カレントリミットPFMとCOT制御の違いは?1回のスイッチングエネルギーの決まり方
スイッチング電源の制御方式には、PWM制御とPFM制御が広く使われており、PFM制御は負荷電流に応じてスイッチング周波数を変動させることで高効率を実現します。
この説明は、PFM制御の動作概要を理解する上で有効ですが、スイッチング1回あたりに供給されるエネルギー量がどのように決まるかという点については触れていませんでした。ここでは、PFM制御におけるスイッチング1回あたりのエネルギー量がどのように決まるのか、カレントPFM制御とCOT制御の違いについて解説します。

1.コイルのエネルギー量
DC/DCのエネルギー供給は、インダクタを介して行われます。
まずは、コイルに蓄えられるエネルギー量を考えましょう。
インダクタンス値(L)のインダクタに 電流Ipeak流れた場合のエネルギー(E)は下記の式で表されます。
$$E = \frac{1}{2} \times L \times {IL_{peak}}^2$$
この式から、インダクタンス値(L)が高く、コイル電流(Ipeak)が大きいほうが、コイルに蓄えられるエネルギーが大きいことがわかります。

2.PFM制御の基本動作
PFM制御では、一般的に以下のいずれかの方法でスイッチング時のオン時間およびコイル電流を制御します。
1.カレントリミットPFM制御:インダクタに流れるピーク電流を一定に制御し、スイッチング周波数を変動させます。
2.固定オン時間制御 (Constant On Time: COT制御):スイッチング素子がオンになる時間を一定に制御し、スイッチング周波数を変動させます。
2-1. カレントリミットPFM制御
カレントリミットPFM制御では、その名の通り、インダクタに流れるピーク電流(Ipeak)を一定に制御しています。

カレントリミットPFM制御 動作
- 出力電圧が低下すると、スイッチング素子をオンします。
- インダクタ電流が上昇し始めます。
- インダクタ電流が設定されたピーク電流閾値(IPFM)に到達すると、スイッチング素子をオフします。
- スイッチング停止後、出力電圧が低下すると、再度スイッチングを行います。
- 1~4を繰り返します。
カレントリミットPFM制御は上記に示す制御を行い、コイルのピーク電流をIPFM(PFM制御の制御値)に制御します。
この時、コイルに蓄えられるエネルギーは、以下となります。

この式から、カレントリミットPFM制御ではインダクタンス値が大きいとスイッチング1回あたりのエネルギーが大きくなることがわかります。
またIPFMが入力電圧や出力電圧依存が無いとすると、入力電圧や出力電圧によらず 一定のスイッチングエネルギーを供給します。
2-2. 固定オン時間制御 (Constant On Time: COT制御)
固定オン時間制御(COT制御)では、スイッチングのオン時間(ton)を一定に保つことで、1回のスイッチングで供給するエネルギー量を制御しています。

固定オン時間制御(COT制御)動作
- 出力電圧が低下すると、スイッチング素子をオンします。
- インダクタ電流が上昇し始めます。
- 一定時間(ton) 経過すると、スイッチング素子をオフします。
- スイッチング停止後、出力電圧が低下すると、再度スイッチングを行います。
- 1~4を繰り返します。
固定オン時間制御(COT制御)は上記に示す制御を行い、スイッチング素子を一定期間のオン時間(ton)のオンします。
一定期間のオン時間(ton)で、コイルに電圧(V)を印加した場合の電流の増加量(ΔIL)は、

と表され、降圧DC/DCでは コイルに印加される電圧は (Vin-Vout)となるので、

と記載できます。
基本的には、PFM制御ではスイッチング素子をONし始めるタイミングでは、コイル電流は0mAのため、

となります。
ここで求めたIpeakを用いて、コイルに蓄えられるエネルギーを算出すると、

となります。
この結果から、カレントリミットPFM制御とは異なり、インダクタンス値が大きくなると1回あたりのエネルギー量が減ることがわかります。
また入力電圧が変動した場合ですが、入力電圧変動によりtonが変動するCOT制御も存在するため、入力電圧増加により1回あたりのエネルギーが増減するかは COT制御の方式(tonの決め方)に依存します。
3.最後に
PFM制御の詳細特性を理解するための重要なステップとして、1回あたりのスイッチングエネルギー量の決め方について解説しました。
この知識を応用することで、実際の回路におけるスイッチング周期やリップル電圧などを計算できるようになります。
トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。