4日
文責 : 釜野信彦

本記事では、降圧型DC/DCコンバータの基本動作について、降圧DC/DCコンバータの「連続モード(CCM: Continuous Current Mode)」を例に、DC/DCコンバータの動作概要を説明します。

1.降圧DC/DCコンバータの基本構成

降圧型DC/DCコンバータは、電圧変換機能を実現するために、以下の主要な素子/電子部品で構成されています。

スイッチング素子(Main SW)

主にパワーMOSFETが使用されます。
この素子は、高速にオン/オフを繰り返すことで、コイル電流を断続的にインダクタへ供給する役割を担います。
そのオン/オフの比率(デューティ比)が、出力電圧を決定する重要な要素となります。

ダイオード(D)

スイッチング素子(SW) がオフになった際に、インダクタに流れる電流経路を確保するために必要です。非同期整流型ではショットキーバリアダイオードが用いられます。同期整流型では、このダイオードの代わりに別のMOSFETが使用され、順方向電圧降下による損失を低減し高効率化を図ります。

インダクタ(L)

磁気エネルギーを蓄積・放出することで、出力側に電流を供給する役割を果たします。

入力コンデンサ(CIN)

入力電圧の変動を抑制し、DC/DCコンバータが安定に動作する役割を果たします。

出力コンデンサ(CL)

インダクタから供給される電流を吸収し、出力電圧を安定させるために使用されます。

2.降圧型DC/DCコンバータの動作概要

降圧型DC/DCコンバータの動作は、スイッチング素子のオン/オフを下記の2つのフェーズを高速に繰り返すことで実現されます。

ステージ1: Pch FETスイッチON期間

この期間では、ハイサイドに配置されたPch FETスイッチがオン状態になります。
Pch FETスイッチがオン状態になると、入力からコイルに電流が流れ、出力側に電流を供給します。このときの各ノードの状態は、下記のようになります。

・Pch FETのゲート: 制御回路からの信号によりゲート電圧がLowレベルとなり、Pch FETスイッチがオンします。これにより、VINとコイルが導通します。

・電流経路 入力電圧から電流が流れ、オン状態のPch FETスイッチとコイルを経由して、出力容量(CL) に接続された負荷へと供給されます。

・コイル電流(IL): コイルには、入力電圧から出力電圧を差し引いた正の電圧(Vin​−Vout​) が印加されます。 この電圧差によりコイル電流は直線的に増加していき、電流の増加率は、(Vin​−Vout​)/L になります。

Lxノード: Pch FETのドレインであるLxノードは、スイッチがオンしているためHigh(VINに近い電圧)となっています。

・VOUT: コイルを通して電流が供給され、出力コンデンサが充電され出力電圧が増加していきます。

ステージ2: Pch FETスイッチOFF期間

次に、Pch FETスイッチがオフしたステージ2の動作です。
この期間では、ハイサイドに配置されたPch FETスイッチがオフ状態になります。
Pch FETスイッチがオフ状態になると、GNDからコイルに電流が流れ、出力側に電流を供給します。
このときの各ノードの状態は、下記のようになります。

Pch FETのゲート:制御回路からの信号によりゲート電圧がHighレベルとなり、Pch FETスイッチがオフします。

・電流経路: スイッチがオフしても、インダクタは電流を急激に変化させることを嫌う性質(レンツの法則)を持っています。そのため、インダクタに蓄えられた電流はダイオード(D) または同期整流用MOSFET(SW2) を通じて出力コンデンサ(CL) に流れ続けます。

コイル電流(IL): コイルには、負の電圧 ​−Vout が印加されます。 この電圧差によりコイル電流は直線的に現象していき、電流の増加率は、​−Vout/L になります。

・Lxノード: コイル電流を継続するために、ショットキーバリアダイオード(または同期整流用MOSFET)がオンする電圧を自己誘導によって発生させます。具体的には、Lx電圧がGNDよりも低くなることで、ダイオードは順方向にバイアスされ、電流を流し続けるパスが形成されます。

VOUT: コイルを通して電流が供給されますが、わずかに出力電流より供給電流が小さいため、充電され出力電圧が低下していきます。

出力電圧の制御:デューティ比(Duty比)

制御回路は、出力電圧を常に監視し、負荷電流や入力電圧の変動に応じてこのデューティ比をリアルタイムで調整します。
これにより、たとえ外部条件が変化しても、安定した目標出力電圧を維持することが可能となります。
例えば、負荷電流が増加して出力電圧が低下しようとすると、制御回路はデューティ比をわずかに増加させて、より多くのエネルギーを出力側に供給し、電圧を回復させます。

文責 : 釜野信彦

トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。