ここでは、DC/DCのPWM制御とPFM制御の動作を、電子回路の動作を水に例えることで、複雑な概念を直感的に理解することを目指します。
1.水槽(プール)とバケツのモデル

このモデルでは、バケツを使ってプール1からプール2へ水を運び、外部への水の供給量(出力電流)が変動しても、常にプール2の水位(出力電圧)を一定に保つというDC/DCの動作を表現しています。
・大きな水槽(プール1)
入力コンデンサ(CIN)を表し、水位は入力電圧を表します。
・小さな水槽(プール2)
コンデンサ(CL)を表し、水位は出力電圧を表します。
この水槽から流れる水は、後段デバイスが使用する出力電流に対応します。
・バケツ
コイル(インダクタ)を表し、プール1からプール2へ水を運びます。
このバケツは、水を汲み上げる動作(コイルへのエネルギー蓄積)と、水を放出する動作(コイルからのエネルギー放出)を交互に行うことで、水を安定して運びます。
2.PWM制御(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)
PWM制御は、「一定の周期で、バケツに入れる水の量を調整する」ことで、水位を一定に保つ方式です。

動作原理
1.一定の間隔(周波数一定)
バケツに水を汲み入れる動作は、常に一定の間隔(周波数)で繰り返されます。
この周波数はDC/DCの設計によって決まっています。
2.水の量の調整(パルス幅を可変)
プール2の水位を一定にするには、プール2から流れる水の量(出力電流)と同じ水の量をバケツで供給する必要があります。
つまり流れ出す水の量(出力電流)が大きくなった時は、バケツの汲み入れる水の量(パルス幅)を大きく調整して水位(出力電圧)を一定に制御します。
- PWM制御方式の特長
PWM制御では、一定の周期で水の供給を行っています。
まるで、水位計を常に見張って、少しでも水位が下がればすぐに水を補充する、緻密な管理人のようなイメージです。
この動作により、PWM制御では水位の変動(出力電圧のリップル電圧)が小さく、出力の安定性が重要視されるノイズに敏感なアナログ回路や高精度なデジタル回路に広く採用されています。
課題
軽負荷時の効率低下
PWM制御は、出力電流が少ない場合でも、一定の間隔でバケツを動かし続けます。
一定の間隔でバケツを動かし続けるため、バケツを動かすための動力(スイッチング素子のON/OFFに必要な消費電流)が必要になります。
出力電流が少ない状況では、この動作に必要な消費電力の割合が相対的に大きくなり、効率が低下するという欠点があります。
3.PFM制御(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)
PFM制御は、PWM制御の軽負荷時の効率が低下する課題を解決するために考案された、より効率を重視した方式です。

動作原理
1.水の量の調整(パルス幅を固定)
バケツに入れる水の量は常に一定です。
2.汲み入れ間隔の調整(周波数を可変)
PFM制御ではプール2から流れ出る水の量(出力電流)に応じて、水を補充する間隔(周波数)を調整します。
出力電流が大きい時は短い間隔で次々と水を運び(周波数が高くなる)、出力電流が少ない時は長い間隔でゆっくりと水を運びます(周波数が低くなる)。
出力電流に応じて、バケツの汲み入れ間隔を調整することで水位(出力電圧)を一定に制御します。
- PFM制御方式の特長
この「必要な時だけ動く」という考え方により、PWM制御の弱点であった軽負荷時の無駄な電力消費を大幅に削減できます。
課題
リップル電圧が大きい
PFM制御では、水の汲み入れ間隔を少なくするため、一回あたりに運ぶ水の量が多くなります。
つまり、出力の水位の変動(出力電圧のリップル電圧)が大きくなるため、リップル電圧に敏感なアプリケーション・負荷デバイスに使用するのは注意が必要です。
- 発振周波数の不安定さ
PFM制御では、出力電流により周波数が変動します。
周波数が変動するということは、DC/DCから発生するノイズ周波数も変動するということです。
周波数の変動により、ノイズ対策(EMI対策)の設計が複雑になり、他の電子機器への電波干渉やオーディオ機器の音質劣化、耳障りな音鳴りの原因となる可能性があります。
トレックス・セミコンダクター 2005年入社。
DC/DC等の電源IC開発に6年携わった後、オフラインLEDドライバの技術サポートを3年従事。その後、トレックスの電源IC顧客向け技術サポートを担当。
開発で培った知見と、長年の顧客サポートで蓄積した電源関連やトラブル事例対策の豊富なノウハウを基に、トレックス製品の技術サポートや製品提案に従事しています。
顧客サポートの一環として、設計支援ツールの開発も手掛け、お客様の設計プロセスを強力に後押しします。